お茶会の招待
私の側にはフィーがいる、それだけで私の毎日は幸せだった。
父にも母にも会えなくとも、私には十分だった。
……一生この部屋に引きこもっていても苦じゃないわ。
そう思い始めた頃、その知らせはやってきた。
私が10歳の日のことだった。
「アリス様」
フィーはなんだか複雑そうな顔をしていた。
「どうしたの? フィー」
「王宮から手紙が来たようで、今度王宮にてお茶会が開かれると。そのお茶会にアリス様も招待されたようです」
「私に? 何かの間違いではないの? 」
私は社交界に出たことがない。自室に監禁されているのだから当たり前だが。
「当主様も王からの直々の招待に断れないようで、アリス様にも参加なさるよう伝えろと言われました」
そう、
「私の存在を知っているのね。引きこもっているから、社交界にはとっくのとうに忘れ去られていると思っていたのだけれど……」
私のことなど、無視してくださって結構なのに。
「どのような名目のお茶会かしら? 」
「第1王子の誕生日パーティーという名の、婚約者探しのお茶会ですね」
なるほど、それなら公爵家の私に声がかかるのも頷けるわ。これでも一応公爵家長女ですもの。
「面倒だけれど、拒否権はないんでしょう? 」
「はい」
「いつかしら? 」
「来週予定しております」
「すぐね」
「奥様が、ぎりぎりまで伝えなかったようです」
「それはまた謎ね」
「おそらく、新しくドレスを新調する時間をとらせない嫌がらせかと」
「それって嫌がらせになるのかしら? 」
「なる人もいますが、アリス様にとっては何でもありませんね。ドレスは後で一緒に選びましょう」
「ええ、楽しみだわ」
私もフィーも年齢の割に大人っぽいが、それでも華やかなものが大好きな年頃の女の子である。
一緒にドレスを選ぶ、そのイベントだけでほんの少し楽しみになってきた。
「それにしても、王子なんていたのね」
「アリス様は面白い方ですね。自国の王子を知らないとは」
「仕方ないじゃない。ずっと部屋にいるのだから」
「それもそうですね」
「第1王子って、どんな方? 」
「確か、アリス様と同い年ですね」
「あら、そうなの」
「見目麗しい方だと言われています」
「まぁ、王族ですからね」
「王子としての慈愛を持った方だとも」
「表の顔ね、きっと」
「大変優秀な方だとも」
「王子が優秀じゃなかったら、国が大変だわ」
「……王子に厳しいですね、アリス様」
フィーはクスクスと笑った。
「当たり前じゃない。次の王の優秀さに未来はかかっているのよ」
「まぁそうですけど」
「私は平和な未来のために、目立たないよう壁の花を目指すわ!」
「それは、無理があるのでは……? 」
「あら、どうして? 私は姿を見せたことのない幽霊貴族よ」
「その容姿で目立たないわけありません」
「大丈夫よ、大丈夫。目立つ行動はしないわ」
「絶対、目立ちます」
フィーの言葉は現実になる。




