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13話 理沙の謝罪

とある場所、勇気達が元の世界に戻った直後・・・



「アンジェラ、首尾はどうだ?」


低く重厚な声が辺り一帯に響く。


「申し訳ありません。竜王の痕跡と思われる場所は絞れましたが、思った以上にあの世界での抵抗が激しいもので、これ以上の天使達を消耗する訳にもいかず、追加の派遣をする事も出来ずにいます。」


今の低い声とは正反対な女の声が響いた。


「ふむ・・・、例の魔王がいたというあの国か?確か、魔王はクラリスが相打ちで消滅させたはずでは?あの竜王の後継者ならいくらブラックホールだろうが、時間さえあれば抜け出すだろうな。それまでに何としてでもあの世界を掌握しておかなくてはならん!後継者が敵に回ると私達でも手に負えなくなる可能性がある。」


「は!重々承知しています。」


「我々の目的はあのイザナギを何としてでも筆頭の座から引きずり下ろす事だ!私が神域の真の支配者となる為にもな!イザナギ以外の最強神は全て私に忠誠を誓った。後は竜王の力を手に入れさえすれば・・・」



しばらく沈黙が漂う。



「そうだ!お前自身でも管理しきれないとの話だったな?」


「お恥ずかしい限りです。」


「ならば、私達も力を貸そう。お前の世界での事だが私達が協力するとなるから奪い合いではない。それなら制約にも引っかかる事もあるまい。そしてな、面白い余興を思いついた。」


「それはどういう事です?」


「イザナギの世界の人間を呼ぶのだ!かつてクラリスがやったようにな!だが、私のやり方は違う。あの抵抗している国を潰すのは変わらんが、我々各陣営から勇者を向かわせるのだよ。最初にあの国を滅ぼした者だけが元の世界に戻れると言ってな。そうすれば、我先とあの国に攻め入るかもしれん。または、同じ勇者同士で潰し合いをするかもな?久しく娯楽の無かった神域が楽しくなりそうだ。フハハハハハ!面白いな・・・、イザナギの慌てる顔が目に浮かぶぞ!」


「太陽神マルス様の仰せのままに・・・」


アンジェラが深々と頭を下げた。


しかし、下げた顔は忠誠を誓うような表情ではない。


(今は精々ほざくが良い。確かに今の私では貴様に勝てる要素は全く無いけど、あの竜王の力を手に入れさえすれば私が神域の覇者になれるのよ。その為の手は密かに打ったわ。貴様には報告しないが、例の男はイザナギが既に元の世界に戻したと確認が取れているわ。くくく、やっと出し抜くチャンスが巡ってきたわ。貴様に感ずかれる事無くね。いくらあのクラリスを破ったとはいえ所詮はたかが男・・・、最強のサキュバスを送り込めば男なんて簡単に堕とせるわ。サキュバスの魅了に人間の男なんて抵抗は絶対に出来やしないんだから・・・、ふふふ・・・、必ずや私があの力を手に入れる。)


ニタ~と笑った邪悪な笑顔は誰にも気付かれずにいた。



ただ一人を除いては・・・






「ふむふむ・・・、僕の趣味は盗聴だからみんな筒抜けだよ。そんなにペラペラと喋っても大丈夫?逆に僕の方が君達の事を心配に思うけどね。トップ集団なのに危機意識が無さ過ぎ!だけどねぇ~、どの神も自分が一番だとしか思っていないみたいだしね。そんなに浅ましいから竜王も嫌になって神域から出てしまったのが分からないのかな?僕が最初に予想した通りクソゲームをする展開になったね。そこまでして神域で1番になって権力を手に入れたいのかな?トップはトップで目に見えないとろこで意外とっていうか、かな~り大変なんだよ。まぁ、アレは独裁者気取りをしたいみたいだけど、どこの独裁者も最後は悲惨だってのに、自分だけは違うと思っているから笑っちゃうね。ふふふ・・・、それとみんな勘違いしていると思うけど、勇気君は単に竜王の力を受け継いだ後継者じゃないよ、彼を舐めたら大変なんだからね。まぁ、みんなが自滅していく様を楽しく見させてもらうよ。」



