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魔法使いの証明  作者: 0℃
1章 逮捕不可能な魔法使い
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04.白石拓海の犯行

 『あたり』と書かれた遺体は、埼玉県の所沢市にある遊園地のベンチで見つかった。


 見つかった遺体は被害者のかかとの部分らしく、他と同じようにペンで文字が書かれていたのだという。しかし、その書いてあった内容が他とは異なった。


 『あたり』


 『この事件の犯人』


 『加賀崎高校2年生。白石拓海』


 そのあとには電話番号が2つ書かれていた。


 1つは加賀崎高校への電話番号。もう1つは、朝比奈が勤める警察署への電話番号だった。こちらには被害者の家への電話番号は書かれていなかったらしい。


 加賀崎高校に電話で確認したところ、白石シライシ拓海タクミという生徒は確かに在籍していた。


 遺体にあった文章を鵜呑みにすることはできないが、朝比奈と鹿上は、白石拓海から話を聞くために高校へと向かっていた。


「あの鈴井って言う人、何なんすか?」


 細い道を隣で歩く鹿上は、少し不機嫌そうに言う。


「鈴井? 一係の警部補よ。結構なやり手ね。会ったことなかったっけ?」


「ないですよ。偉そうだったな、あいつ」


「あんたがそれ言わないでよ。でも、そっか。そもそもちゃんと一緒に捜査するのも初めてだもんね。会うのは初めてか。

 でも、珍しいじゃん。どうして今日はちゃんと一緒に捜査してくれる気になったの?」


 朝比奈は少しだけ嬉しかった。さすがに毎回一人での捜査は心もとない。


 頼りない後輩とは言え、一緒にいるだけで少しは心強かった。性格は最悪ではあるが。


「別に。そろそろ印象悪いかなって思って」


 鹿上はぶっきらぼうに答えた。


「そろそろもなにも初めから印象悪いわよ。遅刻、欠勤ばかりして」


「悪いとは思ってます」


「悪いと思ってなかったら殴ってる」


 ほどなくして、2人は加賀崎高校にたどり着いた。


 加賀崎高校はそれなりの有名校だ。部活動に力を入れており、特に野球部が有名らしい。朝比奈も時折、耳にする高校だった。


 受付を済ますと、2人は応接室に通される。


 しばらくソファーに腰を掛けて待っていると、50代くらいの女性教員が部屋に入ってきた。


「2年の学年主任をしております、渋谷シブヤです。谷津君が亡くなった件については報告を受けております。白石君のことで、なにかお話があるとか」


 渋谷はしゃがれた声で言う。


「ええ。とりあえず、お座りください。今回の事件を簡単に説明させていただきます」


 渋谷が向かいのソファーに腰を掛けると、朝比奈は事件の概要と、ここに来た理由を説明した。


「遺体の一部に白石君の名前が……?」


 渋谷は大人しく話を聞いていたが、遺体に白石の名前があったことには驚きを隠せなかったようだ。眉間に深いシワを寄せる。


「まだ、埼玉県警から話を聞いただけですが、白石君の名前があったことは事実のようです。白石君は、今どこに?」


「先ほどまで授業を受けてました……でも、彼がやったなんて信じられません。真面目で大人しい子なんです」


 渋谷は口元に手を当て、動揺してる。


「まだ、彼が犯人だとは断定できません。罪をなすりつけられている可能性も否定できませんから。

 ただ、こちらとしてはなぜそこに彼の名前があったのかをお聞きしなければなりません。白石君をお呼びいただいてもよろしいですか?」


「構いませんが……」


 渋谷は、迷いながらと言った様子で応接室から出ていった。


「なんだ。もっと早く来るかと思ってたけど、遅かったね」


 白石は、すぐに来た。


 渋谷が出て行ってから10秒も経たずに扉は開き、次の瞬間には朝比奈たちの目の前に、制服姿の男はいた。


