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香月  作者: keisei1
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決戦! クリスマスイヴ! 3

 二手に分かれた一方。Aブロックの香月達が大喜利を息巻いて始めた頃、Bブロックに振り分けられた桜は、一人ベランダに席を外した。


 「大喜利大会」に余り乗り気でない様子の桜に、ふと気付いた健が彼女を追い掛ける。だがそんな健と桜の二人を差し置いて、大喜利大会は大喜利で勢いよく進む。


 高橋から繰り出されるお題。



「サンタが大晦日に緊急再来日! その理由は!?」


「愛用のアディダスシューズを田中んちに履き忘れてた」



 夏樹の解答。次いで香月



「大晦日の除夜の鐘を突くバイトに戻って来た」



 投票。香月のポイント多し。高橋の声が響く。



「香月、一本!」


「やったぁ!」



 香月が両掌を叩いて喜ぶと、夏樹は右握り拳で床を叩いて悔しがる。



「くっほ! くっほ!」



 宴もたけなわな大喜利大会はさておき、桜はベランダの椅子に腰かけて月夜を眺めている。その彼女に話しかける男の子の声。それは桜を気遣って追い掛けてきた健の声だった。彼は訊く。



「どうしたの? 宮沢さん」


「あ、健君」



 大喜利大会の盛り上がるパーティー会場では、どこか居心地が悪そうにしていた桜の隣に健は座る。健は二人の姉がいるので女の子に話しかけるのは慣れたものらしい。桜が安心しきって口を開く。



「いや、なんかみんな元気だなって」


「そう? みんな、あんなもんだよ」



 健は桜を宥めるように笑顔で返した。桜は健に気を許したのかこう零す。



「私、大喜利なんて出来ないし、こうやって夜空を見てる方が楽しいんです」



 健はさすが女の子の取り扱いには慣れているのか、桜の言葉を否定も肯定もしない。



「そっか。夜空ね。夜空キレイだもんね」



 健がしんみり口にすると、その言葉で桜は少し元気が出たようだ。勢いよく口を開く。



「夜空キレイですよね! よかった。分かってもらえて。しばらく、一緒に見ていませんか?」



 健は桜の心持ちは今ひとつ分からなかったが、一人心細くしている女の子を、置いていくような男の子ではない。直ぐに優しく応じる。



「うん。いいよ。付き合うよ」



 健はそう言うと、室内から持ってきた毛布を桜にかける。



「これ羽織りなよ」



 桜が毛布に体を包み込むと、健ももう一枚の毛布にくるまる。桜はほっと一息ついて健に礼をする。その口振りは心を許して、安心しきっていた。



「ありがとう」



 一方その頃、「大喜利大会」はいよいよ佳境を迎え、Bブロックの勝者が決まろうとしていた。高橋がお題を出す。



「『この家庭のクリスマス何かが違う』どう違う?」



 俊哉が声高に勝利を告げる回答を投げる。



「クリスマスソングが般若心経!」



 しばらくの沈黙。ポイント集計。高橋が告げる。



「西島! 一本」


「よっしゃあ!」



 派手にガッツボーズを決める俊哉。Bブロックの勝者は俊哉。ではAブロックは。それは紛うことなき、初日の出。笑う時には福来るの元旦、香月だった。


 香月は立ち上がり、俊哉へ決意を込めて言ってのける。



「勝負よ。俊哉君」


「手加減なしだぜ。香月」



 みなが固唾を飲む中、香月と俊哉の狭間で稲光が光り、いよいよ「夜通し大喜利大会」の決勝が始まった。高橋がルール説明をする。



「決勝は『謎かけ一本勝負』だ。お題は『ジーンズ』、『寝相の悪い人』、『コーラ』の三つから選ぶこと。多数決で最も多くポイントを獲得した子の勝ちだ」



 高橋の説明を聞いて、俊哉と元旦は熱く胸を燃やし、たぎらせる。



「謎かけ一本勝負。上等だ」


「負けないわよ。俊哉君」



 闘志をみなぎらせる二人に、みなの視線が集まる。高橋のスタートの合図とともに、二人は回答を書き記していく。やがて制限時間一杯。高橋が告げる。



「タイムアーップ! それでは、両者回答発表!」



 まずは俊哉が先手を切ってみせる。



「『寝相の悪い人』と掛けまして!」


『掛けまして?』



 皆、息を飲む。俊哉は颯爽と決めてみせる。



「『関ヶ原の戦い』と解く。その心は」


『心は?』



 みなは前のめりになって、俊哉の回答に期待する。俊哉は一息溜めて解き明かす。



「どちらも『寝返り多し』でしょう!」



 ほぉーと感心してみせるオーディエンス。みな往々にして満足げだ。高橋も俊哉の回答の出来に頷いてみせる。


 さて一方、香月の方は俊哉の回答を上回れるのか。緊張がみなに走る。その緊張を切り裂くようにして、香月が右手をあげる。



「はい!」



 高橋があらめたて香月を指名すると、彼女の回答が始まる。香月がお題に選んだのは「ジーンズ」だったようだ。香月は口にする。



「『ジーンズ』と掛けまして!」



 夏樹は熱い戦いを前に拳を握りしめる。香月は息をスーッと一息飲む。



「『江戸幕府開府』と解く。その心は!」


『その心は?』



 みなの緊張が張り詰め、ピークに達する。そして次の瞬間、香月が俊哉に留めを差す一撃を加える。



「『EDWIN(江戸ウィン)!』」


『おおーー!!』



 どよめくオーディエンス。これでは香月に分がありか。俊哉も若干うなだれている。いよいよ執り行われる集計。結果は果たして。集計を終えた高橋が右手をサッと香月に差し伸ばして、告げる。



「香月、一本!」



 瞬間、怒涛のように盛り上がるオーディエンス。香月も右の拳を突き上げて喜ぶ。



「やったぁ!! ありがとう! みんな」



 膝をガックリとついて、俊哉は敗北を認めるしかない。彼は口惜しげに零す。



「んぬぬ。残念。まさかここで『江戸ウィン』が出て来るとは」



 そうして夜を更けゆき、香月達の「大喜利大会」クリスマスパーティーは終わっていくのだった。


 ちなみに桜と健はいつの間にか、ベランダでぐっすりと眠っていた。それを見た夏樹が、次いで美穂が口にする。



「あら、まぁ」


「いいわ。そっとしておきましょ」


「そうね」



 EDWIN。履きこなすこと自体が一つのステータスになるほどのジーンズメーカーの老舗。著名人でもEDWINを愛用する者は多い。ちなみに名前の由来が「江戸」が「勝つ」、「EDWIN」だとは俗説の一つのようである。

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