イザナギの言葉通り、アンジェラが直後に放った偵察のサキュバスの刺客だったが、何の見せ場もなくあっという間に勇気に倒されたのだった。






「私に対してやましい事は絶対に無かったのよね?」


仁王立ちのほむらの前で勇気と理沙は正座をして項垂れている。


「はい・・・」

「神に誓って・・・」


「ふむ・・・」


腰に当てていた腕を胸の前で組みジロッと2人を睨む。

ほむらのたわわな胸が腕を組む事でグイッと押し上げられる。

そんなほむらを理沙がとても羨ましそうな顔で見て、すぐに視線を自分の胸へ下ろす。


(このあまりの違いは何なのよ!イザナギ様、これはワザとなんですか?)


何の違いかは言わないが、圧倒的な質量の差に少し涙目になった理沙だった。



「まぁ、あの理沙がすぐに勇気と仲良くなる事は無いとは思うけど、それよりもねぇ~~~、私が一番怒っているのは理沙!」


その言葉に理沙がピクンと震える。


「あなたが私よりも先に勇気の部屋に行った事よ!勇気が初めて部屋に入れる女の人が理沙!あなたってのが気に入らいないわ!」


「そ、それは・・・、でも、色々と話したい事があったから・・・」


「それな・・・」


勇気がボソッと話す。


「俺の部屋に初めて入ったのは理沙じゃないぞ。」



「「何ぃいいいいいい!」」



ほむらと理沙が勇気を睨む。


「「誰なの!」」


あまりの2人の剣幕に思わず勇気がのけ反ってしまう。


「い、いや・・・、唯ならよく俺の部屋に来ているからな。もちろん、いつも大河と一緒だけど、だからな、理沙が一番じゃないって事だ。」



「はぁ~~~~~?」



ガックリとほむらが項垂れてしまう。


「そんな意味じゃないのにぃぃぃ・・・」


項垂れたほむらの肩を理沙がポンポンと叩く。


「ほむらさん、勇気さんってそんな感じかも?ちょっと思ったけど、かなりの強者かもね。頑張って!」


「うん・・・、私もそんな気がしたわ。頑張る・・・」


(2人に何があった?)


ほむらと理沙がいきなり意気投合して、理沙がほむらを慰めている気がすると思った勇気だった。



「それでさっきの話の続きだけど、お前がこうして人間になって俺に近づいた目的は何?」


ジロリと勇気が理沙を睨んだ。


今の理沙はさっきと同じように勇気のベッドに座っている。

その隣にはほむらも一緒に座っていた。


勇気の言葉に俯いていた理沙だったが、意を決したかのようにグッと唇を引き締め顔を上げ勇気を見つめる。


「イザナギ様の言われたの、あなたの竜王の力を私が取り込む事が出来れば再び女神に戻れるとね・・・、だけど私にはもう・・・」


ブルブルと震えながら拳を握り締めている。


「イザナギ様が言っていたでしょう。私は記憶を持ったまま生まれ変わり続けたって・・・」


「そうだな、確かそんな話しをしていたな。」


「最初は・・・、最初はそう、私はずっとあなたに復讐をしようと考えていたわ。記憶を持ったまま生まれ変わる事はイザナギ様に何か考えがあるとね。女神である私が人間に負ける?そんな汚点は絶対に拭わなくてならないと・・・、勇気さん、あなたを恨む事でずっと輪廻を繰り返していたの。私が再び女神として生まれ変わる試練だとも思ってね。」


