7-1 北門防衛戦線
「カルロスは東門、ターニアは南門、俺は北門を守る。先生には申し訳ありませんが、敵が一番集結している西門を守っていただきたい……よろしいですか?」
「僕とカルロス君は大丈夫だけど、ビルのおっちゃんは……」
「舐めるな、ターニア。重装の勇者の名にかけて、この鉄壁の守りで西門は必ず死守する」
「先生の高い守備力だけが頼りです。よろしくお願いします」
勇者4人の守備位置について、アダムが指示を出す。敵が大量に集まる西門には、最も守備力の高いビルを当てることにした。少しでも時間を稼ぎ、王都内への侵入を防ぐと同時に、他の門の敵を退けた後に西門で挟み撃ちにするためだ。
「タケシ殿が……ディメンダーXが必要な際には、赤い発煙筒を上げてくれ。赤い煙が見えたら、タケシ殿はその門へ急行してください」
「了解しました」
タケシ――ディメンダーXは王宮で待機。発煙筒が上がり次第、そこに向かうことになっている。
「ギーは?」
「ギーは俺と一緒に魔王軍と戦ってもらう」
「りょーかい! ギーがんばる!」
「あとは……」
アダムは防衛線に当たって細かい指示を次々出していく。
「リーダー、封印の鏡はどうしますか?」
「封印の鏡は城の金庫に預けよう。カルロス、あとで持って行ってくれ」
徐々に全員の間に緊張感が漂う。
全ての指示を出し終え、アダムは全員の方に向き直る。
「今回は、ディメンダーXを呼ぶことを躊躇しないでくれ。敵の数は2万だ。ただでさえ厳しい戦いになる。今回戦うのは俺たちだけじゃない。兵士たちの命を預かっていることを忘れるな」
「ターちゃん、コマちゃん、頑張ってね!」
「ギーちゃんも、アダム兄ちゃんのことお願いね」
<ガンバル>
「Xコマンダーがギーちゃんの言葉に反応した……! こんなプログラム組んでないのに……!」
勇者たちは散開して、それぞれの持ち場に回る。王宮で待機する予定のタケシはその場に残る。
「よし、俺たちも行くか」
アダムもギーと共に王都の北門に向かおうとする。
「お兄様」
「キャサリンか?」
アダムの義理の妹・キャサリン=レオトレーシーが現れた。全身を鎧で身を包み、レオトレーシー家が保有する『炎の剣』を腰に携えている。
「キャサリン、お前も戦闘に参加するのか?」
「ええ、私は東門で。レオトレーシー家の一員として、情けない兄にだけは任せられませんもの。ブリテンで学んだ成果、存分に発揮させていただきますわ」
アミアン市のことを言っているのだろうか、アダムへの嫌味を織り交ぜつつ、キャサリンは自信を見せる。続いてキャサリンの目線はアダムの横のギーと、タケシに向けられる。
「お兄様……本当に戦場にそんな幼い少女を連れていこうとするのですか? 本当に国籍不明の外国人を参戦させるのですか?」
キャサリンは未だにギーとタケシに疑いの目を向けている。
「キャサリン……まあ、実際に見ればわかるさ。ギーはエクスカリバーで、タケシ殿は異世界から来た最強の戦士だ」
「はあ……まあよろしいですけど……お兄様、いつの間にそんなおかしな趣味に走るように……」
「違うからな! 俺の好きでエクスカリバーが幼女になったわけじゃないからな?」
「ええ……はい……わかっております……」
「キャサリン! 目を背けないでくれ!」
義理の妹に幼女を愛でる趣味に目覚めたと勘違いされたアダムは、全力でそれを否定した。
「ちぇんじえくすかりばー!」
北門にて、ギーがエクスカリバーに変わり、アダムの手に収まる。その見慣れぬ光景に、オルレイアン防衛隊の兵士たちの中から驚きの声が上がる。
「よし……誇りあるオルレイアン防衛隊の諸君、行くぞ!」
アダムはオルレイアン防衛隊の兵士たちの一団を引き連れ、北門をくぐり王都を守る壁の外へ出る。
目の前にはおよそ5千もの魔物の大群。アダム率いる防衛隊の一団は千人。数は5倍差、しかしこちらには聖剣の勇者・アダムがいる。さらにいざという時にはディメンダーXがいる。
「ふう……」
改めて魔物の大群を前にして、アダムは大きなため息をつく。
今回の戦い、アダムを含め、勇者たちには大きな責任が伴う。王都防衛隊の兵士の命、王都に住む平民・貴族たちの命、ラスコー王国の要である王と王族の命……これら多くの命を預かっている。アダムたちの行動で多くの人の命が、運命が左右される。
アミアン市での敗北が頭をよぎる。
――いや、今回は負けられない!
ここで負ければ、ラスコー王国は終わりだ。
アダムの目つきが変わる。
「我こそは聖剣の勇者・アダム=レオトレーシー! 王都を襲う魔物ども、俺たちが相手だ!」
アダムは兵士たちの先頭に立ち、エクスカリバーを構えて、魔物の大群に向かって駆けだした。




