第6・9節 炭手前(風炉)~炭と炭斗について~
古田は火のついていない風炉を、水屋から持ち出した。
古田:「まずは、道具炭の種類を覚えましょう。寸法などは武野紹鴎殿と利休殿が決めたのですが、名称は決めていなかったのでしょう、名称が一定ではありません。そこで、利休殿には裏千家流の名称で覚えていただきます。炉用と風炉用があり、炉の方が一回り大きくなります。まずは下火です。炭は丸毬打を使います。毬打は、正月の遊戯として平安末期から江戸初期にかけて行われた遊びに用いた道具で、木製の毬を打つのに用いた長い柄の槌のことです。五徳の真ん中に三本置いてあるのが丸毬打の炭です。次に胴炭を置きます。道具炭の中で最も大きく、芯となる炭です。横に寝かせて用います。置いてみてください。」
私:「こうですか?」
古田:「炭を置く場合、十文字や檜垣や橋かけになったり、炭が離ればなれになったり、五徳を挟んだり、炉壇に触れたり、風炉の灰を崩したりしないようにします。以前、利休殿は炭の置きようについて、いくつかご指示されています。歪んだ炭は歪んだ方を内側に置くこと。最初に入れる炭は少し重く入れ、立炭は軽く置くようにすること。風炉の炭は、脇の方に長方形に見えるように置くこと。他にもありますが、取りあえず、これらの点に注意して、炭を置いていきましょう。」
私は胴炭を丸毬打の手前側、五徳にかからないよう横向きに置いた。
古田:「良い感じです。もう少し重そうに持つと、より良くなります。次に丸毬打と割毬打を置きます。割毬打は丸毬打を縦半分に割った炭です。裏千家では中央の下火の左側に置きます。」
私:「置きました。」
古田:「次に丸管炭です。胴炭と同じ長さで、太さが半分以下の細い炭です。中央の下火の右側に置きます。同じ場所に枝炭を数本置きます。色が白い炭です。」
私:「置きました。」
古田:「最後に止炭を置きます。点炭とも言って、文字を書いて、終わりに点を打つのに似た心持ちでするところからの名です。さて、そろそろ火が熾きてきましたね。
炭置くは たとへ習ひに そむくとも
湯のよくたぎる 炭は炭なり
利休百首の一つです。この置き方なら釜の湯が沸くでしょう。合格です。」
私:「ありがとうございます。」
細川:「古田殿、炭斗の話もした方が良いのでは?」
古田:「そうですね。今日、使ったのは瓢の炭斗です。炭斗には唐物と和物があり、唐物は精巧を極めたものが多いですね。唐物炭斗には、籐・竹などで編まれた籠、漆器類や青貝入り、金馬などがあります。和物炭斗には、籐・竹・藤蔓・蓮茎などで編まれた籠や、瓢、一閑張、蒔絵、曲物、指物などがあります。利休殿は、鱗籠・達磨・瓢・木地炭台・大きな油竹・菊置上神折敷などを良く使われました。まあ、あまり一度に覚えるのも大変でしょう。まずは菜籠、瓢、神折敷、炭台、箱炭斗の5種類だけ覚えてください。炉と風炉の区別はありません。」
細川:「江戸の元禄時代以降に炉と風炉の区別がつきます。平成時代、瓢は、開炉と口切の頃に用います。神折敷は真の炭手前や献茶、炭台は真の炭手前以外は、炉専用で用いますね。」
古田:「さて、今日はこんなところでしょう。最後、利休殿が沸かした湯で、茶を飲んで解散としましょう。利休殿、私たちに濃茶を練ってください。」
私:「はい、やってみます。」
その日は3人で濃茶を飲み、お開きとなった。
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)」にも掲載しています。
次回から第2章に入ります。
※第2章の目次は、少し早い時間に公開予定です。




