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第12話「記憶の水と囚われし者たち」

―霧の谷の奥、封じられた支部の残響―


霧の谷の奥に広がっていたのは、崩れかけた石造りの建物群だった。 その姿は、かつて教団が築いた拠点のようにも見えるが、確証はない。


「第三支部かどうかは分からないけど…教団の拠点であることは間違いなさそう」ユウが慎重に言う。


「でも、内部が分からない以上、無闇に入るのは危険だよね」リナが頷く。


ユウはリナに視線を向ける。「建物の中、鑑定できる?」


リナは魔力を集中させ、建物全体に感覚を広げる。 「…1階の入り口付近に3人。2階に5人。魔力の乱れはあるけど、強力な結界は張られてない」


ユウは剣を握り直す。「なら、まずは1階から。慎重にいこう」


1階での戦闘と哀しき目覚め

建物に足を踏み入れた瞬間、待ち構えていた3人が襲いかかってきた。 その動きに、リナが眉をひそめる。


「…何か動きがおかしい!」


前回戦った教団の人々は、顔が黒く染まり、目の周囲が赤く爛れていた。 だが、今回の3人は普通の人間と変わらない表情をしている。瞳に宿るのは、無感情な空虚だけ。


「洗脳されてるのか…でも、今回は深く入り込んでる感じじゃない」ユウが呟く。


ふたりは連携して戦い、ユウは急所を外して攻撃し、意識だけを奪う。 「とりあえず、意識を失ってる間に縛っておこう」


リナは魔力の糸で拘束を強化し、3人を安全な場所へ移動させた。


しばらくして、彼らは目を覚ました。 最初は混乱していたが、徐々に正気を取り戻し、震える声で語り始めた。


「俺たちは…なんてことを…」 「どうして…こんな命令に従ってたんだ…」 「記憶が…断片的にしかない。でも、確かに…俺たちはこの地に住んでいた…」


彼らの目には、深い哀しみと後悔が浮かんでいた。 洗脳され、知らぬ間に教団の手足として動かされていた事実が、彼らの心を締め付けていた。


2階での戦闘と装置の発見

階段を駆け上がると、さらに5人が待ち構えていた。 彼らの顔は、前回と同様に教団関係者の特徴を持っていた。


「手を抜いたら、こっちがやられる…!」ユウが剣を構える。


激しい戦闘が始まる。 リナは魔力矢で敵の動きを封じ、ユウは跳躍と水流で翻弄する。


だが、敵の一撃がユウの左腕を裂いた。血が滴り、握力が鈍る。 「くっ…!」


リナも魔力の残量が限界に達し、膝をつく。「もう…魔力が…!」


残る敵は2人。ユウは片腕で剣を振るい、リナは最後の魔力で防壁を張る。 一人、二人と倒していくが、最後の一人は異様な執念で迫ってくる。


ユウは息を荒げながら、最後の跳躍で敵の懐に飛び込む。 剣を逆手に構え、渾身の一撃を叩き込む。


敵は崩れ落ちるが、毒の小瓶を口に含んでいた。 「待って!」リナが叫ぶが、間に合わなかった。


ユウは悔しげに拳を握る。「教団のこと、もっと知りたかったのに…」


装置の記憶と地下の真実

2階の奥には、ひとつの装置が静かに佇んでいた。 ユウが手を触れると、装置が反応し、空間に映像が浮かび上がる。


映像には、かつてこの地に住んでいた人々が、教団によって洗脳される様子が映っていた。 彼らは記憶を改ざんされ、教団の命令に従う管理者として再教育されていた。


その映像が終わると同時に、ユウのアイテムBOXに淡く光る粒子が吸い込まれていく。 「…これは…記憶のかけら?」リナが驚きの声を漏らす。


ユウは確認する。「うん、“記憶のかけら”って名前で保存されてる。ラボに持ち帰れば、装置の解析に使えるかもしれない」


リナが頷く。「装置のレベルアップにもつながるかもね。これが突破口になるなら…」


ユウは1階で捕えた人々に問いかける。


「捕らわれた人たちは、今どこに?」


「地下にいます。元は200人ほどいましたが、今は100人ほど。食事は粗末なものを日に一度だけ。月に一度、外部から誰かが来て、数人を連れていきます。行き先は…分かりません」


リナが拳を握る。「そんな…」


ユウは静かに言った。「地下へ行こう。彼らを救うために」


だが、教団の目的は、いまだ霧の中にあった。

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