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第40話 それって「届いた勇気と繋がれた鍵」ってことだよね?

 「こ、これが…」

「う、うわぁ…」

「でかいわね…」

「それに、なんか禍々しいんだぞっ…」


 魔王城を前にして、フィアたちが口々に感想を述べる。

クリエストらの襲撃もあって、魔王城に辿り着いたのは真夜中。

歩きまくって戦ってと、疲労はかなり蓄積している。


 「とりあえず、中に入るぞ。」


 ノイルが、魔王城の門を押し開けた。

フィアがおそるおそる中を覗き込む。


 「何もいませんね。」

「ああ。とにかく入って、まずは休もう。」


 躊躇なく世界最悪の魔境に入っていくノイルに、4人も慌てて続いた。

ノイルは、暗い魔王城の中を自分の家のようにずんずん進んでいく。

対するフィアたちは、時々響く魔物の唸り声にびっくりさせられながら歩いた。


 「ノイル君、ここにはどれくらい魔物がいるの?」


 周りを見回しながら、ロスタが聞く。

ノイルは歩きながら答えた。


 「そうだな。前回来た時にはざっと120くらい倒したが、魔王の魔法のせいでまた増えている。今は大体300くらい、いると思うぞ。」

「そ、そんなに。」

「安心しろ。お前らは十分強い。よっぽど相性の悪い相手じゃない限り、倒せるだろう。お、着いたぞ。ここだ。」


 ノイルが、1つの部屋の前で立ち止まった。

その部屋は、ノイルが修行の間に寝泊まりしていた部屋だ。

ノイルが、いきなりドアを開ける。

リンテが慌てて言った。


 「ちょっと!中に魔物とかいたらどうするのよ!」

「大丈夫だ。部屋の中から魔力は感じなかった。それにほら、何もいないだろう?」


 ノイルが、リンテに部屋の中を見せて言う。

部屋は、ノイルが使っていた時から何一つ変わっていなかった。


 「危険はない。さぁ、入れ。」


 全員が、部屋に入る。


 「誰か灯りを頼めるか?」

「では私が。ムーン・ボール。」


 カンクでのクエストと同じ魔法で、フィアが周りを明るくする。


 「ありがとう、フィア。」

「いえ、お兄様♡」


 このやり取りも、カンクと同じだった。


 「それで、これからどうするんだぞっ?」


 ガイスの言葉にしばし考え込んでから、ノイルは言った。


 「全員の体調しだいだな。休みが必要なようであれば、遠慮せず言って欲しい。しっかり休息を取って、魔王城の地下へ向かう。もちろん、今すぐ向かっても構わない。」


 少し間をおいて、ロスタが答えた。


 「僕は、少し休みたいかな。身体的には治癒魔法で何とかなるけど、精神的にも疲れたからね。」


 残る3人も、同意して頷く。


 「分かった。では、ゆっくり休んでくれ。」


 そう言うと、ノイルは剣を抜いた。

リンテが驚いて言う。


 「何するのよ!まさか、永遠にお休みとか言うじゃないでしょうね!」


 ノイルは一瞬きょとんとしたが、「ふっ」と笑いをこぼして言った。


 「俺は、そんなセンスの悪いことは言わないぞ。剣を抜いたのは、空離剣ナンバーフォーで寝床を作るためだ。何せ、この魔王城には寝具というものが無いからな。」

「あ、そうなのね…。」


 リンテは勘違いに顔を赤くする。


 「つ、疲れてるのよ。頭が働いてないの。何か悪い?」

「何も言ってないぞ。」


 噛み付くリンテを、ノイルは冷静にあしらった。


 空離剣ナンバーフォーの寝床は、快適とは言い難いが床で寝るよりはマシという程度のものだ。

それでも、疲れていた4人はすぐに眠ってしまった。

ノイルはまだ起きている。


-君はもう、ここまで来てしまったか。


 サリシアの言葉が頭に残っているのだ。。


-サリシアは、エルフについて何か知っているのだろうか。

 いや、魔王城に特殊な魔力があるとは言ったが、エルフのものかは分からないとも言っていた。

 それに、突然現れた理由も気になる。


 そんなことを考えながら、2つの小瓶を取り出した。

暗闇の中に、主の分からない金髪が光り輝く。

ふと、リリアナの顔が浮かんだ。


 ノイルとの再会に驚く顔。

危険な願いを真剣に聞き、覚悟を決めて引き受けてくれた顔。

ロスタを見て赤らめた顔。

ロスタが男と聞いて衝撃を受ける顔。


 「本当に、すまなかった。」


 ノイルはぼそりと呟いた。

そして目を閉じ、深く息を吐く。

目を開け、両手の小瓶を強く握りしめた。


-リリアナが俺たちを守ろうとしてくれたその勇気。

 絶対に無駄にはしない。


 ゼリトリフとゴイルには届かなかった勇気だが、ノイルには確かに届いていた。

ノイルは再び目を閉じる。

リリアナのこと、サリシアのことを考えながら、自らも眠りについた。



 翌朝ノイルが目覚めると、他の4人は既に起きていた。


-何だかんだで、俺が1番疲れていたのかもな。


 苦笑しながら寝床を出て、ノイルは全員に聞く。


 「おはよう。よく眠れたか?」

「はい。ぐっすりと。」


 フィアが笑顔で答えた。

4人共、顔が晴れやかになっている。

昨日は色々あって疲れただろうが、何とか回復出来たようだ。


 「さて、謎解きに向かうとしよう。」


 ノイルを先頭に、5人は部屋を出た。


 「地下への行き方は分かるの?」

「分からない。」


 ロスタの問いに、ノイルは首を横に振った。


 「とりあえずは、階段か何かあるだろうからそれを探そう。」


 ノイルの言葉に頷き、全員でわずかに陽光が射し込む魔王城を探索する。

途中途中で魔物に襲われたが、さすがは最強を自負する5人というところ。

全くの無傷で切り抜けた。

しかし、魔王城を1周しても地下への通路らしきものは見当たらない。


 「ないわね。」

「おかしいな。確かに、妙な魔力は感じるのだが。」


 ノイルは注意深く、真眼で辺りを見回した。

と、壁の1部に強い魔力が固まっているのを見つけた。

近寄ってみると、魔力は地下へと続いている。

色からして、闇属性の魔力だ。


 「あったぞ。」


 そしてノイルは剣を抜き、壁を思いっきり斬りつけた。


 「魔滅剣ナンバーワン!」


 がらがらと、壁が崩れる。

紫色の魔力が消えた。

壁の先に、地下へ続く暗闇が現れる。

階段になっているようだ。


 暗闇を覗き込み、フィアが言った。


 「これが…」


 ノイルが剣をしまって答える。


 「そうだ。魔王城の地下へ続く通路だ。この先に、リリアナが繋いでくれたエルフの謎への鍵を差し込む場所があるはずだ。」


 ノイルたちは、1つ深呼吸すると暗闇へ踏み出した。

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