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俺さんSUGEEEを所望する

 「俺SUGEEEをやりたいんだよ!」

 「何や突然?」


 俺の訴えにテルが尋ねた。 


 「異世界転生っていやぁ俺TUEEE、現代知識無双じゃねぇかよ!」

 「そ、それはそうだけど……」

 

 フータが言う。

 

 「俺は俺TUEEEをやりたいんだよ!」

 「せやかてタカ、誰にTUEEEすんねん?」

 「そ、そうだよ!」 


 確かにTUEEEする相手がいない。 


 「だったら現代知識で無双する!」

 「せやかて、オーちゃんらは言葉も喋れへんやん?」

 「も、文字でも教えるの?」


 気持ちは分かるが、二人共ノリが悪いな……

 こんな時代でも出来る事はあるんだぜ? 

 それは、


 「火を熾すぜ!」

 「火やて?!」

 「た、たき火って事?」

 「そうだ!」

 



 俺達はゴリさんとオージー達に、この木何の木の下に集まってもらった。

 ゴリさんらはウホウホ言っており、何があるのかと不思議に思っている様だ。

 オージー達は盛んにウキッっており、興奮している様子が見える。

 両者ざわついているものの、比較的大人しくしてくれている。 

 見学者は確保したので、早速実演を始めるとしよう。 


 地面に掘った穴の隣に必要な物は準備してある。

 適当な石を丸く並べて風よけとする。

 種火を熾す為の土台の木と、擦る為の木の棒を隣りに並べた。

 そして、種火を大きくする乾いた葉っぱや草、燃やす木の枝である。


 マッチやライターの無い時代、火を熾す方法は世界中で共通している。

 テレビで見た事があるかもしれないが、木の棒を錐(きり)の様にスリスリし、土台の木との摩擦熱で種火を熾す方法だ。

 棒に紐を巻き付けて回しやすくしたり、重りを付けて回転力を維持するなど様々に工夫する方法もあるが、今回は見送っている。

 ただの木の塊とでかい木の棒だけで火を熾す。

 ルーシーが真似するのも早すぎるだろうし、今回はただの自慢だしな。

 と言うか、ゴリラの手ではそこまでの加工が出来ない。

 

 「じゃあ、早速始めるぜ!」

 「了解や!」


 俺が木の棒を持ち、テルが土台を固定する。

 フータはルーシーをあやしている。

 観客は、何が始まるのかと俺達に注目した。


 「ゴリラの剛腕と現代知識の凄さを魅せてやるぜ!」

 「方法は現代的やないけどな」


 テルの冷静なツッコミを無視し、俺は木の棒を土台に強く擦りつけ、前後に動かし始めた。

 木の棒と言っても中々に太いモノだ。

 ゴリラの手に細い棒きれは扱い辛いし、力を込めると簡単に折れてしまうので、折れない様に太く堅い木の幹を使っている。

 握力が半端ないゴリラなので、それでも問題はないのだ。  


 加護のお陰で体力お化けな俺達は、ちょっとやそっとじゃ疲れない。

 前世であればすぐに諦めたであろう原始的な火熾しも、ゴリラの体には楽勝であった。

 擦り付ける力も半端ないからか、瞬く間に煙が上がり始めた。

 観客からオホッとした驚きの声が出る。


 「お? 煙やんけ! 順調やな!」

 「まだまだぁ!」


 煙が出始めただけでは火とはならない。

 俺は木の棒を動かし続けた。

 ものの数分くらいした頃だろうか、擦り合わせている部分が黒く焦げ始め、赤い火の粉がちらほらと見えるまでとなった。

 棒が堅いので土台が削れ、粉となっているのだ。

 こうなったらしめたモノである。

 用心の為にもう少しだけ擦り、頃合いを見て木の棒を放り出し、すぐさま燃えやすい枯草を擦っていた場所に持っていく。

 舞う火の粉を枯草に移し、大きく息を吹きかけた。

 ゴリラの肺活量は並でなく、あっという間に火が付いた。

 それを乾いた葉っぱに移し、火を大きくしていく。

 

