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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#14 緊急指令! デスアダーを殲滅せよ!
73/84

~ファイル73 デスアダーをぶっ倒せ!!~ 

「「「「「 ウオオオオオオオオッ! 」」」」」

「どけぇーっ! 邪魔なんだよ! てえぇああぁーーーーーーっ!」


   ビュンッ  ドガガッ  バキャアッ!  バシイッ  ドキャアッ!

   ブウンッ  ガシッ  ベキャアッ!  ドゴオッ  バカアッ!


「な、なんだこの女! つ、つえぇ!!」

「邪魔だよ! あたしの前に立つな! このろくでなし共がぁーっ! こんのやろぉーっ!」

「く、くそがーっ! くらえ! メ、メガトンパンチ!」

「うるさーいっ! このやろぉ! どいてろーっ!」


   バシイッ!  ドゴシャアァッ!


 小紅は、次々と現れる雑兵と地の利を活かして戦い、駆け抜けながらバタバタと薙ぎ倒してゆく。

 毒島のいるところまではまだまだ距離がある。だが、ここまでで既に二十人近く倒し、五十メートルほど進んでいた。


「「「「「 オラアアァーーーッ! 」」」」」

「・・・・・・ったく! ・・・・・・いったい、何人集まってんのよ! 邪魔だってのーっ!」


   バシイッ  ドガアッ  バチイッ  ベキィッ

   ドガガガガガッ  バチィ ドガアッ


「・・・・・・ブ、ブスジマさんっ!」

「おやおや・・・・・・。何やら、遠くが騒がしいですねェ? お客さんですかァ!?」

「お、女が一人・・・・・・。つ、つえぇっす! ・・・・・・あれは、普通じゃねえっす!」


 黒いマスクをした雑兵が、毒島の前に汗を垂らして走ってきた。


「ほっほっほ・・・・・・。来ましたか・・・・・・。さァて・・・・・・ここまで辿り着けますかねェ?」

「ブスジマさん。何とかしてくださいよ! もう、どんどん仲間が倒されてますし、これではオレたちも・・・・・・。はやく助けて下さい!」

「アナタ、このボクに指図できる立場ですかァ? そんな臆病者は廃棄処分です。消えなさい」


   ・・・・・・ビシュイッ  ドンッ!   どさり


 毒島は、雑兵に向かって親指で小石を弾いた。それはまるで、ピストルの弾丸のよう。

 その小石で眉間を打ち抜かれ、雑兵は血を吹いてその場に倒れる。


「逃げ帰ってくるような者や、怯えて言い訳をするような者は、戦力として必要ありません」

「(こ、小石一つで、あんなに大きな身体の人を! ・・・・・・お、恐ろしい人だ!)」


 優太は、毒島の足下で横たわりながら、震え上がっている。

 小紅はその間にも雑兵たちとの大乱闘を続け、薙ぎ倒しながら、どんどん近づいていた。



     * * * * *



「ねぇ、安藤ちゃん! なんで進まないのーっ! すすめー! いけーっ!」


 みかんの車は、謎の渋滞によって、交差点のかなり手前で足止めされている。


「わからない。・・・・・・くっ、工事か事故か、何だ? 急いでるのにっ」


 その時、後部座席で華蓮は、外を見て何かを発見したように目を見開いた。


「みかんチャン! 見て、あれ! この車なら、きっと通れる!」


 華蓮が指差した先には、舗装されていない里道が田んぼを横切って、歩道からまっすぐ延びている。

 その遙か先には、交差点を左折して延びている、大矢地区へ繋がる道路が伸びているのが見える。


「行きたい方向は、確かにあっちだ! だが、田んぼを突っ切るようだ」

「だいじだよ! 行けるって! てか、行ってー!!」


 苺はみかんに発破をかけるように、じたばたしながら叫ぶ。


「わかった! ・・・・・・よ、よし。行くぞ! 田んぼに落ちたらゴメンな!」

「「 ぜったい落とさないでね! いけーっ! 」」


 みかんは急ハンドルを切り、その里道へ一気に突っ込んでいった。

 華蓮と苺は、揺れる車内でもしっかりと自身のバランスを保って乗っている。

 霜柱が溶けた後でぬかるみ、石や木片も落ちている里道を走り、みかんの車はドロドロに汚れていく。

 

