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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#14 緊急指令! デスアダーを殲滅せよ!
71/84

~ファイル71 毒島仁英の恐怖~ 

「あわわわ・・・・・・。あ、あんたら、こんなことして・・・・・・。ぎゃあっ!」


   ドガシャンッ  パリィン  ガシャアン  バリィン


 宇河宮市の西郊外にある、大矢(おおや)地区。

 ここは昔からの採石場があり、地下は深くまで続くダンジョンのような地形。現在は、地下採石場跡として、その跡地が残されているのみ。

 巨大な観音像のある公園には、土産物屋やお寺などもあるが、現在それらは一気にデスアダーによって襲撃されていた。


「・・・・・・うぐ・・・・・・。け、警察に電話を・・・・・・。ぎゃあっ!」

「ヒャハハ! そうはさせねぇー。明日はクリスマスだぜぇ? このまま十字架背負って、死んじまいな! うらあっ! てめー自身が、十字架の墓になれやぁ!」

「ぎゃははは。寺の坊主のクセに、十字架背負ってやがるぜ! オラァ、オラァ!」


 土産物屋の店主や、寺の住職は、デスアダーの集団によって、凄まじい暴行を受けている。

 店や寺務所をめちゃくちゃにされ、金属バットで頭を殴られた後に、カッターナイフやサバイバルナイフで背中を十字に切り裂かれた。

 意識を保っていた老人の店主も、四人の男女にボコボコにされ、息絶えてしまった。


   ヴォンヴォヴォヴォヴォ  ヴォンヴォンヴォヴォヴォ


 けたたましい爆音をまき散らしながら、改造されたバイクも集まってきた。

 地下採石場跡へ続く広場前には、凶器を持って武装したギャングやチーマーが集まり、近くにある自動販売機や建設会社の事務所を、手当たり次第に破壊している。


   ガシャアンッ  ガシャアンッ  バリィン  ガシャアンッ


 そこに、一台の車が入ってきた。その車のドアが開き、少しずつ足音が響いてくる。


   ・・・・・・トッ  トッ  トッ  トッ


 すると、集団は一斉にぴたりと動きを止め、その足音の主のもとへ集まってゆく。

 十人、二十人、もっと集まり五十人、六十人、七十人。最終的には、数え切れないほどに。


「・・・・・・おやおや。・・・・・・派手に暴れていますねェ、みなさん・・・・・・。ほっほっほっほ!」


 デスアダー総帥、毒島仁英と、その後ろから側近の針実伝が現れた。

 

 毒島の姿は、他の誰とも違うオーラを放っている。

 赤髪の坊主頭。

 両耳には星型の銀色ピアスを六つ。

 額にはナイフ型の刺青と渦巻き型の刺青。

 上下白いスーツに紫色のシャツに、エナメルの靴に銀色のネクタイ。

 両手指には宝石を幾種類もあしらった指輪。

 襟元からは、ふさふさとした真っ赤な羽根飾りが揺らぐ。

 その目は不気味なほどに澄んで真っ青に光り、妖しい雰囲気を放っている。

 これが、デスアダーを統べる恐怖の象徴、毒島仁英の姿だ。


「ほっほっほ。・・・・・・さぁ、行きましょうかねェ」


 集団は、毒島のその一言でざあっと真ん中を開け、その中央を毒島と針実が一歩ずつ歩いてゆく。


「「「「「 ブ、ブスジマさんだ! ブスジマさん! ブスジマさん! 」」」」」

「「「「「 今日も、働きますぜ! 金ください、ブスジマさん! 」」」」」

「「「「「 うおおおおおお! ブスジマさん、万歳! ブスジマさん、万歳! 」」」」」


 集団は、まるで一斉に何かのスイッチが入ったかのように、毒島に向かって歓喜の声を上げ始めた。

 その声が、周囲の岩屋に響き、反響をして轟音となる。


   オオオオオオオオオオゥ  ウオオオオオオオオオオオン


 デスアダーの集団は、様々な凶器を持って武装している。

 鉄パイプ、金属バット、釘バット、金槌、木刀、模造刀、ヌンチャク、スタンガン、ハンマー投げのハンマー、メリケンサック、鎌、棍棒、剣先スコップ、鍬、つるはし、角材などなど。

