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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#12 華蓮、怒りの鉄拳! 時を戻す中華の味!
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~ファイル65 圧倒的戦力差~ 

「う、うわぁ! こんな太い柱に、刃物が刺さってる・・・・・・。怖いなぁ」


 優太は震え上がった。パーコーが投げた刃物は、そのまま三本ともケヤキ製のあずまやに深く突き刺さっているのだ。


「ゆ、優太! だいじーっ? 危ないから、隠れてて!」

「う、うん! ぼくは何ともないよ! ・・・・・・小紅ちゃん、警察呼ぼうかーっ?」

「いい! 警察が来ても、こいつは捕り押さえられないと思う! あたしたちで倒してから、通報して確保してもらおう!」

「わ、わかった! ぼく、ここに隠れてるね!」


 優太はあずまやの中に再び隠れる。


「ヒョホホホ! ワタシの投げる金票(チンピャオ)、よく避けたネ! いい目してるヨ!」


 さらにパーコーは、金票をすらりと出し、次々と投げてくる。


   シュバッ  シュカカカカァッ!  シュカカカカッ!  ガガガガッ!


 華蓮と苺は、横に転がるようにして回避。

 金票がその後から、高速で地面に突き刺さっていく。小紅はゴミ箱の蓋を楯にして、真っ正面から防いだ。


「以前の、イカ覆面たちとの経験が活きるね! あたしの実戦経験も、伊達じゃないわ!」

「そうね。あの時の手裏剣や矢には手こずったけど、攻略法さえわかれば、ね!」

「あいつの飛び道具、カーブはしてこないもんね! 華蓮、小紅、一気に狙おう!」


 小紅は腫れた左目をさすりながら、にやっと笑った。


「五行節がやられるのも、わかるアル! ・・・・・・普通の人間ならネ、この三節棍と金票で、あの世行きネ! ・・・・・・ヒョホホ! 三千万円のシゴト、納得アル!」

「こら、パーコー麺! デスアダーなんかに技と心を売りやがってさっ! 普通にラーメン屋を地道にやる気はなかったの?」


 雪を乗せた風を受け、小紅がパーコーに叫ぶ。華蓮と苺も、腰を落として構える。


「・・・・・・イロイロ、ワタシもあったネ。迫害、差別。そう簡単に、世の中、うまくいかないのヨ! 金がなきゃ、生きられないアル! 裏社会で稼ぐのも、表社会で稼ぐのも、ワタシの持つ技術でやるは、同じネ! ・・・・・・さぁ、この手で、まとめて葬るヨ!」

「こんな悪事に手を染めたら、人生台無しじゃないか! ろくでなしめ!」

「ロクデナシ? 早乙女小紅、それ、アナタの考えネ! ワタシは、コレが生きる道!」


 黒縁の丸眼鏡を光らせ、パーコーが一気に踏み込む。小紅たちも、真っ向から迎え撃つ。


「てえぇああぁーーーーーーっ!」


   バシイッ!  カァンッ!  カシン!  カシン!  カシン!  バキンッ


 ゴミ箱の蓋と三節根が衝突。その小紅の横から、華蓮と苺が三節根を掴む。


「ハァイイイーッ!」

「はいやぁーっ!」

「ヒョホホ! そうきたカ!」


   グイッ!  ブンッ  バババババッ!  フワァッ・・・・・・  フアンッ


 パーコーは、まるで体操選手のように、分解させた三節根の真ん中を掴み、前方宙返りで一回転。

 小紅たちの背中側へ、足音をほとんどさせずに、ふわりと着地。


「ホォワタァーッ! チョォアァーーーッ!」


   バキャアッ!  バキャアッ!  バキャアッ!


