噂
結局冬休みはシアラ様と一度しかお茶ができなかった。過労で倒れてしまうのでは無いかと、私は心配でたまらない。
学園はというと、最後の学期が始まってからある1つの変化があった。
……王子とアメリアは教室で堂々とイチャイチャし始めたのだ。
「今日の君もとっても綺麗だよ」
「まぁ! ありがとう!! ジオルド様もとっても素敵よ!!」
「今日のランチは王族専用席で一緒にどうだろうか?」
「良いのかしら?」
「もちろんだ」
「私とっても嬉しいわ!!」
いつのまにか敬語も抜けている。
腕まで組んで、密着しているし……。
よく恥ずかしくならないわね。不思議でたまらないわ。
それに、あんなに王子の周りに取り巻いていた令嬢が今は遠くから見つめている。
……アメリア、あなた何やったのよ。
脅迫? 圧力? 賄賂? 恐ろしいわ……。
「……アリス様」
少し改まったフィーの態度に少しだけドキッとする。
「どうしたの、フィー?」
私は取り敢えずソファに座るよう促した。
「大切なお話があります」
「聞きましょうか?」
私は、慣れてきた防音魔法を無詠唱でかける。
「実は……王子が婚約破棄をするという噂が浮上しました」
「……でも、それは10歳の時からずっと言われ続けていることじゃない?」
王子と婚約して5年。王子の婚約者となった私に嫉妬して、周りが婚約破棄だなんだと騒いでいたのだ。今更そんな噂を聞いても……。
「いえ、今回は王子が自ら婚約破棄の準備を始めています」
「あら、そう……って、そんな情報どこから……!?」
……あ。
「セラフィーナ情報網に引っかかりました」
あなたのその、セラフィーナ情報網って一体なんなのよ。フィー、あなたスパイの才能あるんじゃない?
「今は、側近たちも交えて色々計画中だそうです」
「詳しすぎてもはや噂ではないわね」
「それで……、ここからは完全に私の憶測ですが、王子は公爵を巻き込むと思われます」
「巻き込む……?」
「はい、アリス様もご存知の通り現在王子とアメリア様は恋仲となっています」
……どうしてあなたがそれを……もう追求はやめましょうか。
「王子はアメリア様を新しく婚約者にしたい。公爵も娘のアメリア様を王子妃にしたい。利害が一致しています。共闘する可能性は十分にあります」
「そうね……王子からは婚約破棄され、公爵からは縁を切られる、そんなところかしら」
「そんなところだと思います。王子の婚約者でなくなったアリス様を公爵様は屋敷に置かないかと」
「なら、私は平民になるのかしら?」
「だと思います」
フィーが心配そうに私を見つめてきた。
あぁ、フィーは私が平民として生きていけるのか心配だったのね。
「大丈夫よ、私。平民でもちゃんと生きていけるもの。だから私には気を遣わないで、あなたは自由にしていいわ」
「いえ!! 私はアリス様について行きます!」
「それは嬉しいのだけれど……無理はしなくて良いのよ」
「無理なんてしてません。私の意思でアリス様について行きますから」
フィーがいるなら心強いわ。
フィーを安心させるために強がったのだけれど、やっぱり平民として1人で生きていくのは少し怖かったのよね。
「平民になったら、仕事を探さなくてはならないわね」
「そうですね。最初は公爵家から少し持ち出せばいけますが、やはり働いたほうがいいです」
「そうね……。何の仕事をしましょうか」
「できればアリス様と一緒に働きたいです……」
「……あ! 私の水魔法とフィーの風魔法で洗濯屋できるわよ!!」
「確かに!! 魔法であっという間にできますね。……それではお掃除も仕事にできますよ。アリス様の水魔法で水拭きして、私の風魔法で乾かす。完璧です!」
「あら、ほんとね! あとは私、外国の本の翻訳もできるわ! 王妃教育も役に立つのね……」
私とフィーは2人で平民になった後のことを話した。
私は生まれて初めて、楽しい未来を想像できたのである。




