二十五 僕とゆき先輩と丹代さん。。
「あれー? もう寝るんですか? ならわたしも寝ます!」
ちょうど浴室から戻ってきた下着姿の丹代さんを引き連れて、僕が目覚めた部屋へ戻った。
内側から厳重に鍵をかけ、先輩は押し入れから布団を引っ張り出す。
僕と丹代さんも手伝って、床にふたつ布団を広げた。
「蓮はあたしのベッドを使ってくれよ。きみを硬い床で寝かせるワケにはいかないから」
「え? だ、だめですよ。僕も下で寝ます」
「玖楽くん。誰と一緒に寝る?」
「え?」
「だって、お布団ふたつしかないから。必然的に誰かと一緒に寝ることになるでしょう?」
た、確かに。
頷いてしまった僕は、下着姿の丹代さんとネグリジェに着替えたゆき先輩を交互に見た。
「……蓮の好きな方を選ぶといいよ。あたしはどちらでも構わない」
「だって、玖楽くん。わたしのところに来る? いっぱい甘やかしてあげちゃうよ?」
「……っ」
ど、どうする……?
正直、僕はどちらとも一緒に寝たくない。
「ねえ、玖楽くん? どうするの?」
「え、えと……」
「蓮……」
「……っ」
僕は、足りない頭を必死に働かせた。
そして数秒後、天啓が降りてきた。
「このベッドの布団、下におろせば……三人で、寝れますよね……?」
「チッ……」
「………」
「え? もしかして、その反応……気付いてました?」
「しっかたないなぁ。玖楽くんの意気地なし」
「そういう男なのは、知ってた」
視線で非難される僕。
若干へこみながら、僕はベッドから布団を引き剥がした。
僕を真ん中にして、川の字に寝る。
右がゆき先輩で、左が丹代さん。
真っ暗の中で寝るのは嫌だと言ったら、先輩が橙色のランプを点けてくれた。
「ねえ……手、繋いでくれないかな。玖楽くん」
「手……?」
「うん」
僕の方を向きながら布団に包まる丹代さんが、手を差し出してきた。
「握ってくれないと犯すよ」
「………」
冗談なのか本音なのか……それとも眠たいから機嫌が悪いのか。
丹代さんらしからぬ言動が恐ろしかったので、僕は布団の外に手を出した。
「うれしい……やっぱり、わたしたちってそういうことだよね?」
どういうことなんだろう。
僕は頭が悪いから、わからない。
「ずっと心配してた。不安だったの。後悔もしてた。どうしてあの時、行かせちゃったんだろうって」
「……丹代さん」
「これからは、ずっと一緒だよ。死んでも離さない」
ぎゅっと手を握り締められて、少し痛かったけれど。
丹代さんがうれしそうに瞼を閉じたから、僕は何も言わなかった。
「……先輩?」
ふと右側に視線を向けると、ゆき先輩が瞼を閉じながら手を伸ばしていた。
その手を握って、僕も目を閉じる。
三人で、手を繋ぎながら眠るなんて新鮮だ。
……思えば。
こうして、何事もなく眠るのは、いつぶりだろうか。
「……ん、ぅ……んんっ」
「………」
左側から、声を押し殺した嬌声が聞こえてくる。
僕は聞こえなかったことにして、眠気が訪れるのを待った。




