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利休になった日  作者: shoundo
第5節 亭主
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第5・7節 茶筌通し(割り稽古)~未来人・海北友松について~

私:「東陽坊長盛(とうようぼうちょうぜい)殿以外にも未来人はいたんですよね。」

細川:「では、東陽坊長盛殿の友人だった絵師(えし)海北友松(かいほうゆうしょう)殿の説明をしましょう。計算上、1615年まで生きる必要があったのですが、今から半年ほど前の1589年末に火事に巻き込まれ死んでしまいます。放火だったようですが、犯人は今も捕まっていません。」

私:「その放火も山田一郎の仕業なのですね。」

古田:「アルファベットでJIROと読めるように()かれた、油の跡があったそうです。」

細川:「海北友松殿は、私の父・細川幽(ほそかわゆう)(さい)の友人で、私も何度か会っていました。1579年に未来人・(かつら)流氷(りゅうひょう)となっていたのですが、最初の1年間は未来人と気づきませんでした。きっかけは、父・幽斎の東京と言う宿場町を聞いたことがあるかという質問でした。翌日から、私と古田殿で海北友松殿の動向を探り始めました。」

私:「すぐに、元号で確認しなかったのですね。」

細川:「兄・山田一郎は歴史に精通しています。安土桃山時代で普通に暮らしていた時点で、山田一郎の可能性があると判断しました。何日間か行動を監視するうち、海北友松殿が神社で、(かつら)一角(いっかく)師匠のいる東京に早く戻りたいと独り言つ(ひとりごつ)場面を目撃します。数日後、海北友松殿を細川邸の茶会に招き、危険を承知で未来人か否かを、平成という元号を使って確認しました。もし、海北友松殿が山田一郎だった場合は、すぐ刀で切るつもりでいました。」

私:「山田一郎の可能性がある未来人と話すのは、それほど危険な事なのですね。」

細川:「1580年当時は、古田殿しか未来人だとわかっていませんでした。」

私:「つまり、海北友松殿は、古田殿と細川殿を入れて3人目の未来人だったということですね。」

細川:「そうなります。私も緊張していたのでしょうね。かなり警戒されてしまいました。結局、壁に手をつき、詰問(きつもん)する形で聞き出す事になります。」

私:「壁ドンですか。」

細川:「壁ドンです。」

古田:「壁ドン?」

細川:「海北友松殿は平成時代の落語家・桂流氷でした。桂一角師匠率いる桂一門の一番弟子で、自身も何人か弟子を持っていたそうです。特に戦国時代の歴史に興味があり、海北友松が狩野(かのう)(えい)(とく)の弟子で、絵師だということも知っていました。元々、交友関係の少なかったことも幸いし、1579年2月、この時代に来て数日も立たないうちに、京都に馴染んだそうです。」

古田:「未来人とわかってからは、私とも交友するようになりますが、絵師として生きたいと言って、茶道の練習は断られました。」

細川:「1585年2月、東陽坊長盛殿が未来人と入れ替わったことを知り、大切な友人を亡くしたと泣き出します。未来人と入れ替わった時点で、過去人は死んでしまうからです。それ以降、私と古田殿は、海北友松殿から少々距離を置かれるようになります。もし友人が未来人と入れ替わったとしても、そのことを知りたくないというのが理由でした。」

古田:「海北友松殿は絵師として、様々な絵を描くようになります。周りから、絵を描くのに没頭して、あまり外出しなくなったと噂されるほどでした。心配した細川幽斎殿が、時々、話し相手になっていたようですが、ほとんどの交友関係は絶った感じでした。」

細川:「1589年末、海北友松殿が火事で死亡する数日前、父・細川幽斎に一枚の絵を渡します。私・細川三斎にくれるとのことでした。これがその絵です。」

私:「これは!」

細川:「関白様の肖像画です。何日もかけて描かれたこの絵を、なぜ私に託したのか。何か意味があると思うのですが、まだよくわかっていません。」

私:「関白様が山田一郎だというダイイングメッセージではないのですか?」

細川:「その可能性はありますね。ただ、父・幽斎はその時の様子をこんな風に言っています。」

幽斎:「友松殿が、お前に、関白様は信じなさいと伝えてほしいなどと言うから、息子は関白様をいつでも信頼していると言ってやった。そしたら、関白様の絵をお前に渡してくれと、奥の部屋から出してきた。」

私:「関白様は信じなさいということは、関白様は犯人ではないということですか?」

細川:「その可能性もあります。関白様の周辺は警護が厳しいので、未来人か否かも含め、慎重に調べる必要があります。」


古田が手を叩き、割り稽古の練習を促した。

古田:「まあ、その辺は私と細川殿に任せてください。とにかく利休殿は、茶道の練習に注力しましょうね。」

細川:「そうですね。利休殿、がんばりましょう。」


古田は、釜から茶碗に湯を入れ、私の顔をみた。

古田:「さて、次は茶筌通しをしましょう。茶筌の柄を茶碗の縁にかけ、左手を茶碗に添えます。右手は親指と人差し指で茶筌を持ち、残りの三本の指を揃えて伸ばします。これが基本形です。」

私:「できました。」

古田:「右手で茶筌の柄を、親指を上にして持ち替え、茶筌を真横にして持ち上げます。右手の指先を動かさずに、手首を内側に回しながらおろし、穂先を調べます。このため、穂先調べとも言います。茶筌の柄を茶碗の縁にあずけ、基本形に戻します。点前により、数回この動作を繰り返します。何度かやってみましょう。」


私は茶筌を回してはこつんと茶碗の縁に当て、何度も穂先を調べた。

古田:「では、茶筌を茶碗から出します。茶筌を持ち直し、数回、湯の中で振り、『の』の字を書いて取り出します。茶筌の出し方は、両手でカタカナのハの字を書くように、右手は右側に、左手は左側に腕ごと引きます。形は自然体を意識してください。」


この作品は「YouTube(

https://www.youtube.com/watch?v=thdQ6-5cG1I&list=PLH33wsaeFCZWhaiIBx24yNxr-fPINhaRS&index=51

)」にも掲載しています。

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