 「やったやん!」

 「まだだぜ!」


 喜んだテルを制し、俺は作業を続けた。

 草や葉っぱだけでは直ぐに燃え尽きてしまうからだ。

 木の枝をくべ、安定した火とした。


 「これで簡単には消えねぇだろ!」  

 「キャンプファイヤーやな!」

 「あ、案外すんなりといったね!」


 俺達は焚火の前で喜びを共有した。

 焚火なんて中学の時のキャンプ以来だった。

 あの頃は外見上のコンプレックスもなく、好きな女の子の話で盛り上がっていた気がする。

 それがお互いこうしてゴリラとなり、異世界で焚火を囲んでいるとは、何とも不思議な話だ。

   

 それはそれとして、ゴリさんやオージーらの観客も、大いに興奮していた。

 興奮し過ぎて脱糞しているゴリさんもいた程だ。

 ウッホウッホと叫び、キッキキッキと奇声を上げている。

 多分生まれて初めて見るであろう火に、生まれ持った好奇心が湧いている様だ。

 流石は猿人類と類人猿であろうか。


 動物は本能で火を恐れると言うが、そんな訳はない。

 多くは学習で得た経験から火を恐れるのだ。

 その場合も火を恐れると言うよりは、火に付属する煙が不快なので忌避するだけだろう。

 煙は目や喉を刺激するので、本能的に避けようとするからだ。

 もしも本能で火を恐れるならば、人間の子供が火遊びをする筈がないし、飼い猫がストーブの前から動かない筈もない。

 やけどで痛い思いをして初めて、火が危険であると理解するのではなかろうか。


 であるから、ゴリさんやオージー達が火を見て興奮しているのは、何も可笑しい事はないのだろう。

 何だ何だと盛んに近寄って確かめようとするのも、極々自然な事だ。

 危険だから余り近寄らせないが。


 「これが火だぜぇ」

 

 興奮しきりなゴリさん達にドヤ顔で言う。

 そんな俺に呆れたのかテル達が言った。


 「焚火は現代知識無双やあらへんのやないか?」

 「そ、そうだよね。る、ルーシーに教えたら出来そうだもん!」


 ふっ。

 分かってないな。

 人類が火を利用するのは推定で30万年くらい前の事だから、随分と新しい事なんだぜ?

 オーストラロ・ピテクスから大きく進化し、北京原人とかジャワ原人の誕生を見てからの事なんだぜ?

 とは言え、確かに焚火だけで現代知識無双と言うのは弱いので、用意していたもう一つの知識を披露してやろう!


 「ちゅうもーく!」

 「な、何や?」

 「ま、まだあったの?」


 二人が意外な顔をする。

 構わず進めた。


 「取り出したるは、このバナナ!」

 「何や、味のせえへんバナナやないか?」

 「お、美味しくないヤツだよね?」


 俺が出したのは二人の言う通り、全く甘くない、味のしないバナナだった。

 ルーシーに味見してもらい、確かめてもらう。

 しかめ面をして証明してくれた。 

 

 「今からこれを甘いバナナにしてみせる!」

 「何やて?!」

 「ほ、本当?」


 そう、それだよ。

 そのやり取りが欲しかったんだ!


 「やり方は簡単。まずは焼いた石を穴に入れる!」


 風よけにしていた石を棒を使って穴に落とし、土を掛けて少し埋めた。

 

 「次に甘くないバナナをバナナの葉に包んで穴に入れ、土を大きく被せて蒸し焼きにするだけだ!」


 土を掛けて埋め戻し、バンバンと叩いて固めた。

 蒸気が漏れない様にする為だ。


 「調理出来るまで時間がかかるから、取っておきの余興を見せてやるぜ! テルとフータも協力してくれ!」

 「何をやるんや?」

 「そ、そんな事まで考えてたの?」


 耳打ちして段取りを伝え、三人で大勢の観客が待つステージに立った。

 いざ、芸を披露しよう!


