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すみれ色の瞳  作者: mayan
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登校

 



「おはよう! シャルロット」

「おはよう、アリス!」


 寮のロビーで待ち合わせしていた私たちは笑顔で挨拶を交わした。昨日の帰り、寮から学校までの道が不安だと漏らしたところ、シャルロットが一緒に行こうと誘ってくれたのだ。

 初めての友人との、初めての登校、テンションが上がっていた。


「じゃぁ、行きましょうか」


 シャルロットがそう言った時、ロビーの雰囲気が変わった。


「アリス!」


 シャルロットは私をロビーの端まで引っ張った。ただ事ではない様子に、私は素直に従う。


「アリス、頭を下げて」


 耳元でそっと囁かれ、私は訳もわからず頭を下げる。


 何が起こっているのか、理解できなかったが沢山の人がロビーを移動している気配を感じる。


 コンコンという数多のヒールの音がロビーに響き渡る。


「エリザベート様、馬車は用意してありますわ」

「あら、ありがとう」

「今日も大変お綺麗ですわ、エリザベート様」

「まぁ、嬉しいわ」


 エリザベート様……あぁ! 第一皇子の婚約者の!!

 ということは、この集団はエリザベート様の取り巻き……、もはや取り巻きのレベルじゃないわね、これ。


 ぞろぞろと全員が出て行った後


「もう大丈夫」


 というシャルロットの声に姿勢を戻す。


「今のは……?」

「エリザベート様とその取り巻きの方。お会いしたら、お辞儀をしていないと目をつけられてしまうかもしれないの。私が1年生の時、何も知らずにお喋りを続けた子が、翌日には学園からいなくなっていたわ」


 ……恐ろしい。アメリアの方が何百倍も可愛く見えてくるわ。


「だから、気をつけてね、アリス」

「分かったわ、ありがとう」


 私たちは校舎に向かって歩き出したのだった。




「アラン様!! おはようございます!!」


 教室に入れば、甲高い声がする。目を向ければ、エミリー様とその取り巻きたちが彼を囲んでいた。

 彼にしては珍しく、少し困ったような顔をしている。


「アラン様! 今度一緒に観劇などいかがでしょう?」

「すまない。最近は少し忙しくて……」

「そ、そうでしたか……。私、アラン様と劇を観に行きたくて……ですが、アラン様がお忙しいなら無理ですね……」


 私のところに挨拶に来た強気なご令嬢はどこに行ったのかと突っ込みたい。うっすら目に涙を浮かべ、しょんぼりとしたエミリー様はまるで別人だ。


「……凄いわね」


 シャルロットと席についた私はその様子をぼんやりと見ていた。


「エミリー様は、アラン様がお好きなの」


 隣に座るシャルロットが呆れたような目でエミリー様を見る。


「エミリー様は昔から自分がアラン様の婚約者になるのだと周りに言ってたわ。でも、いつまで経っても婚約の発表がないのでどうしたのかと思っていたのだけれど……」


 彼が拒否したのかしら……?


「学園に入ってからはあんな風にアラン様に毎日のように突撃していますわ」


 毎日!? その気力に尊敬するわ。


「それだけ、お好きなのね……」


 これは、余程の好意がないと出来ないことだ。


「もちろんエミリー様の気持ちもあるのだけれど、家としての意向もあるかも」


 家……?


「今3大公爵家の中でどちらの派閥にも属していないのがアルテミス公爵家。だから、アルテミス公爵家を引き入れた方が勝ち、みたいな空気らしくて……」


 ……彼が婚約者を決めないのは、もしかしてこれかしら。婚約者を決めたらその婚約者の家の派閥に入らなくてはならないから。

 中立を保つためには仕方のないことかもしれないけれど。


「それでは、アルテミス公爵家が中立を保つ以上、アラン様は婚約できないと」


「そんなところでしょうね」


 何だか、アルド帝国内政が複雑だわ。


 私は教科書を取り出しながら思った。




投稿ミスがありました。

教えてくださり、ありがとうございました!

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