 高速移動。まるで、移動した瞬間が見えない。その能力を朝比奈たちは目の前にした。


 白石は、クラスに一人はいるような、賢くて、しかし、悪質な悪戯を好んで行うような男子だった。


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてる。


「お前……!」


 鹿上は立ち上がり、スーツの懐から銃を取り出した。朝比奈が止める。


「待って。まだ、この子が犯人だと決まったわけじゃない」


 白石が、朝比奈の言葉を否定する。


「いーや、俺が犯人だよ。死体のかかとに名前書いてあったでしょ?」


 白石は、おかしくてしょうがないといった様子で言った。


 彼の言葉の端々に、悪意が滲んでいる。

 朝比奈には、それがわかった。


「それに、銃なんて無駄だよ。そんなの余裕で避けられる」


 白石がふふん、と笑うと鹿上は舌打ちをしながら銃を下ろす。


 朝比奈はそれを見て内心安堵しながら、白石に聞いた。


「ねえ、白石君。どうしてこんなことをしたの?

 どうして人を殺して、バラバラにして、ばら撒かなくちゃいけなかったのかな?」


 白石は、クスクスと笑いながら答えた。


「気持ちいいからだよ。知らないの?

 魔法を使うと最高に気持ちいいんだ。

 きっと、どんなドラッグでもこれには敵わないよ。

 その上、人を超越した力、それが意のままに使えるんだ。最高だよ」


 愉悦とも恍惚ともつかない、不気味な笑みを白石は浮かべる。


「白石君。お願いがあるの」


 朝比奈はそう言いながら頭を下げた。


「……はあ? この俺に向かって頼み事? 正気なの?」


 白石は鼻で笑う。


 茶化す白石に対して、朝比奈は真面目に対応した。


「うん。白石君。願いだから、逮捕されてくれないかな?」


 1、2秒の沈黙の後、白石は吹き出す。


「……あはははは! 何を言い出すかと思えば、逮捕されろって!? 嫌だよ! 馬鹿じゃないの!? あはは! 逮捕できるもんならやってみなよ!」


「白石君、あなたは病気なんだよ。 

 その高速移動能力は、ただの症状。

 そのまま放っておいたら、そのうち死に至る。あなたを守りたいの。お願い」


 朝比奈は極力優しく、一語一語を丁寧に言った。

 白石は舌打ちをする。


「全く、お姉さんの言葉聞いてると、良い子過ぎて虫唾が走るよ。そんな言葉で俺が従うと思うの?

 それにさ、俺の能力は高速移動なんかじゃない。いや、『高速移動だけじゃない』って言った方が正確かな」


「なに……?」


 鹿上は怪訝そうに目を細めた。

 朝比奈は首をかしげながら聞く。


「それは、どういうこと?」


「俺は複合能力者なんだよ。高速移動だけじゃない。俺にはなんだってできるんだ」


「嘘だ。ありえない」


 鹿上が、白石の言葉を鼻で笑う。

 朝比奈も、鹿上と同じ考えではあった。

 それは、確かにありえない。


 いや、正確には今まであり得なかった。

 複合能力者の情報など、かつて耳にしたことがないのだ。


 能力は1人に対して1種類のみ。それが常識だ。

 その思考をあざ笑うかのように、白石は笑う。


「本当だよ。俺にはなんだってできるんだ。

 ……そうだな。じゃあ、誰か一人を地上で溺れさせたら、俺が複合能力者だって信じてくれる? それって、高速移動だけでは絶対にできないことだよね?」


「……何言ってるんだ! やめろ!」


 鹿上は、再び銃を白石に向ける。


「……わかんない人だな。銃なんて無駄だって言ってるのに。まあ、いいや。じゃあ、2人とも俺の教室でまた会おうよ。じゃあね、ばいばい」


 そういうと、白石はその場から消えてしまった。2階から悲鳴が聞こえたのは、そのすぐ後だった。

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