Act 2-6:殺戮者の署名
「無事なのか! 無事ならイエス! そうでないならノーだ!」
「無事です、無事ですって」
「イエスかノーで答えろ!」
「そこはべつに、こだわらなくてもいいでしょう!」
「私を愛しているか!?」
「はいはい、愛してます愛してます」
「ほら! な? イエスかノーで答えないのは、はぐらかしたり、テキトーにあしらおうとしている証拠だ! だからイエスかノーで答えろって言ってんだバカヤロー!」
ピュグマの杖についたマギクスジェムの向こうで、Qががなりたてていた。
状況を報告するやいなや、こういう状態になってしまったのだ。
モクとピュグマのおかげで、ケガ一つしなかったということを納得させるのに、かなりの時間を要した。
「そっちは? Q。どうなっています?」
「空飛ぶ鳥のバケモノが襲ってきて、弾丸を何発か浪費しちまったが、問題ない」
「あれは無害な鳥なのに」
Qの背後で、こちらに聞こえるようにつぶやくナズナの声が聞こえた。
「あんなのは鳥じゃない。私らの世界じゃバケモノと呼ぶんだ」
Qがナズナに言いかえしている。
「鳥はあんな声で鳴かないし、火を吐いたりしないんだ」
「Qー? 報告をおねがいしますよ」
「恒一なんか、でっかい鳥に喰われちまえ」
ごまかすように悪態をつくQの報告によると、アンサブBがシヅヤという男であるらしいと特定するところまで捜査は進展していたが、その男がどこにもおらず、現在捜索中であるとのことだった。
通信を切ると、ぼくは、次にするべきことを考えた。
あの家で見つけた念写がマリアンのものであることは、すでに確認した。
そして、髪の色も髪型も、あの念写のままであったことも。
つまり彼女は、犯人の手で髪を切られ、染められたことになる。
どうしてそんなことを?
おそらく、理想の被害者とするためだろう。
人形化か? 愛玩するため? 興奮するため? コレクター? むかしに関係があった女性の代わり?
知人女性の身代わり。
妻か、母か、想い人か。
それがいちばん、しっくりくる。
「客をさがしましょう」
ぼくは、ピュグマとモクに言った。
「アリステアとマリアンの両方からペペを買っていた人間──それも、常連です。そのなかに、犯人がいる可能性は、状況からしても高い。ペペを買おうなんていう、はじめての客に、気を許して背中を向けることはないと思いますから」
「きっと、たくさんいるのだ」
「短い金髪の女性が身のまわりにいないかを、しぼりこむ基準にします」
「そもそも、客なんて、どうやってさがすのだ?」
ピュグマは困ったように言った。
「あんな花を買っているなんて公言する人間はいないのだ」
「この世界では、ペペの所持や使用は罪なんですよね? 逮捕されることは?」
「あるのだ。衛兵が、見つければ逮捕するのだ」
「逮捕されたことのある人間を当たりましょう。なにか知っているかもしれませんし」




