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第9話 それって「妹と再会」ってことだよね?

 「旦那様。大切なお話がございます。」


 ここはカミーラ家の屋敷。

ノイルが追放を言い渡された部屋だ。

ノイルを追放した張本人、ゼリトリフ・カミーラが椅子に腰かけている。


 「何だ。」


 ゼリトリフの前に立つのは、屋敷のメイド長リリアナ。

長年、この屋敷に仕えている経験豊富な女性だ。

彼女は今、ゼリトリフにある報告をしようとしていた。


 「旦那様も既にお聞きになられたかもしれませんが、本日行われたレヴィアース勇者学院の入試において模擬戦で合格した者が現れました。」

「そのことなら、既に聞いた。」

「実は、その合格者がノイル様だという話がございました。」

「何だと…?」


 ゼリトリフが怪訝な顔をする。


 「実際に模擬戦を観戦した者たちからの証言を照らし合わせても、ノイル様である可能性が高いかと。」

「あんな奴に様など付けるな。」


 ゼリトリフが不快さをあらわにした。


 「申し訳ありません。ちなみに、その合格者は一切の魔法を使わず、剣1本でエクイシア・レスカル様に勝利なさったそうです。」

「あの出来損ないが?にわかには信じられぬ。人を自由に手配してよい。その合格者が確かにあのノイルなのか、しっかり調査しろ。」

「かしこまりました。分かり次第、ご報告に参ります。」


 リリアナは、一礼して部屋を出て行った。


-あの無能が、曲がりなりにも貴族の長男であるエクイシアに勝てる訳がない。


 「何かの間違いだろう。」


 そう呟くと、ゼリトリフは残っていた仕事に取り掛かった。


---------------------------

 3日が経ち、場所は再びカミーラ家の一室。

ゼリトリフの前には、再びリリアナが立っていた。


 「それで、調査結果はどうだった。」

「はい。信用出来る筋に調べさせた結果がこちらに。」


 リリアナがゼリトリフに1枚の紙を渡す。

その内容を見て、ゼリトリフの額に青筋が浮かんだ。


 「これは、確かなのだな?」

「はい。間違いございません。」


-調査結果

 例の合格者は、ノイルであると考えて間違いない。


 「して、奴は今どこにいるのだ?」

「申し訳ございません。未だに調べがついておりません。」

「早急に調べろ。今日中だ。いいな?」

「かしこまりました。」


 リリアナが慌てて部屋を出て行く。

入れ違いに、フィアが入ってきた。


 「父上にご報告に参りました。」

「うむ。」


フィアが持っているのは、先日の受験結果だ。

これのせいで、ノイルは家から追い出された。


 「さぁ、その紙を見せなさい。」

「はい。」


内容を見たゼリトリフの顔が、今度は笑顔になった。


-審査結果

 魔法適性:全能オール

 魔力数値:1896

 魔法筆記:88点

 剣術試験:94点

 魔法実践:98点

 特待生として合格。


 「見事だ。よくやったな。」

「ありがとうございます。」


 ひとしきりフィアを褒めた後、ゼリトリフは真剣な顔になって言った。


 「お前も聞いているだろうが、今年の合格者に模擬戦で合格した者がいる。どうやらその者は、家を出て行ったノイルらしい。」

「お兄様が…っ!?」

「あいつは家を出て行ったのだ!お前の兄ではない!」


 ゼリトリフが声を荒らげた。


 「申し訳…ございません…。」


 フィアがやや不服そうに謝罪した。

彼女にとっては、ノイルは今でも大好きな「お兄様」なのだ。


 「あの出来損ないが勇者学院に入学したとなれば、あいつを追放したカミーラ家には『見る目が無い』などと非難が起こるだろう。それは、何としても避けねばならない。」

「では、どうされるのですか?」

「うむ。お前ならどうする?フィア。」


 フィアは即答した。


 「お兄様にカミーラ家に戻って来ていただきます。」

「馬鹿者!!」


 ゼリトリフが怒鳴りつける。


 「そんなことをすれば、ますます恥の上塗りだ!絶対にあってはならぬ!」

「では一体…」

「殺してこい。」

「はい…?」

「あの出来損ないを殺してこい。お前がだ。」


 ゼリトリフは冷たく言い放った。

フィアの顔が驚きに染まる。


 「ですが、父上。」

「問答無用だ。ノイルを殺してこい。居場所は今、リリアナが調べている。分かり次第、そこに急行して素早く仕留めるのだ。よいな?」


 ゼリトリフの威圧感に、フィアは思わず頷いてしまった。

というより、この場合では肯定の意思を示す以外に道はなかったのである。


 「必ず、殺すのだぞ。」


 部屋を出るフィアの背中に、ゼリトリフが念押しした。


---------------------------

 一通りの用意を整え、フィアはリリアナに教えて貰った場所へ向かう。

そこは、ノイルが寝床にしていた裏路地だった。


 「ここね。」


 フィアが路地を進むと、突き当たりにぶつかった。

リリアナのガイドによれば、右に曲がるとなっている。

ガイド通りに進むと、フィアの視線は体を休めているノイルを捉えた。


-間違いない。お兄様だ。


 荷物を置いて身軽になると、フィアは大きく深呼吸した。

そして、50m程先にいるノイルをしっかりと見つめる。

と、ノイルの方もフィアに気付いた。


-フィア!?


 最愛の妹との再会に、ノイルは胸を躍らせる。

しかしそんなノイルの頭に、不斬剣ナンバーファイブの修行の際のサリシアの言葉が浮かんだ。


 「君の妹が、誰かに脅されて君を殺しに来たとする。」


-まさかフィアは俺を殺しに?

 いや、フィアがそんなことする訳がない。

 でも、あの父親ならやりかねないぞ。

 俺が合格したことを知って、俺を殺させようとしているのかもしれない!


 すると、フィアが両手を大きく広げ、ノイルに向けて駆け出した。


-やっぱりだ!

 くそっ、戦うしかないのか。


 ノイルは剣を鞘から抜こうとする。

しかし、それよりも早くフィアがノイルの元に到達した。


 この時点で、ノイルは1つの勘違いをしていた。

父親が、フィアにノイルを殺させようとしたというのは正しい。

しかし、フィアがノイルを殺そうとしているのかといえばそうではなかった。


 「お兄様ぁぁ!ようやくお会い出来ましたぁぁ!」


 涙ながらに、フィアがノイルの胸に飛び込む。

そのまま、ノイルに抱きついたフィアは大声で泣き始めた。


-んん?


 ノイルは完全に混乱している。


-俺を殺しに来たんじゃなかったのか…?

 ひょっとして、ただ話を聞き付けて会いに来ただけなのか…?


 ひとまず、フィアに敵意が無いと判断したノイルはフィアを抱き締めた。


 「久しぶりだな。フィア。」

「はい…っ!お兄様ぁ…っ!」


 約1年ぶりとなる、感動の再会だ。

ふと、フィアが赤面してノイルから離れる。


 「私ったら!取り乱してしまってみっともない…。」


 恥ずかしそうに言うと、フィアはパンパンと軽く自分の頬を叩いた。

気持ちを落ち着け、ノイルに向き合う。


 「お兄様、大事な話があります。」


-何だ?

 やはり、勝負を挑むというのか…?


 再び、やや頬を赤らめたフィアの言葉は、ノイルの想像の斜め上を行くものだった。


 「お兄様!私と駆け落ちしましょう!」

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