復讐か正義か
ヒッグスの仲間を排除完了。
そのままフォートレス家へ戻った。
玄関の前にはイクス様が待ってくれていた。彼はわたしの血のべったり付着したドレスを見ても無反応だった。
「何があったのか聞かないよ、ローズ。無事で良かった……心配した」
「わたしが恐ろしくないのですか」
「君が悪を打ち滅ぼす為に正義の鉄槌を下したのだと信じているよ。僕は、ローズ、君の味方だ」
真っすぐな瞳でわたしを見据え、静かに「おいで」と手を握ってくださった。……どうして。どうしてこんな血に塗れたわたしを許してくれるの。
「わたしは人を殺したんですよ」
「この世には法で裁けない極悪人もいる。少なくともヒッグスやその関係者は犯罪の限りを尽くしている。しかし、証拠が掴めないでいるんだ……。あったとしても揉み消される現状だ。そのせいで帝国の騎士団は動かない。ならば仮面を被り、法律を無視してでも犯罪者を断罪するしかない」
「でも……」
「この帝国に被害者は多くいるって事さ。だから助かった人も多くいるという事は忘れないでくれ。……すまない、つまり君が復讐と思うか、正義と思うかの問題だったんだけどね。今の話は心の隅に留めておいてくれ」
……わたしは自分の為と思っていたけれど、でも、イクス様のおっしゃる事も分かる。わたしだけが被害者ではない。ヒッグスに騙され、人生をめちゃくちゃにされた人はたくさんいるんだ。
「はい。今は自分を見つめ直し、今後どう動くべきか考えたいと思います」
「理解して貰えて嬉しいよ。それじゃあ、部屋に戻ろうか。そのままはマズイだろう」
イクス様は手を引っ張って部屋まで連れて行ってくれた。こんなわたしを軽蔑するわけでもなく、罵るわけでもなく……見捨てず、向き合ってくれている。もしかしたら、イクス様には、なにか考えがあるのかも。
先ほど“帝国の騎士団は動かない”と重い口調で残念そうにしていた。更に“法律を無視してでも犯罪者を断罪するしかない”とも明言されていた。つまり、イクス様は帝国に失望しているのかも。
パラディンである彼は直接、手が出せない。だからわたしを拾って――?
……理由はなんでもいい。
彼はわたしに剣の道を教えてくれた。それだけは確かなのだから。わたしにはイクス様が必要だし、支え合っていきたい。