「やった! 行ける行ける!」

「すごいわ。わたくしの車じゃ、こんな運転できないわ!」


 苺が華蓮と喜ぶ。しかし、みかんは必死な顔で汗を額から流しつつ、車幅ギリギリの道を突き進む。


「・・・・・・洗車したばかりなのに。洗い直しだな! まってろ早乙女! 常盤くん!」


   ボロロロロロロロォー  ガコンガコン  ボルンボルルンー


 泥の固まりを飛ばしながら、渋滞を回避して、みかんの車は大矢地区へ向け走っていった。



     * * * * *



「なっ・・・・・・なんということじゃ! こ、これは・・・・・・」


 源五郎は、小紅の自転車が置いてある横に軽トラを止め、近隣の惨状を目の当たりにした。


「・・・・・・むごい。いま、救急車と警察を呼んでやるべな!」


 近くにあった電話ボックスで、源五郎は救急車を呼び、一一〇番をして警察にも通報した。


   ・・・・・・ォォォォッ   ・・・・・・ぇぇぇーっ ・・・・・・ぉぉぉーっ


「ん! ・・・・・・声が! 歳取ると、耳が弱くてだめだんべ・・・・・・」


 遠くから風に乗って聞こえてくる、音か声かもわからぬものに耳を澄ます源五郎。


「む! あ、あっちか! ・・・・・・むぅ。・・・・・・こ、これまた、むごいことを!」


 土産物屋や寺に倒れている人を、源五郎は介抱するように一人ずつ確認していった。

 しかし、そのほとんどがもう息をしていなかった。住民以外に、デスアダーの雑兵も多数、瀕死の状態で倒れている。


「小紅のばかたれめ! ひとりでこんなところに乗り込むなど、無謀じゃ!」


 源五郎は、雪駄の鼻緒をぐっと足の指で握り込み、駆け出そうとした。


「い・・・・・・いたーっ! 先生ーっ! 待って! はー・・・・・・疲れたーっ」

「早乙女師範ーっ! はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」


 すると、源五郎の後方から、汗をかいて息を切らせた水穂と澪が追いかけてきた。


「ぬっ!? なっ、なんじゃお前たち! まさか、あのあと追ってきたのか!?」

「だってぇ・・・・・・小紅センパイや先生だけじゃ、無理だよぉー!!」

「ここは宇河宮市なので柏沼署は管轄外だと思いますが、わたし、一応柏沼署に通報を入れておきました! ・・・・・・しかし・・・・・・とんでもないことになってますね!」


 澪は周囲を見回し、眉をひそめて手で口元を押さえた。


「ひ、ひぃーっ! 血を流して、し、死んじゃってる? うひぃぃーーーっ!」


 水穂は両手で頬を押し、まるで有名な西洋絵画のような顔で、この世の終わりのような声で叫んでいる。


「きっと、デスアダーの連中に、店や寺は襲われたのじゃろう。無念だったろうにのぅ・・・・・・」

「せ、先生? この、泡吹いて倒れてる連中は? これも死んでるー!?」

「そこかしこに倒れてるのは、おそらく小紅が倒したと思われる男たちだわい。死んじゃおらんが、瀕死じゃの」

「こ、小紅サンが。ここまでやるなんて。・・・・・・ん!」


 澪は、片方の耳に手を当て、そっと目を瞑った。


「はっ! 早乙女師範! 小紅サンです。向こうから、小紅サンの声が!」

「むぅ、やはり! ・・・・・・水穂! 澪! ・・・・・・わしは、こんな危険なことに、お前たち弟子を巻き込みたくはない。よいか? お前たちはここで、帰るんじゃ! 危険だべ!」


