↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界犯罪分析官  作者: 星野彼方
PR
29/32

Act 4-8:ハレルヤ

「名前は、ハレルヤ」


 馬車に乗りこんできたQが、横で資料を読み上げた。


「いま、首都の居住地区にある家は見てきたが、もぬけのカラだった」

「次の行動を起こしているのかも」


 最悪の事態を想定する。


「だとしたら、急いで彼を止めないと」

「どこへ行くっていうんだ?」

「首都にある家は、ただの居住空間です。彼の心があるのは、そこではない」


 ぼくは考えをめぐらせた。


「殺害地点の隠れ家は、べつにあるはずです。さすがに、生きたまま連れ去った被害者を一度首都に運び入れて、また遺棄のタイミングで運び出す、というのは、あまりに危険度が高すぎます。彼、別荘のようなものは持っていませんか?」

「資料には見あたらないな」

「シヅヤの家もちがったのだ。ほかにどこかあるかな?」


 向かいに座ったピュグマが、腕を組んだ。


「どこか空き家を見つけて、そこを使ってるとか?」

「しっくりきませんね……。もっと個人的に安心できる場所だと、ぼくは思います。彼にとっての殺人は、ある種の儀式に似た領域に入っています」

「儀式……」


 ぼくは、まだ未解決の事柄について、思いをめぐらせた。


 たとえば、死後につけられたと思われる、被害者の顔面への、大量の刺し傷。

 たとえば、彼を事件の再現へと駆りたてる、強迫観念めいたなにか。

 それらを考察しながら、同時に、ハレルヤの居場所の可能性も検討していく。


「彼の生まれ育った実家はどうです?」

「調べたんだが」


 Qは資料に目を落とした。


「もうないよ。全焼したんだ。彼の両親もろとも。そのとき、彼は学園のキャンプに出かけていて、家を留守にしていた。まわりの人によると、親の死に目にあえなかったと、嘆いていたそうだよ。遺体を見ることすら、彼はできなかったんだ」

「親の死に目……」


 ふと、ぼくは手にのせていたアゴをはなし、顔を上げた。


「その首都の家は、ハレルヤ自身が借りていた家ですか? つまり……奥さんは結婚して、ハレルヤの家にやってきた?」

「ああ、そうだ」


 Qはうなずき。


「──そうか、ちょっと待て」


 猛スピードで、資料を読みかえしはじめた。


「あったぞ!」


 Qは声を上げた。

 彼女は速読の技術をもつのだ。


「ハレルヤの妻、リリイの実家だ。場所は──やっぱりな、遺体が埋められていたすぐ近くだ。彼女の両親は、父親が他界し、母親は首都の養護施設にあずけられている」

「ということは、いまはだれも、その家に住んでいない?」

「そういうことだ」


 Qは立ち上がり、御者に行先を告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。