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利休になった日  作者: shoundo
第10節 湯治
102/150

第10・2節 秀吉に正体がバレた日

最初の数日は、秀吉に茶を供するだけで、毎日、温泉を楽しんでいた。

10月1日、秀吉が人払いをして私に話しかけて来た。

秀吉:「そなた、未来から来た者じゃな。」

私:「えっ!」

秀吉:「えっ、ではない。そうじゃのお・・・。」


秀吉は遠くを見つめ、語りだした。

秀吉:「宗易が以前と違うことは、しばらく前から分かっていたのじゃ。あの威圧的で鬼気迫る雰囲気や、どことなくわしを見下したような物言い。そして、わしとは違う圧倒的な仁徳。全て、おぬしからは感じられない。」

私:「なんか、すごい人だったんですね利休は。」

秀吉:「そうじゃ。すごい人じゃった。わしは憧れていた、宗易のような雰囲気や仁徳を持ちたいとな。そんな折、急に気配が変わった。たしか紅梅を壺に浮かべたあたりからかのう。」

私:「あっ、それがこちらに来た初日です。さすがは関白様。正解です。」

秀吉:「やはりそうか!」


秀吉がこちらに向き直り、珍しく正座をして話しかけて来た。

秀吉:「未来から来た者よ。わしに未来の力を貸すのじゃ。代わりに、この時代での命を保証しよう。じゃが、断ればこの場で切り捨てる。」

私:「それだと選択肢がないじゃないですか。」

秀吉:「そうじゃな。まあ、良いではないか。」

私:「わかりました。では、可能な範囲でお力をお貸しします。それで、何をすれば良いですか?」

秀吉:「まず、自己紹介をしてもらおう。おぬしに何ができるかわからぬしな。」


私は自己紹介をした。

自分の氏名、年齢、職業、そして、山田次郎の作った機械の説明をした。

私:「プログラムというのは、機械を動かすための言葉です。」

秀吉:「じゃから、その機械というのがわからぬのじゃ。じゃが、お主の話からすると、この世界へ来るための機械の基礎部分は作れるということなのじゃな?」

私:「その機械のソフト面を直すことは出来ると思いますが、基礎部分はハード面なので、作ることは難しいと思います。」

秀吉:「ソフトというのは、機械の頭の部分じゃったな。つまり体の部分がハードじゃな。」

私:「おっしゃる通りです。」

秀吉:「なるほど、だいぶ分かってきた。」


私は、山田次郎の作った機械について分かる範囲で説明をした。

秀吉:「つまり、未来へ戻る為には、キーワードと日時を指定した自害が必要なのじゃな。」

私:「はい。」

秀吉:「逆に、わしが未来へ行くことは可能なのか?」

私:「機械がありませんので、現時点では無理です。関白様は、未来へ行きたいのですか?」

秀吉:「見てみたいではないか、未来の日本を。しかし、そなたは役に立ちそうだな。正忠(まさただ)は、命乞いをするだけで何も知らない小娘だったからな。」

私:「正忠というと、瀬田掃部(せたかもん)殿ですね。やはり彼が未来人でしたか。」

秀吉:「そなたも気づいておったか。」


秀吉が言うには、瀬田掃部は未来からきた二十代美人女性だそうだ。

貧乏な家で育ち、都会にあこがれて上京したが、仕事にあぶれ、万引きの常習犯となったようだ。

金と権威に弱いが、野心はない。

学生時代は演劇部の部長。

演技力が非常に高く、万引きがばれた時に、泣く姿があまりにも可哀想に見えるため、一度も捕まったことがないそうだ。

戦略ゲームが得意で、信長の野望シリーズが一番のお気に入りだとか。

秀吉:「さて、これからじゃが。そなたは、そのまま宗易を演じよ。必要に応じてわしから声をかける。」

私:「かしこまりました。」

秀吉:「変わったやつじゃな。この秀吉を前に、普通に話しが出来るとは。」

私:「そうですね。私も驚いています。共に戦場に立ったせいでしょうか。」

秀吉:「そなたは、風邪で寝込んでいただけではないか。」

私:「そうでした。」


私と秀吉は、その後も会話がはずみ、共に風呂へ行った。

秀吉:「どれ、背中を流してやろう。」

私:「ありがとうございます。助かります。」

秀吉:「変わったやつじゃ。普通は、恐れ多いとか言って、断るものじゃ。」

私:「えっ!そうなのですか。」

秀吉:「そうなのじゃよ。まあ良い。次はわしの背中を流せ。」

私:「はい。かしこまりました。」


翌日、秀吉は私に茶の湯の手ほどきをした。

秀吉:「それではだめじゃ。釜に湯を戻す時は、もっとゆっくり柄杓を傾けるのじゃ。」

私:「はい。こうですね。」

秀吉:「そうじゃ、そうじゃ。うまいではないか。」

私:「ありがとうございます。」

秀吉:「次におかしかったのが、足運びじゃな。そなたの足運びは、まったくの素人じゃ。能楽(のうがく)の歩き方が基本なのじゃが、わかるか。こう歩くのじゃ。」


秀吉は、立って私に歩き方を指導した。

その後も、事細かに指導してくれた。

秀吉:「いや、愉快、愉快。あの宗易にわしが茶の湯を教えておるぞ。」

私:「ありがとうございます。とても勉強になります。」

秀吉:「そうか。そうか。」


(なご)やかな雰囲気の中、数日が過ぎて行った。

ふと私は、このままで良いのだろうかと思っていた。

秀吉に正体がバレた。

これはかなり危険なことだと思うのだが・・・。


この作品は「YouTube(

https://www.youtube.com/watch?v=PYnBvDJS_Rc&list=PLH33wsaeFCZWtchkfIIltAH2CqFwbjcH8&index=12

)」にも掲載しています。

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