 源五郎は、水穂と澪に、厳しい口調で帰るように促した。

 しかし、源五郎はすぐに、目の前にいる弟子の目を見てはっとした。二人の目には、既に「帰らない」という強い意志が燃え上がっていたのだ。


「イヤです。・・・・・・早乙女先生、私たちさ、武道をやってるのに暴力に対して退くの!? ここでの敵前逃亡は私、イヤですっ!」

「わたしもです。覚悟は出来てます! だって、師範が仕込んでくれた護身の空手がわたしたちにはありますから! 小紅サンと優太サンを、連れて帰りましょう!」


 二人は拳をぐっと握り、源五郎へ差し向けた。


「まったく・・・・・・わしの側には、おてんば娘しかおらんのか。・・・・・・いいかっ? まず、自分の命が最優先じゃ! 何があっても、生きて帰る。身を守るんじゃぞ!」

「「 はいっ! 」」


 源五郎を真ん中に、右に水穂、左に澪が挟むように陣取り、一気に採石場跡へ向かって三人は走っていった。



     * * * * *



《 県警本部より各局! 現在、宇河宮西署管内および柏沼警察署管内に於いて、強盗及び凶器準備集合、複数発生。近くに死傷者がいる模様。場所は、柏沼市の大矢街道から、宇河宮市の大矢観音公園。被疑者は、百名を超えるとの情報あり。以上、県警本部 》


 柏沼署の刑事課のスピーカーが鳴ると、がたりと音を立てて刑事たちが一斉に動き出した。


「に、二斗刑事!」

「やはり、集団で一斉に動きおったか! 百名以上を束ねて動かすには、誰か力のある者がいるはずだ! 確実に毒島仁英の可能性が高い! 宇河宮西署と合同で確保に向かうぞ!」

「宇河宮西署からも応援要請の連絡が入りました。機動隊も出動したそうです!」

「我々もすぐ出動だ! いくぞっ!」

「「「「「 はっ! 」」」」」


 二斗刑事は、部下の若手刑事を引き連れて、パトカー数台で現場に急行。


「二斗刑事。毒島の拠点と思われる宇河宮の店の件ですが、本部からの情報によると、その地下の古井戸から、多数の他殺体が発見されたそうです」

「なんだと! 古井戸から!?」

「身元はまだわかっておりませんが、デスアダーの傘下にいた者である可能性が高いと。県警の科捜研でいま、殺害の痕跡や毒物等の検証を行っているとのことです」

「そうか。なんということだ。それがもし、デスアダーの者だったとしたら、恐ろしいことを平気でするやつだ、毒島は!」


 拳をぎゅっと握って怒りを見せた二斗刑事を乗せ、パトカーは現場へと向かっていった。



     * * * * *



   ザザザリザザッ!  ギュギュンッ  キイッ


「大矢観音公園はこの先だ! 採石場跡もその隣・・・・・・んっ!?」

「軽トラに、自転車が三台・・・・・・」

「行ってみよう!」


 みかんの車が、源五郎の軽トラの近くに停まった。

 三人は急いで車から降り、停まっている自転車を確認。


「あ! これ、小紅のママチャリ! やっぱり、この先にいるんだ!」

「こっちは、稲葉水穂に篠原澪? 誰かしら? この名前、聞いたことあるような・・・・・・」

「その二人は、柏沼高校空手道部の二年。早乙女の後輩だよ! その二人もいるのか!」

「あ! 小紅チャンと五行節の一人を倒したっていう、後輩の子ね! ・・・・・・ってことは、もう、あっちにみんな行ってるんだ! 急ぎましょう!」


 華蓮、苺、みかんは、全力で走っていく。

 その途中に転がって倒れている男たちを見ながら、三人は自然と戦闘モードの顔つきになっていった。


「ひ、ひどい! 完全に、集団で一気に襲撃された感じだ! なんだ、これは・・・・・・」

「お寺の人も、お店の人も・・・・・・。これが、あいつらのやり口。何年経っても、まったく変わっていない! ウチのおじいちゃんもお父さんも、こんな風にやられたんだ・・・・・・」

