目的
登場人物
本田佳那
主人公。平和主義者の両親に育てられた影響で、時代に合わず自身も平和主義者である。
自分の行動のせいで母親が死んでしまったことを後悔している。
本田恭介
佳那の兄。行方不明になったと聞かされていたが、再会した。
佳那の母
軍部によって殺されてしまった女性。
佳那の父
自分が働きたくないからと、自分の息子を戦場に向かわせる、佳那曰く『クソ親父』。消息不明。
平野慶太
佳那の親友。どうやら、佳那に好意を寄せているようだ。
美女
謎の人物。恭介と関わりがあるらしい。
…あれ、ここ、何処だっけ…?
身体中があったかくて、
まるで、誰かに抱きつかれてるような…
「…、
佳那ちゃん!」
あれ?佳那ちゃんなんて呼ぶ人、研究所の中には…
「キョースケ、カナは起きたカ?」
「いや、まだ寝ぼけてるらしい…」
その、男の人の声で我に帰る。
「わあっ!?!?」
「あ、起きた」
「起きたナ」
目の前に現れたのは、美女と、お兄ちゃんだった。
…で、私はお兄ちゃんに抱きつかれてるのに気付いて、慌てて離れた。
…そういえば、私はもう研究所から出て、お兄ちゃんについてきたんだった。
…思い出した。昨日の夜、お兄ちゃんについて行って…
………………………………………………
「あレ、前の子だナ。キョースケ、見つかったのカ」
「…ああ」
お兄ちゃんに連れられたのは、謎な穴だった。
そこに入ると、見たことのある美女がいた。
やっぱり、この美女が仲間だったのだ。
「ていうカ、キョースケ、この子とどういう関係…なのカ?」
照れながら、美女はお兄ちゃんに尋ねた。
「え、それは…」
「やっぱり…彼女なのカ!?」
いやいや、私のことをまず睨まないで。
「私は本田佳那といいます。そちらこそ私のお兄ちゃんとどんな関係なんですか?」
「なんだト?それはだナ…
って、兄妹だト!?」
私のことを睨んでいたその綺麗な目を、逆にキラキラと輝かせた。
…ほほう、この美女はお兄ちゃんのことが好きなのだな。
「そうです、兄妹です。
…ブラコンですけどね」
最後の一言は、この美女への些細な意地悪だった。
だけど、この美女には通じなかったようだ。
「ぶら、こん…?
何ダ、それは」
「《それはですねお嬢様、この女性が恭介様のことを愛しているということです》」
いきなり○○語を話す、執事的な人が現れた。
「《それはどういうことか?兄妹なのに禁断の愛か?》」
流石に美女も、母国語の○○語は流暢に話すようだ。
「《いいえ、『兄』として愛することです。…多分。
私は日本語は得意でありませんので、間違ってる可能性はありますが》」
執事(?)はそう言った。
「《貴方、日本語は話せないのかしら?》」
私は、執事(?)に、そう○○語で尋ねた。
横にいるお兄ちゃんを見ると、私達が話してることが全くわからないらしく、ちんぷんかんぷんだという顔をしている。
…まあ、仕方がないだろう。学校に通っていた時代、お兄ちゃんは英語とフランス語を勉強していた訳だし、私は英語と○○語を勉強していたのだ。
学校のシステム上、母国語である日本語以外にも2ヶ国語話すようになることが目標になっており、5歳から教えられるものだから、みんな3ヶ国語がペラペラなのだ。
「《貴女、やりますね。凄く上手ですね。
…確かに私は日本語はあまり話せません。お嬢様よりも下手でしょう》」
「《いえ。変な言葉のことはよく知っていらっしゃるのですね》」
「《それは、褒め言葉ですか?》」
「《事実を言ったまでです》」
横を見ると、お兄ちゃんは美女に頼んで翻訳してもらってるようだ。
…そんな話はどうでもいいんだ。
「…ごめんね、お兄ちゃん。
