決戦! クリスマスイヴ! 1
EDWIN。デニム素材を主にした日本のジーンズブランド。1950年代まではアメリカから中古ジーンズを輸入しているに過ぎなかったが、1960年代に入り、日本で初めてジーンズを製造、販売するブランドとなる。
ジーンズ好きにとってはEDWINのジーンズを履きこなすのは、一つのステータスとなるほどの、ジーンズブランドの老舗である。
俊哉は今日もお気に入りのEDWINジーンズを履きこなし、街へと出掛ける準備を整える。真奈美が俊哉に呼びかける声が響く。
「無駄遣いしちゃダメだよ。何事も予算内で収める」
「分かってるよ。母ちゃん」
そうして彼はクリスマスに備えた買い物へ出掛けていく。
一方クリスマスイヴを控えた香月達も街へ買い物に出掛けていた。お目当てはクリスマスパーティーに使うパーティーグッズだ。
イヴの夜、香月達は桜の家でクリスマスパーティーを開くことになっている。香月はグッズを片手に、商品を一つ一つ吟味していく。
「髭メガネは王道ね。それとクラッカー、クラッカー」
夏樹が猫耳カチューシャを手にして香月に訊く。
「おーい。香月―。どうかな? この猫耳とか私に似合うかな」
香月が答えようとするのを遮り、美穂が横槍を入れる。
「夏樹に猫耳カチューシャ? 冗談は程々にしてよね」
「言うじゃない」
夏樹は固まった表情を見せて顎をあげる。パーティーの主催者にあたる桜はクリスマスツリー選びに夢中だ。クリスタル製のクリスマスツリーを手に取る。
「わー、このツリーもキラキラしてて綺麗。どれにしようかな」
朱美もグッズを淡々と、一つ手にしては、陳列棚に戻し、一つ手にしては戻しと、グッズ選びを楽しんでいる。
香月が中腰になって商品探しをしていると、同じく中腰で動いていた男性と軽く頭がぶつかってしまった。
『あっ、すみません』
彼らは二人は同時に謝った。だがお互いの顔を見て気がついた。香月は口を開ける。
「俊哉君」
「香月」
ぶつかった相手の男性は俊哉だった。彼はバクチクの束をポンポンと掌の上で弾ませて、香月に尋ねる。
「何? 香月達もクリスマスのグッズ選び?」
「うん、そう。桜の家でパーティーやるの。俊哉君も?」
香月がそう訊き返すと、俊哉は少し自慢げに口にする。
「パーティーっちゃあ、パーティーだけどな」
「だけど?」
香月が重ねて尋ねると、俊哉と香月の二人に気づいた夏樹が、手を振って二人に歩み寄ってくる。
「おー、西島ー。お前もパーティーグッズ買いに来たのかー。結構結構」
夏樹のあけすけさに俊哉は少し眉をひそめる。
「『お前』って。まぁそうだよ」
「ねぇ、俊哉君。『だけど』って?」
一瞬、興をそがれた俊哉に香月がもう一度訊き直す。
「あぁー。俺達はパーティーでもただのパーティーじゃないんだ」
「って言うと?」
「何々? どうかしたの?」
香月が真意を確かめて、夏樹も興味を示す。俊哉は二人に関心を持たれて、得意げに答える。
「俺達は男子総勢五人が集まって、『夜通し大喜利大会』をやるんだ。健の家でな」
『大喜利大会!』
香月と夏樹は声を合わせて一興を見い出す。夏樹が同調する。
「それ、面白そうね。ただのパーティーじゃつまらないもんね。途中でダレることもあるし」
香月も頷く。
「うん。何かあった方が楽しいかも」
香月は拳を握り締めて熱くなる。
「『大喜利』。燃える」
二人の反応を見て俊哉が、バクチクを一度宙に放り投げて二人に勧める。
「良かったら香月達も来る? 参加する? 多い方が楽しいしさ」
「やるっ! 絶対参加!」
夏樹は即答だ。香月も答える。
「私も!」
すると何やら賑わいでいる三人のもとへ美穂、朱美、桜がやってくる。美穂が三人のアイデアを聞いて右眉をぴくつかせる。
「『夜通し大喜利大会』? だめよ。それ。中学生の男女が夜一緒に過ごしてたら何言われるか分かんないし」
朱美も同じ意見のようだ。
「私もそう思う」
桜も静かに頷いている。
すると三人の反応を見た俊哉は一つの案を出してきた。それはグレーゾーンギリギリの荒業だった。
「じゃあこういうのはどうかな? 高橋先生に参加してもらうっていうのは」
『高橋先生』
香月と夏樹が声を揃えた。
「保護者代わりの担任が一緒にいれば何も言われないだろ? あとジャッジもしてもらえば盛り上がるかも」
『いいね! それ』
香月と夏樹は乗り気で口調まで揃った。
「じゃあ明日早速高橋先生に頼んでみるか」
「そうしましょ」
夏樹はやる気満々だ。やや心配がちな美穂が尋ねる。
「ダメ出しされたらどうするの?」
「その時は男だけでやるさ」
俊哉のシンプルな解答に美穂はこう返すしかない。
「あら、そう」