「まぁ、あの時のお前の感じならそうかもしれないな。ていうか、そっちの方がお前らしいしな。」


「そう・・・、あの時の私は本当に馬鹿だった・・・」


グッと握り締めていた拳をほむらがそっと握る。


「ほむらさん、ありがとう・・・、こんな嫌な私に優しくしてくれて・・・、だけどね・・・」


理沙の瞳から涙がポロッと流れた。


「最初の微生物の頃はそんなにも死が酷いものだとは思わなかったわ。生れたと思った瞬間にすぐに目の前が真っ暗になるのよ。『あ!死んでしまった!』って、そんな感じよ。まぁ、痛覚すら無いのだから実感は湧かなかったわ。でもね、段々と死ぬのが恐怖になってきたわ。魚に生れたらすぐに死ねればまだマシ、生きたまま丸呑みにされて、ジワジワと体を消化されていく苦しみ、野生の小動物に生まれ変われば肉食獣に生きたまま内臓を喰われる・・・、痛い!苦しい!それでも最後まで意識を失う事が出来ない!それを何百回!何千回もよ!」


止めどなく涙が溢れ、ポタポタと理沙の手を握っているほむらの手に落ちる。


「本当は冥界にある地獄に落とされたのでは?とも思ったわ。神域でエリートだった私が何でこんな目に遭わなければならないの?何で一方的に理不尽な目に遭わなくてならないの?そんな事を思ってずっと殺され輪廻を繰り返したの。もうどれだけ輪廻したか分からない、考える事も嫌になってもうどうでもよくなってきたわ。」


「辛かったんだね・・・」


ほむらが優しく理沙を抱いた。


「その時ふと思ったの・・・、私が女神となって今までしてきた事って?そういえば私って・・・、誰の事も考えていなかった。自分が正しいと思って行動していた事って?私の周りで楽しい顔をしていた者はいたの?こんなに苦しいのに誰も助けてくれない・・・、でも私は誰かを助けた?それ以前に誰かの話を聞いた事があった?私が下等生物だと思って使い捨てだと思っていた人間は?今の私は記憶がある野生動物だけど、人間に対して私がやってきた事は?」


泣いていた理沙がブルブルと震え始める。


「殺され続けている間もずっとそんな事を考えていたの。今の私が経験している事は過去に私が女神だった時に人間に対して行ってきた事ではないの?今まで私が召喚してきた人間はゴミだと思って私の好きなようにしていたわ。それこそ本当にゴミを捨てるみたいに・・・、私が理不尽だと思っていた事を人間もされていたんじゃないの?そう思うと、これは私が今まで行ってきた事の罰なんだって・・・、みんなはこんなにも辛い思いをして死んでいったのだと・・・、私は・・・」


抱きしめられていたほむらにギュッとしがみ付いた。


「ごめんなさい・・・、私があなた存在を認めなかったばかりに、今まで沢山の人に理不尽を押し付けて命を奪ってきたの・・・、だからこの輪廻は私の罰・・・、でも、理不尽な死はもう嫌・・・、だけどイザナギ様は許してくれなかったみたい・・・、もう死にたくないと思っているのにそれからも延々に死の輪廻を繰り返されていたの。」


勇気が腕を組み深く頷く。


「あいつならそこまで延々とやるだろう、どこまでも徹底的に完全に心が折れるまでな。」


「私もそう思うわ。」


ほむらも勇気の言葉に頷く。


少し落ち着いたのか、ほむらに抱き着いていた理沙が横に座った。


「また死んで真っ暗な闇の中にずっといたの。このままもう転生したくない!また死ぬ思いは嫌!もう生きることさえ嫌になっていたところに急に目の前が眩しくなったの。気が付けば私は人間になっていたのよ。そして目の前には車が迫っていて、『あぁぁぁ・・・、また死ぬんだ・・・、もう嫌!誰か助けて!』と心の中で叫んだの。そうしたら・・・」


「俺が助けていたって訳か?」


「そう・・・、私の目の前には勇気さんがいたの。だからね、生き残れた喜びよりも勇気さんとのあの戦いが頭の中に蘇ってきて・・・、『私は勇気さんに復讐で殺されるんだな・・・』、そう思ったら、体がガクガク震えて目の前が暗くなって・・・」


「それがあの気絶の理由なんだ。それは悪かったよ。」


「いいの・・・、元は私が発端で始まった事だし・・・、例え勇気さんに殺されても私からは文句は言えないわ。」



・・・



しばらく3人が黙ってしまい、沈黙が部屋の中に漂う。


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やる気倍増になります。

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