7-0 魔将軍の要求
ディメンダーXこと、宇宙ハンター部隊に出向中の科学者・久保田武は、次元艇ディーフェニックスでインベーダーを追跡中、ワープ空間からインベーダーの発生源である『ネスト』内に迷い込む。
ネストの内部はインベーダーの巣窟であると考えられていた。しかし、ネストはインベーダーの巣窟ではなく、地球とよく似た異世界だったのだ。
ネストの中で武は、インベーダーを『魔物』と呼び、それらと戦う『勇者』たちと出会った。
王都オルレイアンに到着した勇者アダム一行と武は、王宮にてバグタイプ――ベルゼブブと呼ばれる魔物の襲撃を受ける。襲撃を退け、攫われたルリアナ王女とベルク王子と奪還した武とアダムが見たのは、王都を包囲する大量の魔物だった。
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魔物に包囲され、王都では臨戦態勢がとられていた。
まだ、魔物たちに動きはない。
住民は街の中心部に避難し、城壁には兵士たちが総動員され、不測の事態に備えていた。
普段活気のある街は静まり返り、兵士たちの走る足音だけが大きく響く。
「会議の前に、先の襲撃で王宮を守ってくれた皆の活躍に感謝する。そして、我が息子ベルクと娘ルリアナを魔物から助けてくれたことに感謝する、アダム=レオトレーシー殿、タケシ=クボタ殿」
王の言葉に、皆が頭を下げる。
王都オルレイアンを守る守備隊と、アダム、タケシの報告で、ベルべブブの襲撃の隙をついて、王都が魔物によって包囲されていることが分かった。至急、対応を協議するため王を交えた御前会議が開かれることになった。参加者は主要な将軍、王都守備隊長、リサとマリー以外の勇者4人――アダム、ターニア、ビル、カルロス。そして主要戦力として、特別にエクスカリバーであるギーとディメンダーXのタケシも参加している。
「魔物の数は、およそ2万。スケルトンとゴブリンが半分ずつです。今のところ、魔物たちに動きはありません。完全に守りの態勢に入っています」
王都守備隊長が皆に現状を伝える。だが、あまりにも情報が乏しい。
「勇者たちの戦力と、その……ディメンダーXとやらで一気に殲滅はできないのか?」
「勇者は今、俺を含めて4人しか戦えません。半分の戦力では、太刀打ちは難しいでしょう。ディメンダーXは強力ですが……」
「なりません! ディメンダーXはニホンという得体のしれない謎の国家から来た、正体不明の戦士です! あくまで最終手段にとどめておくべきです!」
1人の将軍のディメンダーXを使うという主張に、ビルが強い反対を示す。
「しかしビル殿、報告によれば、魔物たちは隙間なく王都を包囲しています。数も2万と膨大です。戦力として遊ばせておけば、兵士たちの犠牲が増えます。巡回しながら状況に応じて攻撃を行う、遊撃を提案します。よろしいですか、タケシ殿」
「カルロス様、落ち着いてください。まだ敵の目的がはっきりしません。先に偵察を行って、敵の狙いを探るべきです」
カルロスの提案をやんわりと断り、タケシは偵察を提案する。
「外国人が何を言っている! すぐに戦力を集めて奴らを殲滅するべきだ!」
「現状戦力では、力押しの殲滅は無理だ。彼の言う通り先に偵察を行うべきだろう」
「外国人に言われて方針を決めるとは、情けなくないのか?」
即時殲滅と偵察で意見が割れたかと思ったら、プライドの話になってくる。話題がそれているような気がしたので、アダムが修正を試みる。
「みなさん、とりあえず戦略を話し合いましょう! 偵察と、並行して戦力の集結を――」
「で、伝令! 魔王軍の将から手紙です!」
突然、伝令の兵士が飛び込んでくる。その手に握られているのは、魔王軍の将からの手紙だという。
敵の狙いは何なのか? それが明らかになる。
「読みます……親愛なる、ラスコー王国の諸君、我々魔王軍は無益な殺生は望まない。我々の目的は2つ、畏れ多くも魔王ジゴ・ラドキ様を封印するという封印の鏡、それとこれまで多くの同胞を殺してきた勇者たちの身柄である」
敵の狙いは、アダムたちの持つ4枚の封印の鏡と、アダム達勇者自信の身柄らしい。
「続けます……この2つの目的さえ達成できれば、我々魔王軍は王都から撤退することを約束する。魔将軍……以上です」
伝令の兵士が敵の将――魔将軍からの手紙を読み上げた。全員の視線が、アダム達勇者に集まる。
「ゆ、勇者たちと、封印の鏡を渡せば退いてくれるのか? すぐに引き渡すべきだ! 新しい勇者はまた探せばいい!」
「おじけづいたか! 魔王軍が約束を守るわけがないだろう! アミアン市の悲劇を忘れたのか!?」
「徹底抗戦だ!」
御前会議は、魔王軍に対して徹底抗戦の流れになる。
「勇者は現在、4人しかいません。王都の出入り口である東西南北4つの門に、1人ずつ配置をお願いいたします。ディメンダーXは、カルロスの提案通り、遊撃を依頼したいと思います」
「アダム殿、それでは……!」
「先生、敵の数は2万です。カルロスの言う通り、犠牲者を増やすわけにはいきません。わかってください」
「……くっ!」
アダムは4人しかいない勇者の運用と、ディメンダーXの遊撃について提案する。ビルはすかさず反論するが、アダムは無理やり押し込める。
こうして、王都オルレイアン守備隊、勇者4人、ディメンダーXと魔将軍率いる魔王軍との戦いの火ぶたが切って落とされようとしていた。