そんなことはどうでもいいから、ここの組織が何なのか、私に説明して」
私にいきなり話をふられたお兄ちゃんはビクッとして、「あ、ああ」と話し始めた。
「そうだよな、何も言ってなかったもんな」
こんなことから話していいものなのかは知らねーけど、と、そう呟きながら、ぽつりとお兄ちゃんは話し始めた。
「…あのな、戦争を止めたいって話は知ってるよな?」
「うん」
「それの根本の原因がな、
…“第二のマンハッタン計画”と言われてる計画だ」
…マンハッタン計画って、まさか。
「ちょっと止めテ!その話、長くなるから明日じっくり話そウ!」
途中で美女が割り込んできて、お兄ちゃんの続きの言葉は終わってしまった。
「…そうだな、明日のほうがいい。
キョースケ、寝る場所どうすル?」
「うーん、取り敢えず俺は佳那ちゃんと寝る」
「え!?私の所にじゃなくテ!?」
「は?お前何言ってんの」
茫然とする私の前で、2人は突然弾丸のように今日のことを話し始めるものだから、私はどうすることもできず、近くにいた執事(?)に話しかけた。
だって、大事なことを聞き忘れてる。
「《そういえばあなたの名前は?》」
「《…ああ、忘れてました。
私の名前はアンドデュー、お嬢様の執事です。
アンディと気軽にお呼びください》」
…いやいや、貴方、私よりも10以上は上だよね。
「《…流石にニックネームでは呼べないわ。アンドデューと呼ばせていただくわ》」
「《承知いたしました》」
あの美女の名前は何なんだろう、と不意に思った。
その時タイミングのいい美女は、私のいる場所にやって来て、「ごめんネ。まだ自己紹介してなかったネ」と割り込んできた。
「私の名前は…特に決まってないヨ。
本名は…忘れたネ」
そう言って寂しそうにしてる美女に、私は何か心を打たれた。
「…なら、良かったら私が貴女の名前、考えてもいいかしら?」
「エ?」
…私にも、理由はわからない。
でも、何となく、そうしたくなったんだ。
「私はいいけド…
今までキョースケに『お前』としか呼ばれてなかったけド、そうだネ、ちゃんと名前があったほうがいいよネ」
美女は私の顔をじっと見た。
それに応えるように、私は重々しく口を開く。
「貴女の名前にこんなのはどう?」
………………………………………………
…そうだった。あれから疲れてたからか、すぐに寝ちゃって…
何でこの美女は名前を持ってないのかとか、マンハッタン計画がもしかしたら私の思った通りなのではないかとか、
そんなことを考える暇も与えないくらいに、一瞬で夢の世界にいった。
「カナ、やっと今の状況把握したようだネ」
美女が私の顔を覗く。
「…そうね、ローラ。」
そう、この美女につけた名前は、ローラ。
頭にパッと浮かんだだけの名前だったけど、これが一番しっくりくるように感じたから。
…何より、
「…ん。いい響きだナ」
彼女が気に入ってるのが嬉しい。
「お前、俺の妹に手出すなよ」
「失礼ナ!!girlを襲う趣味はないネ!それに私の名前はローラだヨ!カナがつけてくれたんだからナ!!」
後ろから現れたお兄ちゃんとローラがまた口論を始めた。
お兄ちゃんが家族以外と関わってるのを見たことは、ここに来るまでなかったから、こんな風に接するんだなと、冷静に観察する。
「カナ!!カナからも何か言ってやってヨ!」
「お兄ちゃん大好き」
「え!?!?佳那ちゃん、お兄ちゃん嬉しいぞ!」
「冗談です」
「茶番してる暇はないヨ!!」
そんな時、アンドデューがやって来た。
「《佳那様、昨日の話の続きを致しましょう》」
…そうだった。マンハッタン計画のこと、何も聞いていなかった。
「カナ、お前は今『第3次世界大戦』中だって、知ってたカ?」
第3次世界大戦…?