 ありとあらゆるもので武装し、血に飢えたような目をした狂気の集団が、一斉に集った。


「・・・・・・んんぅ? ちょっと、そこのアナタ。アナタですよ・・・・・・」


 毒島は、その集団の中の一人を指差し、呼び寄せた。


「は、はい! オレっすか! なんでしょう?」


 金髪で鼻にピアスをしたその男は、手に、モデルガンのようなものを持っている。


「それは・・・・・・なんですか?」


 不気味で妖艶な笑みを見せ、毒島が男に問いかける。後ろでは、針実が険しい表情で見つめている。


「これっすか! 改造したんすよ。ほら、見てください。撃てるんすよ!」


 そして男は、モデルガンのトリガーを引いた。すると、銃口から、乾いた音と火薬の匂いを出して、銀の玉が飛んでいった。

 毒島は、自慢げに笑うその男の顎を下から掴んだ。


「ふげげ・・・・・・。ぶ、ぶすじまさん?」

「ひとつ問います。・・・・・・なぜそんなものを持っているのです?」

「ふげ・・・・・・。で、でひゅから、使えるように改造を・・・・・・」

「どうしてそんなものを使うのです?」

「ふげげげ。・・・・・・ブスジマさんの、ためにー・・・・・・」

「頼んでませんよ? ボクは、アナタがそんなもの持っていることが、不愉快です」

「ふげげげ・・・・・・。ブ、ブスジ・・・・・・」

「アナタは、デスアダー失格です。・・・・・・ボクの嫌いなものを使うなんてねェ!」


   ギュワアァッ  ギュウンッ  ベキョメシャアアァッ!  グショオッ!


 顎を掴んで、毒島はそのまま男を持ち上げ、石の地面に頭から叩きつけた。

 男は、顔面ごと砕かれ、首の骨と顎の骨をメシャメシャに粉砕され、即死。

 その場に無惨な亡骸がどさりと転がった。

 その一部始終を見ていた集団は、一気に静まりかえった。


「「「「「 う・・・・・・。ブ、ブスジマさん、万歳! 万歳!! 万歳!!! 」」」」」


 だが、すぐにまた、集団は毒島に対して崇拝する声を上げ始める。それは恐ろしいまでに異常な空気だ。


「ほっほっほ。・・・・・・ボクに忠誠を誓う方々。今日は素晴らしいボーナスを与えましょう。・・・・・・さァ、エサをここに、連れてきなさい?」

「承知しました」


 毒島が、右手の指をパチンと鳴らす。針実が、横を向いて、さっと手を挙げ、合図を送る。

 すると、ロープで身体と両手首を巻かれた優太が、ブンに担ぎ上げられて運ばれてきた。


「や、やめて! ・・・・・・ぼ、ぼくは、どうなっちゃうの! 何が目的なんですか!」


 優太は、涙目でブンや針実に叫ぶが、答えない。毒島の赤紫色の唇が、ゆっくりと妖しく開く。


「みなさん。ここに、標的の小娘を呼び出します。・・・・・・みなさんはその小娘を、ボクの目の前で、徹底的に潰し、息の根を止めなさい。できた者には、一億五千万円の報償を与えるとしましょう!」


 毒島のその言葉に、集団の目の色が変わった。


「「「「「 一億五千万円っ!!!!! 」」」」」

「・・・・・・ほっほっほっ! ボクは嘘は言いませんよ? さぁ・・・・・・血祭りを始めましょうか!」

「「「「「 ウオオオオオオオオオッ! ブスジマさん!  ブスジマさん! 」」」」」

「「「「「 ブスジマさん、万歳! ブスジマさん! ブスジマさん! 」」」」」

「(こ、これが小紅ちゃんを狙ってる親玉! 怖い! 怖すぎる! 恐ろしすぎるよ!)」


 優太は青ざめて、恐怖のプレッシャーで声が全く出せなかった。

 周囲を取り囲むようになっている集団はずっと、毒島を讃える声を出し続けていた。



     * * * * *



「じゃあ、じーちゃん! あたし、今日は優太と、夕飯も食べて帰ってくるから!」

「気をつけてな。優太くんに、迷惑掛けるんじゃないぞぃ? わしゃー、このあと、自治会の班長会議があるからのー」

「わかった! じゃ、行ってくるね! じーちゃんも、酒飲みはほどほどにね!」

「そんな、わかっとるわぃ。今日は、ほとんど飲まんー」


 小紅は源五郎に手を振り、大急ぎで玄関の戸を開け、飛び出していった。


   ・・・・・・たたたっ!  どんっ!