 「いくでぇ! ビッグライト!」


 テルが叫び、テルの固有魔法『フラッシュライト』をフータに浴びせた。

 フータの体はみるみる大きくなり、倍程の大きさになった。

 勿論、フータの魔法『ミートボール』である。

 観客は度肝を抜かれたのか、口を大きく開けて見ているだけだった。 


 「次はスモールライト!」


 今度は俺に向かって『フラッシュライト』の光を浴びせる。

 タイミングよく俺は『マイクロトロン』を唱え、俺の体を小さくした。

 観客は呆気に取られた様に静まり返っている。


 「何や、うけへんかったんか?」


 テルが不満そうに呟いた。

 

 「難しすぎたか?」


 俺も予想外だった。

 爆笑とは言わないが、何らかの反応くらいはしてくれるモノと思っていた。


 「ぱ、パクリだからじゃない?」

 「ゴリさん達がドラエモンのネタなんか知ってる訳ねぇだろ?」

 「ちゅーか、これこそ現代知識やあらへんのか?」 


 俺達があーだこーだ騒いでいると、突然の様に観客席から歓声が上がる。

 ゴリさんはドラミングを、オージー達は拍手をしている。

 成る程、理解するまで時間が必要だった様だ。

 

 「何や、うけたやないか!」

 「やってやったぜ!」

 「い、一発芸でしかないのに……」


 呆れ顔のフータを他所に、俺とテルはうけた事実を喜んだ。

 そんなこんなで調理も終わっている頃だろう。


 「じゃあ、掘り上げるぜ?」

 「どない変わるんや?」

 「わ、ワクワクするね!」


 味の殆どしなかったバナナがどう変わるのか?

 二人は好奇心に満ちた表情で俺の作業を見守った。

 ゴリさん達もウホウホ言って見つめている。

 ルーシーはフータの腹に抱きついていた。


 「出てきたぜ!」

 

 手で掴むにはちょっと熱かったが、バナナの葉に包んだ塊を掘りだした。

 葉っぱを広げ、バナナを取り出す。

 十分に蒸され、皮も緑色から黄色に変わっていた。 

 アチアチとなりながら皮を剥くと、若干黄色みがかった中身が姿を現した。

 躊躇う事なく齧りつく。

 その熱さに目を白黒させ、ハフハフとなりながらも、口の中にはねっとりとした食感と共に素朴なバナナの甘さが広がる。


 「そこまで甘くはないが、問題なく食えるぞ」 


 俺を見つめていた二人に告げた。

 二人はバナナを手に取り、恐る恐る口に運ぶ。

 やはり熱さにハフハフとしていたが、ゴクリと飲み込んで言った。 


 「旨いやん!」

 「あ、甘過ぎないのが逆にいいかも!」


 高評価であった。

 ゴリさん達にも勧め、同じ様に喜んでもらえた。

 ルーシーは不思議そうな顔をしている。

 確かに美味しくなかったのに、どうしてなのだろうと思っているのだろうか?

 それこそ科学の心なので大事にして欲しいモノだ。 


 ナショジオで見ただけではあったが、無事に成功したみたいだな。

 種を明かせば、元のバナナがでんぷん質だったのだ。

 生食するバナナと分け、料理用バナナともプランティンとも言う。

 加熱する事によってでんぷんが分解され、甘さを感じる様になるのだ。

 多くの地域で主食として利用されているらしい。

 熟せば生食も可能みたいだが。


 簡単に言うとサツマイモと同じ。

 生だと硬いし甘くもないが、熱を加える事によって柔らかくなり、甘くなる。

 石焼き芋ならぬ石焼きバナナという事だな。

 尤も、これも現代知識ではないのだが……

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