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『小銭稼ぎをこよなく愛する貧乏貴族、四人のエリートに人生を狂わされる』 ~楽して生きるはずが、なんでこんなことに~  作者: 佐藤なつ
日常

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ロウは今日も小銭稼ぎに忙しい

水をたっぷり汲んだ桶を下げ、厩舎に入る。

干し草の匂いが鼻に抜け、甘えるような馬の嘶きが耳に入る。

催促する蹄を鳴らす音と、首を振ってくる馬達。

「待て待て、今やるから。順番だぞ・・。」

なだめるように声をかけながら、桶を降ろすと。

「ロー、また小遣い稼ぎしてんのか?」

呆れた声に振り替える。

愛馬を連れたダリオの姿があった。

どことなく、くたびれた雰囲気だ。

「お!ダリオか。今戻ったのか?特別任務お疲れ。無事終わったのか?」

「あぁ、なんとかな。酷い目にあった。」

ダリオは空いている柵に馬を繋ぎ、肩を竦めた。

「ここは平和でいいな。」

「平和だけが売りの何にもない田舎だからな。」

俺も肩を竦めて返した。

王都と、魔獣討伐の前線である辺境との中継地。

田舎過ぎて何も無い。

「俺が苦労している間、お前はぬくぬくと・・・。本当はお前が着く任務だっただろ!」

「仕方ないだろ。都合が悪かったんだから。お疲れ様会しようぜ。・・・・お前の奢りでな。」

「はぁ!?普通は逆だろ!」

「特別任務手当が出ただろ?お前の馬もブラッシングしておいてやるからさ。特別にタダで!」

盛大にダリオは溜息をついた。

「報告行ってくるわ・・・。丁寧にやってくれよ。」

「了解。お前の馬には特別コースでピカピカにしてやるぜ。」

厩舎を出ていくダリオの背中に声をかけて、仕事に戻る。

「イイコ、イイコだ。順番だからな。」

各馬に声をかけながら、世話をする。

水・飼い葉換え、掃除して寝藁も綺麗に整え、ブラッシングをする。

気持ちよさそうな嘶きを聞いていると、俺の気分も上がる。

ピカピカに毛艶を磨き上げた頃、仕事終わりの隊士達が厩舎にやってきた。

「お~、ピカピカだ。」

「休みなのに悪いな。」

「良いって事よ。折角の給料日だからな。定時で上がりたいだろ?」

「そうなんだよ。これ、謝礼だ。」

誰もがウキウキした感じで、雑談もそこそこで帰っていく。

が、一人、ぐずぐず残っているヤツがいる。

最近、配属されてきた平民出の男だ。

「お前は行かねぇの?」

手を出して、報酬の催促しがてら声をかける。

「えっ?何が?」

「折角の給料日、皆で飲みに行くんだろ?置いていかれるぞ。」

「あ・・あ~、そうなんだけどさ。ちょっと気になって・・。」

「何がだよ。」

「ローって、本当に貴族なのか?」

改めてそんな事聞かれるのに驚く。

「貴族っても貧乏子爵家の五男だしな。継ぐ爵位もないし、平民と変わらないよ。」

「今日、給料日だろ。こんな日まで小遣い稼ぎしなくても・・・って使ってる俺が言うことじゃねぇけど。」

いや、給料日だから財布の紐緩いんだろ。

って言葉は飲み込んで笑顔をキープする。

「気にすんなよ。俺は助かってんだから。兄貴の所に子供産まれてさ。物入りなんだ。」

「この前も、親戚に仕送りしてただろ?」

「良く覚えてるなぁ。叔父家族だよ。事業失敗して実家に居候してんだ。いとこはまだ成人前だし。」

「大変だな・・・。これ、謝礼。」

通常料金より多い枚数を渡された。

平民に施されたなんてプライドは元からない。

「悪ぃな!また何でも声かけてくれ。書類書きとか洗濯も、繕いものとか何でもやるよ!!」

営業スマイルでお見送りまでして、厩舎でそのまま銅貨を数える。

チャリンチャリン。

小銭がたてる音にウキウキする。

「一枚、二枚・・。今日の稼ぎはいいな。」

財布の革袋に入れて、きっちり口紐を縛る。

これで姪っ子に小物でも買ってやれるな。

喜ぶ顔を思い浮かべて頬が緩む。


・・・その時だ。

背中に、気配・・・じっとりとした視線を感じた。


振り向くと案の定、ダリオがいた。

ただし顔半分。

柱に身を隠して、こっちを睨むように見てる。

「なんだよ!」

「・・・お前、“叔父一家居候”と、“兄貴の赤んぼう”ネタいつまでやるつもり?」

低く響く声。

完全に呆れている。

「ね・・ネタって何だよ。人聞き悪い。」

「叔父夫婦は居候じゃなくて敷地内の別棟に住んでいる。従姉妹もデキ婚して家出てる・・・だろ?」

「言うな!」

「姪っ子も、確か、6歳・・・。このネタも6年目・・・。いや、0歳を足すと7年目、いやいや産まれる前から使ってたから8年目・・・。」

「お前!細かい!!!やめろ!」

誰が聞いているかわからないだろ。

「止めるのはお前の方だぞ、ロー。いいか、ネタにも鮮度があるんだ。このネタは腐っている。」

「腐ってるって何だよ!大事な収入源なんだ。止められる訳ないだろ!」

「そろそろ同情詐欺罪で捕まるぞ。」

「そんな罪状は無い!!」

ダリオは柱から全身を出した。

真顔で言い切る。

「予言しよう。お前の為に新設されると。ロウ・バニス事件として後世の人に語り継がれるだろう。」

「そんな予言いらんわ!」

「折角の人の忠告を聞かない。本当罪深いヤツだよ。」

ダリオが首を振る。

「忠告って何だよ。下らんことばっか言って、俺たちも飲みに行くぞ!」

俺はダリオの腕を掴んだ。

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