「うわぁっ、と! すみません・・・・・・って、水穂じゃん? ご、ごめんね!」

「びっくりしたぁ! 小紅センパイ、どーしたの? 優太センパイと今日は、クリスマスイブのデートじゃなかったのぉ?」

「えーと。まぁ、そのー・・・・・・」

「あぁ。わかったぁ! 寝坊したんですねぇ? そーでしょー。ひゃー、やらかしたぁ!」

「うっさいなぁ! だから急いでるの! ごめんね、ぶつかって!」

「別に、だいじですよー。私も今日は、独り寂しく、イブ過ごしまーす。ミオも、都合付かないって言うんだもんー。ちぇっ!」

「しゃーない! 水穂も、そのうちいい彼氏できるってば! じゃ、あたし、急ぐから!」


 小紅は、水穂にさっとタッチして、全力疾走で駅に向かった。

 水穂は大きく手を振り、小紅を後ろから笑顔で見送った。



     * * * * *



「ダメだ・・・・・・。いったい、奴はどこに!」


 二斗刑事は、柏沼警察署の机上でたくさんの資料と地図を見ながら、頭を悩ませている。

 隣の席の若い刑事が、コーヒーを飲みながら、声をかけてきた。


「デスアダーですか?」

「ああ」

「例の、馬元誠司が絡んでいた宇河宮の店は、ダメでした?」

「ああ。あの店の地下には、確かに毒島がいた痕跡はあったんだがな・・・・・・」

「逃げられましたか」

「いや、逃げたと言うより、奴は、いくつか拠点を持っているようだ」

「では、なかなか潜伏先も見つけにくいですね」

「ああ。参ったよ。だが、奴が派手に動き出せば、必ずや辿り着くはずだ」

「盛者必衰です。必ずどこかで、デスアダーも基盤が崩れますよ」

「そうだな。必ず毒島を逮捕し、奴らを解散させねばな」


 二斗刑事は、再び、資料と地図を隅々まで見つめた。


「(悪い予感がする。五行節という実働部隊を早乙女さんらが潰したことで、奴は今、穏やかではないはずだ! 急がねば、何かまた、大変なことが起きるかもしれん!)」


 刑事課は、今日もあちこち電話が鳴り、どの職員も忙しそうだった。



     * * * * *



「ヒャハハハァ! ブスジマさん! こいつ、殺すんすかぁ?」


 デスアダー集団の雑兵の一人が、舌をチロチロと動かし、縛り上げられた優太を威嚇している。


「(こ、怖いよ。・・・・・・ど、どうやっても、逃げられなさそうだし。どうしよう!)」

「ヒャハハ! おい、弱えの! おめー、サンドバッグは好きか? ヒャハハハ」


 まるで獲物に群がるハイエナのように、雑兵たちは優太を取り囲み、じろじろと見続ける。


「・・・・・・おやめなさい・・・・・・」


 毒島が、ぼそっと囁く。雑兵たちはびくっとして、その場から離れる。


「常盤優太さん・・・・・・。自己紹介が遅れましたねェ? ボクは、このデスアダーという組織の総帥、毒島仁英と申します。・・・・・・アナタには、あの目障りな早乙女小紅をここへ呼び出してもらうための、餌になっていただきますよ」


 にやりと笑い、毒島は座り込み、転がった優太の目をじっと見続ける。


「(こ、この人・・・・・・。目がまるで、蛇のように・・・・・・怖い目だ!)」


 ぶるぶると震える優太。毒島は、優太のポケットから、携帯電話を取りだした。


「針実さん・・・・・・」

「はっ!」

「この携帯電話で、早乙女小紅へ繋ぎなさい・・・・・・」

「はっ・・・・・・。・・・・・・つ、使い方が、よくわかりません・・・・・・。慣れていないもので」

「・・・・・・なんですって! ブンさん!」

「モ、申シ訳ゴザイマセン! 自分モ、コノ機種ハ・・・・・・。ヨクワカランナ・・・・・・」

「情け無いですねェ! 仕方ありません・・・・・・。常盤優太さん、アナタ自身で早乙女小紅へ電話を繋ぎなさい。ただし、警察にかけたりしたら、この場でアナタを殺しますよ?」


 ブンは、優太の手首に巻かれているロープを、一時的に解いた。

 優太は青ざめた顔で、携帯の画面をじっと見つめている。


「(ど、どうしよう・・・・・・。警察にはかけられないの? でも、小紅ちゃん一人を呼び出すなんて、できないし、誰かにできるだけ知らせないと・・・・・・)」

「さァ・・・・・・。呼び出しなさい・・・・・・」


 ゆったりとした妖しい声で、毒島は瞬きを一切せずに優太をじっと見据える。


「うぅ・・・・・・。ト、トイレで、かけます・・・・・・」

「だめですねぇ。さァ・・・・・・。この場で、ですよぉ・・・・・・。さァ!」

「(ううっ! ・・・・・・そ、そうだ! もう、これしか・・・・・・)」


   ・・・・・・ピッ  ポポッ  ピッ


 優太は携帯電話を操作し、発信ボタンを押して毒島へ手渡した。


   ぷるるー  ぷるるー  ぷるるー  ぷるるー・・・・・・


 鋭く尖った犬歯を見せ、にやりと笑う毒島。その耳元で、呼び出し音はずっと鳴り続けていた。



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