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公爵令嬢は全てを失い黒薔薇の騎士として生きる  作者: 桜井正宗


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上級騎士の戦い

 ハルバードを手にし、構えてみる。

 ……うん、良い感じ。


「……な、なんだかサマになっていますね」


 少し顔を引き()らせるリリーは、距離を取って腰に携えている剣を鞘から抜いた。あれはイクス様がさっき仰っていた武器のひとつ『レイピア』ね。素人目から見ても、しなやかな構えをしていた。


 これ、ちょっとヤバイかも。



「ちょっと待て、リリー。せめて、ハルバードの扱い方くらいローズに教えていいだろ」

「……それでもそうですね。さすがに一撃で倒してしまっても面白くありませんから」



 そのままでも戦えそうな気はしていたけど、どうせなら基本は押さえておきたいと思った。少しの間だけハルバードの使い方をレクチャーしてもらい、わたしは構えや立ち回り方を学んだ。



「――まあ、後はローズの好きなように動くと良いさ。多分、君は型にとらわれないフリースタイルが合っていると思うからね」

「分かりました。ありがとうございます」



 丁寧に教えてもらったおかげで自信がついた。これなら勝てるかも。



「ようやく終わったようですね、ローズ様。では、一対一の勝負に参りますよ」

「ええ、こちらも負けるつもりはありません」



 わたしはハルバードを構えた。

 向こうも姿勢を低くして、レイピアを構えた。イクス様に教えてもらった通り、彼女は『スピード』重視。武器を弾いてくるはずだから、避けろとおっしゃった。ならば、その通りに動く。



「……はじめ!」



 イクス様の掛け声により、リリーが動き出す。物凄い足の速さで向かって来る。なんて速度なの……もう一瞬で目の前に。でも、わたしはイクス様を信じる。だから、左に回避。



「……なッ!! 避けられた!」



 目を見開き、驚くリリー。わたしは彼女のレイピアを上手く(かわ)し、そのままハルバードを力だけで思い切り振り上げた。


「これで……」

「甘いですよ、ローズ様」



 さすが上級騎士と豪語するだけあった。リリーは素早く後退し、姿勢を立て直した。しかも、そのまま地面を蹴り上げて――わたしに砂を被せた。



「あぁッ……め、目潰しだなんてそんな卑怯な!」

「卑怯? 戦いに卑怯も何もないのですよ。これでローズ、貴女は終わり!!」



 視界を奪われ敗北濃厚。――でも、それでもまだわたしに余裕はあった。なぜだろう、暗闇の方が冷静でいられた。

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