そんなの、知らない。
日本が〇〇国との戦争は勿論知ってるけれど。
「…その様子だと知らないようだネ。
半年前、遂に資本主義陣営と社会主義陣営が衝突しタ」
宣戦布告した社会主義陣営の国が、すぐに資本主義陣営の国に核爆弾を落としたそうだ。
「…そんな大事なのに、私、何も知らない」
「…仕方がないヨ。この国では、インターネットも新聞も、…テレビも、全部、検閲がかかってるんだヨ」
私達が知らない間に、昔あったはずの憲法は、何の機能も果たしていないんだ。
「それで、遂に〇〇国と日本の戦争で、核爆弾が使おうかという話になっタ。
…それが、第二のマンハッタン計画だヨ」
…やっぱり、私の予想通りだ。
第二次世界大戦頃、アメリカのとある大統領がある計画を立てた。
日本に核爆弾を落とす、といった内容だった。
実際に日本のヒロシマ、ナガサキに落とされ、甚大な被害が後世にまで続いたということは、有名だ。
…まあ、今の子供達は多分知らないだろう。
その計画が、マンハッタン計画だ。
「そんなのが、私達が知らない間に?」
「そうダ。
…一番厄介なのは、日本も〇〇国も、両方で計画されてることダ」
日本、も…?
「で、でも!日本はまだ非核三原則が…」
「あんなもノ、ただの名ばかりサ。
昔も普通に破ってたらしいじゃないカ」
…確かに。
非核三原則が謳われて50年もしないうちに、密約の存在がバレて揉めたんだという話は、両親から伝え聞いている。
「カナはもう知ってるかもしれないガ、〇〇国や日本の持ってる核爆弾の強さって、どれくらいだと思ウ?」
…これに関しては安易に想像がつく。
「…一つの国のみならず、この地球上の全てのものを破壊できるレベルの…」
「そうダ」
つまり、地球上では人間はもう生きられなくなる程の放射線量だということだ。
「それを、両政府は気付いてないと思うんダ。
…今、確かに『第二のマンハッタン計画』は進んでル。これは嘘じゃなイ。
でも、その結果自滅することは配慮されてなイ。
おかしいだロ?全く罪のない人々が……カナみたいに平和を愛する人までが巻き込まれて被曝して、
全てが破壊されなくてはならないなんテ」
…全く、その通りだった。
「…でも、だからって私達の力だけじゃ、どうしようもないんじゃないの?」
ローラはニヤッと笑った。
「私が何者だと思ってるのダ?」
いや、何者ですか。
「私は人脈だって持ってるヨ。大丈夫。
私だって死にたくないからネ」
…本当に、この人は何者なんだ。
「…そう、ですか」
「カナ、今呆れたよナ。
…いいけド、当分の目的はもう言っておいたほうがいいネ」
ローラの目つきが変わった。
「私達が一番始めにするべきことは、
日本の核爆弾をどうにかして使わせないようにすることダ」
核爆弾の場所もわかってない状態でどうするのかって話かもしれないけどナ、とローラは笑ったが。
…でも、その答えは、実は私が知ってるかもしれない。
「…ローラ、核爆弾を開発するには、やっぱり人がいないところがいいよね?」
「そうだナ。失敗しても被害は最小限に抑えたいシ…」
「あと、第二のマンハッタン計画って、割と最近に考えられたの?」
「あア」
「なら、私、多分場所わかるよ」
「何だト!?どこなんダ!?」
自分で言っておきながら、怖かった。
「…それは」
本当は認めたくないんだ。
だって_____
遅れてすいません。
次回の更新は、12月4日16時です。※変更しました
これからはちゃんと決定した日に出せたらいいなと思ってます。
元旦にストックを大量に作って、完結させるよう努力します…( ̄▽ ̄)




