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お風呂

「が、学生版人生ゲーム?」


「そそ!なんか面白そうだから買ってみたの!知ってる?」


「いや知らないけど、多分俺には向いてないゲームだと何となくわかる…」


人生と学生というキーワードは今の俺にとってはかなりのNGワードだからな!

その2つのNGワードを組み合わせたゲームなんて…。

ああ、ゲームをやる前にこんな震えることがあるなんて。

いやきっとこれは武者震いだ、うんきっと。


「えー?まだやってないのにわかんないでしょ?」


「ま、まぁそうなんだけどな、あはは」


や、やりたくねーーー。


そして俺たちは数分歩いて家に到着した。

家に帰ったらまず風呂だ。

俺は不登校になってからもお風呂は毎日欠かさずに入っている。


別に体が汚くなるから入るようにしているとかそういう理由ではない。


単純にお風呂という空間が好きなのだ。

1人でお風呂に入っている間は嫌なことを全て忘れさせてくれる。


1人でいる時間はとても心地良いものなのだと実感できるのだ。

なんなら学校になんて行かないでずっと家にいてもいいんじゃないかと思わせてくれる悪魔的なものだ。


「あれ、でもあいつはどうするんだろ?」


あいつとはもちろん綾瀬美波のことだ。

風呂には入ったのだろうか?

もし入っていないからこれから入るのだろうか。


別にそんなのどうでもいいじゃないかと思うかもしれないが、実は重要である。


それは女子が入った風呂はどうするかである。


仮に俺が先に入ったとして、あいつは嫌がらないだろうか?

いや俺と一緒に寝るくらいだし別に気にしないのか?

でもこういうのは女性に先に入らせるのが常識って誰かが言ってたような…。


確かゲームのフレンドのEDEさんだっけか?


なんでそう言う話になったか忘れたけど。


まぁ、一応聞いてみるか。


「なぁ?」


「ん?」


今日の晩飯はハンバーグということもあり、綾瀬美波は今ハンバーグを作っている真っ最中だった。

しかもエプロンなんかしっかり着けちゃって。


まるで俺の嫁…いや、いかんいかん。

何を想像しているんだ?

あんなのが俺の嫁になってみろ。


一日中遊ばれるに遊ばれて力尽きるぞ!


下手したら俺の大好きな風呂でもあのダメージは癒せないかもしれない。


あ、本題に戻らないと。


「お前風呂には入るか?」


「一緒に入りたいの?」


「違うわ!」


もう仕掛けてきやがった。

俺の何気ない質問に対してもさりげなく誘惑をしてきやがる。

幸い俺は1人で風呂は楽しみたい派だから、

誘惑されても大丈夫だったけど…。


「残念。で、入ってないけど?」


てか料理をしているこいつの姿は、

なんかすごい真剣味があるな…。

俺のためにこんな真剣に料理をしてくれているって考えるとなんか感動するな。


母親が料理を作ってくれるって当たり前のことのように思ってたけど、実は当たり前じゃなく感謝するべきだったのだとわかったかもしれない。


何で俺母親とこいつを重ねているんだろうか…。


いかん、また違うことを考えてしまっていた。


「入ってないのか。じゃあお湯沸かすから先入れよ」


「え?」


な、なんだよ。何でそんな驚いた顔するんだ?

別に風呂くらい使わすよ。

金払ってんの俺じゃねーし。


「いらないか?」


「いる!ありがとね雅人君!」


「お、おう…」


めっちゃ感謝されってしまった。

当然のことしたまでなんだけどな…。

まさか今のみたいのが陽キャがやるモテテクだったりして!?


EDEさんありがとう。

てかEDEさんってもしかして陽キャ?


「じゃあ私先に入ってくるから、雅人君にはお米を炊いてて欲しいんだけどいいかな?」


「お米ね…」


「別に無理にとは言わないよ?」


本当か?

俺にはどうしてもやってほしい目に見えるけど。


「まぁハンバーグ作ってもらうし、それくらいやるぞ」


「本当に!?いやー今日の雅人君は紳士的でかっこいいなー」


ふん。

別に褒められるほどのことじゃない。

俺が紳士なことなどちゃんとわかっている。

女性に風呂を先に勧め、代わりにお米も炊くと。


今日の俺最高にイケてね?

むふふ…。


「じゃあ先いただくね!」


「おう」


そしてあいつは着替え場に向かった。

さてお米を炊くか…。





そういえば俺お米の炊き方わかんね。

完全に忘れてた。

さっきは何も考えず紳士的な行動を取ろうとして任されたけど、俺お米炊いたことないんだ。


ど、どうしよう…。

今からお米の炊き方でも教えてもらうか?


いやそれは任された男としてのプライドが…


あ、そうだ。

最高の米をお見舞いしてやろう…。


「あーー気持ちよかった!最高の湯加減だったよ!」


「おう。風呂マスターの俺の腕舐めんなよ?」


「あはは、風呂マスターなんだ。それなり納得だね!」


俺の軽いギャグにも対応してくれる。

なんていい子なんだ。

ま、今だけか。


「お米は大丈夫だった?」


「ああ、もちろんさ!」

俺は少しはにかんで言った。


「そ、そう…」


あれキマッたと思ったのに、なんか苦笑いしてない!?

すこし引いてる気もするんだけど!

何を間違ったんだ俺は!


「どれどれ? あれ?」


「どした?」


「お米炊いてないじゃん」


「よくぞ気づいてくれました!なんとお米を炊く時代はもう終わったのです!

今はこれがあるんだから!」


そう言い俺はスーパーの袋から2つの容器をら取り出した。


「これは…」


「そうこれは、超簡易的サトウのご飯だ!」


どうだ?驚いたろ?

時間も手間も掛からなくて、俺が炊くよりも絶対には美味しいサトウのご飯!

これはあの魔王も舌を巻くかもな…。


「ダメ」


「え?」


「サトウのご飯は美味しいけど今回はダメ。私は雅人君が作ったご飯がいいの」


そんな理不尽な…。


「べ、別に変わんない…」


「私雅人くんの愛情が籠ったご飯が食べたい」


「いや別に炊いたとしても愛情は込めないけど…」


綾瀬美波はゆっくり近づき、俺の手を両手で急に握ってきた。


「な、何だよ急に!?」


「もしかして炊き方わからないの?」


「え、いやそんなわけ…」


「ふーん。ここで本当のこと言うならゲーム時間延ばすこと考えてあげるよ?」


ごくり。ゲーム時間が延びる。

それは非常に魅力的な提案だ。

だが!ここで折れては俺のプライドが!


「実は私雅人君のお母さんから色々話聞いてるんだよね〜」


そ、それは!

まさか…すでに情報を仕入れていると言うことか!


「もう一回聴くよ?どっちかな?」


「降参です。わかりませんでした。すいません」


なす術が無かった。

こんなには用意周到だなんて。


「ぷふっ! 私の勝ちー」


綾瀬美波は満面の笑顔で勝ち誇った。

そんなに俺を負かしたことが嬉しいのか?


案外子供っぽい笑顔もできるんだな。


俺は負かされたものの、不思議と悔しい気持ちはなかった。


魔王気質でありながら、子供っぽさもあるなんてまじパねぇ…。


そしてそのあとはみっちりお米の炊き方についてレクチャーされた。





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