第41話 それって「空間を超える矢」ってことだよね?
ノイルたちが魔王城の地下へ歩き始めてから、約1時間が経った。
しかし、まだまだ暗闇の終わりは見えない。
フィアのムーン・ボールだけが、唯一の明かりだ。
地下への道は階段になっていて、ところどころに魔法の罠が仕掛けられている。
罠はかなり強力で、普通の人間なら触れた瞬間に即死だろうというものもあった。
もちろん、ノイルたちは空離剣を使って進んでいるので、罠があろうと一切関係ないのだが。
-これだけ罠を張り巡らせるということは、それだけ奥に隠したいものがあるということだな。
この先にエルフの謎を解く鍵があるというノイルの確信は、ますます強くなっていた。
「暗闇は精神的に辛いものがある。少し、休憩しよう。」
ノイルの声で、全員がその場に腰を下ろす。
「かなり疲れたぞっ。」
そう言いながら、ガイスが大きく伸びをする。
「ぐあっ!」
突然、ガイスがうめき声を上げた。
驚いてノイルが見ると、大きく上げたガイスの右手に矢が刺さっている。
ぽたぽたと血が滴り落ちた。
「ロスタ!治療を!」
「分かった!」
ノイルはすぐにロスタへ指示を出し、矢が飛んできたと思わしき方向を真眼で見る。
-なぜだ?
空間は確かに斬り離されているはず。
矢が飛んできても、刺さるはずがない。
と、鋭く風を切る音がした。
ノイルが、直感だけを頼りに剣を振る。
確かな手応えがあった。
ノイルの足元に、ガイスの手に刺さっていたのと同じ矢が転がる。
「何だ、これは。」
ノイルが矢を拾い上げた。
見たところ、何の変哲もない矢だ。
しかし、真眼で見るとその矢に特殊な魔力が宿っているのが分かった。
5つの属性のどれにも属さない、不思議な魔力。
「空間を超えてくるなんて…。」
ありえないという様子で、フィアも矢を見た。
それとほぼ同時に、再びあの風を切る音がする。
「魔滅剣!」
ノイルが先程と同じ場所を斬った。
同じ形の矢が転がる。
その矢からは、特殊な魔力は感じられなかった。
「何だったんだぞっ…。」
治療を終えたガイスが、魔力の消えた矢を拾う。
自身の手に刺さった矢と見比べて、首を傾げる。
「何だか、雰囲気が違うんだぞっ。」
「魔力の有無だな。」
ノイルが答えた。
「どの属性にも属さない、不思議な魔力だ。空間を超えてきたのも、この魔力によるものだろうな。」
「空間を超えるなんて、そんなことが出来るんだぞっ?」
「空間を斬る剣術があるんだ。空間を超える魔法があっても、不思議ではない。ただ、それが使える者となるとかなり限られてくるだろうがな。この状況から考えて、おそらく魔王だろう。」
ノイルは真剣な顔になると、全員を見回して言った。
「空間を超えてくる罠がある以上、空離剣を使っても安全とは言い切れない。ここから先の罠は、全て俺が魔滅剣で斬って進む。それぞれも、罠に掛からないよう気をつけてくれ。」
4人が頷く。
「ガイス、怪我の状態は大丈夫か?」
「この通り、綺麗さっぱりだぞっ。」
ガイスの右手は、矢が刺さっていたとは思えないくらい綺麗になっていた。
出血も傷跡もない。
さすがは、ロスタといったところだろう。
「よし。では、ゆっくり慎重に進もう。」
空離剣で空間を斬り離した状態を維持しつつ、ノイルはゆっくりと歩き出した。
周囲に気を配りながら、剣を構えて進む。
フィアたちも、周りを警戒しながらノイルに続いた。
さらに30分程歩いた。
空間を超える罠は進むにつれて増加し、ノイルはひたすらに罠を斬り続けた。
フィアたちも、飛んできた剣や矢を魔法で防ぐなどして、全員無傷で切り抜けている。
そして、やや段が広くなっている場所に辿り着いた。
「また少し休もう。警戒は緩めないでくれ。」
ノイルの声で全員が歩みを止めたが、罠に備えて今度は誰も腰を下ろさない。
立ったまま、休息をとった。
「どこまで続いているのかしらね。」
リンテが呟いた。
「疲れたか?」
「かなりね。ただでさえ暗闇の階段はきついっていうのに、危険な罠まであったらそれは疲れるわよ。まぁ、魔王城の地下を目指すんだからこれくらいは当然かもしれないけれど。」
そしてリンテは、小さくため息をついた。
「罠は確かにどんどん危険になっているな。ただそれだけ、この先に隠されている物に近づいているということだ。もう少し、頑張ってみよう。」
ノイルが励ます。
「そうね」と、リンテは頷いた。
さらにさらに1時間程歩き、ノイルたちは広く開いた場所に出た。
段が広くなっているというレベルではなく、大きな部屋のようだ。
「フィア、もう少し明るく出来るか?」
ノイルの言葉に頷き、フィアはムーン・ボールに込める魔力を強めた。
部屋全体が、明るく照らされる。
「うわ!何なのよこれ!」
リンテが悲鳴に近い声を上げる。
ムーン・ボールに照らされた部屋は、大量の白骨で満ちていた。
ノイルたちが今立っている部屋の入口を除いて、ほとんどの場所が白骨で埋め尽くされている。
「気味が悪いね。ぞっとするよ。」
ロスタが、両手で自らの肩を抱き締めながら言った。
全員が、この恐ろしい光景に唖然とさせられている。
「お兄様、あそこだけ白骨がたくさん集まっています。」
フィアが指さす先では、確かに多量の白骨が山を作っている。
その高さは、2mほどに達していた。
そして入口からその山まで、まるで道を開けているように白骨が無い。
「行ってみますか?」
「そうだな。」
ノイルとフィアは白骨のないところを歩き、その山の前まで進む。
気味の悪さに顔をしかめながら、リンテたちも山の前までやってきた。
-この部屋には、妙な魔力は感じられないな。
罠が無いと判断したノイルは、剣を振って全員を元の空間に戻す。
そして、積み上がった白骨のうち1つに手を触れた。
わずかな振動が伝わり、あっという間に白骨たちが崩れ落ちる。
ノイルたちは、慌てて後ずさりした。
がらがらと、大きな音がする。
足元に転がってきた頭蓋骨に、ロスタが「ひっ」と悲鳴を上げた。
「お兄様、これは…。」
フィアの声に、ノイルたちが顔を上げる。
白骨の山が崩れた後にあったのは、巨大な鎖で封じられた大きなドアだった。
読んでいただいてありがとうございます!!
広告の下にスクロールしていただいて「★★★★★の評価」と「ブックマークへの登録」をよろしくお願いします!
特に「☆☆☆☆☆」が「★★★★★」になるとすごく嬉しいです!!
どうかどうかよろしくお願いします!!




