強力な後ろ盾
それ以上、ネモフィラは語らなかった。聞いても無駄だと理解し、わたしは席に着いた。目の前には豪勢な食事。そういえば随分と食べていなかった。
「遠慮なく召し上がってくれ」
「ありがとうございます、イクス様」
あまりにお腹が減っていたわたしは黙々と食事を進めた。
――食後、食堂を出るとネモフィラに呼び止められた。相変わらず仮面をつけ、素顔は見えない。
「ローズ、貴女がもし復讐を考えているのなら……教えてあげてもいいわ」
「何をですか」
「ヒッグスの居場所を――いえ、彼の仲間の拠点ね」
「え……知っているんですか」
「私は“ある方”の依頼でヒッグスの動向をずっと探っていた。けれど、今回の大量殺人事件が起きたから様子を見ていたの。でも、貴女がフォートレス家にやって来た。これも運命なのかしらね」
ネモフィラは何を知っているの。どうしてそんなにわたしを気に留めてくれるのか分からなかった。でも、ヒッグスに繋がる情報を知っているなら、わたしはそれを知りたい。
「教えてください。その仲間の居場所を」
「ひとつだけ約束して」
「……分かりました。なんでしょう」
「ヒッグスを必ず殺すとね」
「え……」
「さっきの決闘を見ていたの。あの上級騎士であるリリーを見事に倒した。貴女、底知れぬ力を持っているのね。ローズならあの男を倒せるかもしれない。だから賭けてみようと思うの」
「ネモフィラさんにも事情がありそうですね。分かりました、どんな理由があるか知りませんが、ヒッグスを殺すという目的は一致しています。情報をこれからも提供してくれるのなら、約束します」
静かに頷き、わたしも承諾した。これで今後は、ネモフィラが強力な後ろ盾となった。意外な協力者ではあるけれど、イクス様の兄妹だから信用はそれだけで十分。