「わたくしの母も、ね! ・・・・・・ひどすぎる! 罪も無い人を、集団で襲って殺して!」


 みかんは、その周囲の惨状に、ひどく顔をしかめている。


「(と、とんでもないな、これは! これが、実戦の惨さ・・・・・・なのか!?)」

「急ぎましょう! これは、この先でもっと危険なことになっているかも!」

「そーだね! これは大変だよ!!」


   たたたたたっ・・・・・・  すたたたたたっ・・・・・・  だだだだだだっ・・・・・・


 苺と華蓮は、眉間にぎゅっと力を込め、夜叉のような目で走ってゆく。

 みかんは、不安を抱えつつも、二人の後を追って走っていった。



     * * * * *



「オラァ! 待ってたぜ、一億五千万! 死ねぇーっ・・・・・・」


   ヒュランッ  ドグシャアアッ!  ドンガラガッシャアンッ!


「ひぶぅっ? ・・・・・・ぐわぁーっ・・・・・・」

「邪魔すんなっつってんの! ・・・・・・あんたら、そこをどきなよ! あたしを通せーっ!」


 源五郎たち三人の百メートル先、苺たち三人の二百メートル先まで、小紅は進んでいた。

 そこには、ドラム缶や木樽を積み上げ、まるで関所のようなバリケードを組んだ男女が七人、金属バットを装備し、品のない笑い声をあげて待ち構えている。


「ヒャーハハハ! 来た来た! 金だ、金だ!! 一億五千万だ!!!」

「ペッ! あんな女一人、倒せねぇわけねーだろ!?」


 その中の、ヘルメットを被った作業着姿の男が、小紅に向かってツバを吐いた。小紅は横にぱっと跳び、それを避ける。


「・・・・・・汚い野郎だなっ! そこをどけ! それともこのまま、あたしにブチのめされて警察に突き出されたい!?」

「ヒャハハ! ・・・・・・ったくよぉ。ムショから出たばっかなのに、まーた捕まってたまっかよバーカ! てめーも、デスアダー式ノック練習、やってみっかぁ? ヒャハハハ!」

「なに・・・・・・! デスアダー式ノック練習だって!? あたしの親を殺したのは、お前かぁーっ!?」

「はあぁ? なーに言ってんだてめー。知るかよ、そんな・・・・・・」


 小紅は、二つの結い髪をぶわっと振り、相手に向かって一気に猛突進。

 そのままドラム缶と樽に前蹴りを放ち、バリケードを崩す。その上に乗っていた男女の雑兵を全て転げ落とした。


「ぐぉ・・・・・・。んだよ、クソ女がー・・・・・・」


 ヘルメットの男が気づくと、その目の前では既に五人が倒され、沈黙して小紅の前へ転がっていた。


「お前のやり口・・・・・・。お前だったのか・・・・・・。三年前、あたしの両親をーっ!」

「あ? 知らねーって言ってんだろ。いつ誰をぶん殴ったかも、ぶっ殺したかも、大して覚えちゃ・・・・・・」


   ドガアァッ!  ビキイッ!  ベキャッ!  ドガァッ!  ベキイッ!


 小紅は、その男に、嵐のような蹴りを浴びせかけた。

 涙を流しながら、二十発ほど蹴り込み、完全に男は沈黙。

 死んではいないようだが、意識は確実になくなっているようだ。


「はぁー・・・・・・ふうぅーっ・・・・・・ふうぅーっ!」

「(い、今だ! こいつ、バカじゃね? ・・・・・・後ろからなら!)」


   ・・・・・・シュバアッ  ドッゴォォアアァッ!  ドガッシャァンッ!


 後ろでバットを振りかぶる女を、小紅は猛烈な後ろ蹴りでドラム缶の山へ吹っ飛ばした。


「・・・・・・全ては毒島仁英の仕業! 元凶は、毒島仁英だ! 絶対に許せるもんかーっ! 優太、いま助けに行くよ!!」


 小紅は紅色の髪留めを輝かせ、上着の袖をまくり上げて、再び駆けてゆく。

 その上着のポケットからは、折りたたまれた薄緑色のハンカチが少し、顔を出していた。


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