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すみれ色の瞳  作者: mayan
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夏の始まり

 


 夏休みに入り、約3ヶ月ぶりに彼が学園から帰ってくるというので、私は出迎えに行った。


「元気だった? アリス」


「はい。おかげさまで」


 相変わらずキラキラとした笑顔を浮かべる彼はとっても眩しい。


「アラン様もお元気そうで何よりです」


 思わず目を逸らしたくなる衝動を抑えて、淑女の微笑みで対応する。

 困ったときの静かな微笑み、これは万能なのだ。

 私も何度これに助けられたか分からない。


「……母上の様子はどうかな?」


「それなら……」



「アラン! お帰りなさい」


 ……ご本人がいらっしゃっています。


 突然現れたキャサリン様の姿に彼は面食らう。


「……母、上……?」


 キャサリン様は私の隣に並ばれる。


「母上が、何故、ここに……」


 彼の母親を見る目は、まるで亡霊を見たときのような目だった。


「全部アリスちゃんのお陰よ。最近短い間なら歩けるようになったの」


 にっこりと微笑まれるキャサリン様はどことなく彼に似ておられて、親子なのだと改めて思う。


「……アリス」


 彼に呼ばれてキャサリン様から顔を動かす。


「はい」


「本当にありがとう!! 君には感謝してもしきれないくらいだ」


 彼は勢い良く私の手を握った。

 突然の出来事に私は頭が追いつかない。


「心から感謝する」


「い、いえ……」


 そのロイヤルブルーの瞳に真っ直ぐに見つめられて、私の心臓はドクドクと鳴っている。近距離の美形が私の胸を刺す。


 ……危険すぎるわ!!


「こらこら、アラン。アリスちゃん困っているじゃない」


「あぁ、ごめん。つい……」


 キャサリン様の助け舟によって私の手はようやく解放された。


 ダメ。無理。……心臓がもたない。






 私はその夜、夕食に招かれていた。せっかくの家族水入らずの場に私が参加するのは申し訳ないと断ったのだが、公爵家の方々にどうしてもと言われ、断れなかった。


「お招きいただき、ありがとうございます」


 部屋には既に公爵様にキャサリン様、そして彼がいた。


「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ、アリスちゃん」


「ありがとうございます」


「アリスはここ」


 私は彼の隣に座った。



 キャサリン様が回復に向かわれている話や彼の学園での話、ちゃっかり私も楽しんでいた。



「……ところで、アリスは今度スーリールに行くの?」


 メインの鶏肉を堪能していた時、彼にそう聞かれた。


「はい。ミーティア侯爵様の結婚式のために行きます」


「……アラン、アリス嬢について行きなさい。女性1人では危ない」


 ふと公爵様がそんなことを仰るので、私は慌てて否定する。


「お気持ちは嬉しいですが、アラン様にご迷惑をおかけするわけにもいかないですし、1人でも平気ですわ」


「いえ! アラン、ついて行きなさい。可愛い可愛いアリスちゃんに怪我でもあったら私がショックで死んでしまうわ」


 キャサリン様もそう仰る。

 確かに……私がいなくなるとキャサリン様の病気が治せませんね。


 でも、本当に大丈夫なん……。


「分かった。アリスに着いて行くよ」


 どうやら決まってしまったようだ。



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