 竜巻のようなパーコーの回転蹴り。三人は一気に背中を蹴り飛ばされてしまった。


「い、いったぁ・・・・・・。まるで木の葉みたいな身軽さ! しかも、速い!」

「いたた・・・・・・。小紅チャン、大丈夫? 苺チャンは?」

「ウ、ウチも、なんとか、だいじ・・・・・・。す、すごく速い蹴りだね・・・・・・」

「(あ、あのラーメン屋。・・・・・・動きにムダがないわい。小紅たちの動きも、遙かに並のレベルを超えているはずだべ? そ、それを一蹴とは・・・・・・)」


 小紅たちを一発の蹴りで吹っ飛ばしたその動きに、源五郎もうなる。


「三節棍、奪われたアルか・・・・・・。まぁ、いいでショ!」

「小紅! 間合いをもっと切れ! そいつはまだ、何か持ってんべよ!」


 源五郎が喝を入れるように叫んだ。そこに向けて、パーコーは金票を一つ投げつける。

 首をひねって、源五郎はそれを紙一重で躱す。


「ぬぅぅ・・・・・・」

「老人、いい洞察力ヨ・・・・・・。次は、コイツを使うのヨ? さぁ、どうするネ?」


 パーコーは袖から、い紐のようなものを出し、解いた。

 その先端には、四方が尖って重そうな金具が縛りつけられている。


「な、なによ、あれ? ・・・・・・華蓮、パーコー麺が持ってるやつ、なにあれ!」

「先端に、重そうな金具。しかも紐・・・・・・。やばそうだぁ! 絶対、振り回しそう!」


 小紅と苺は、パーコーの出した武器から目を離さず、集中している。


「あれは! ・・・・・・流星錘だわ! そんなものまで!」

「りゅうせいすい? なによそれ! あたしの知らないものが次々出てくるなー・・・・・・」

「ヒョホホ! 流石ネ、三島華蓮! ハナコから聞いてたカ? いかにも、流星錘(リュゥシンチュィ)ネ!」


 髭をぴくんと動かし、細い目をさらに細めて笑うパーコー。

 そして右手に紐をかけ、流星錘をゆっくりと振り子のように動かし、空中に「8の字」を描き始めた。


「! ・・・・・・なんか、あの動きと形・・・・・・。ま、またこのパターン?」


 小紅は流星錘の動きを見て、何かを思い出した。苺と華蓮は、パーコーからさらに離れる。


「さぁ、お次は、コレ! ・・・・・・骨ごと砕いてあげマショ! 覚悟するアル!」


   ビュビュウンッ!  ビュンバババッ!  ドガシャアッ!  バゴォォォッ!

   ビュンババババ!  ガシャアンッ!  ドゴォンッ!  バリイィンッ!


 高速で振り回される(おもり)が、公園内の街灯、看板、遊具などを次々と打ち据え、破壊してゆく。

 その錘は源五郎の所にも軽々と届く。四人は必死にその攻撃を避け、身を守っている。



     * * * * *



「おまわりさん、あそこです! 公園から、叫び声や音が!」

 

 近隣の住民らしき若い男性が、自転車に乗ったパトロール中の警察官を二人呼んでいた。


「どれ、行ってみよう。通報、ありがとうございます」


 その男性と警官二人は、路地から、公園に向かって進んできた。


   ・・・・・・ピュウンッ  ザクウッ!  ザクウッ!  ザクウッ!


「「 うぐっ! 」」


   ・・・・・・ビュンババババッ!  ドゴアッ!  ゴシャアッ!   どたっ


 凄まじいスピードで住民と警官二人の首に金票が刺さり、さらに流星錘の先端が頭を強く叩いた。

 その三人は異常なほど痙攣し、糸が切れた人形のように、どさりと倒れてしまった。


「なっ、なんということじゃ! あの投げ物、何か塗ったんだな! おかしかんべ!」

「ヒョホホホ! 百歩蛇(ひゃっぽだ)という蛇の毒と、トリカブトから抽出した毒を、混ぜて塗ったネ! その三人、まず、助からないだろうネ! 水を差す邪魔者は、南無阿弥陀仏ヨ!」

「なっ、なんてことをーっ! パーコー麺! お前は絶対に、ここで倒して警察に突き出さなきゃあたしの気が済まない! そして、デスアダーの本部を教えてもらうからっ!」


 小紅はパーコーを睨み、指を差して叫んだ。


「・・・・・・早乙女小紅。アナタにワタシは倒せないネ? 技量の差は、このとおりヨ!」

「やってみなきゃわかんないでしょ!」

「やるまでもないアル!」


   ビュビュウンッ!  ビュビュウンッ!  ビュンババババッ!


 再び、流星錘が動く。それはまるでパーコーの周りに霧でもかかったかのように、紐の動きが残像となって、姿が霞むほどの速さ。


「(ヨーヨー野郎の時は、水穂が麻袋で押さえてくれたけど・・・・・・。この公園には、そんなもの無さそうだし・・・・・・。あの錘をはじき返せるような、フライパンとかもないし)」


   ビュババババッ!  ドガシャアン  バリィン  ドゴォンッ


 まるで踊らされているかのように、小紅、苺、華蓮、源五郎の四人は、流星錘を避けながら動き回る。

 小紅はジッテやジョーと戦ったときを思い返していたが、あの時に使ったような道具はこの公園にはない。


   タンッ  フワアッ  トスッ   


 パーコーは流星錘を片手で操りながら、風に乗るかのように軽くふわりと跳んだ。

 そして、公園内にある植木の杭の上に、鶴が音もなく舞い降りるかのように片足で立つ。


「ヒョホホホォ!」


   ビュンババババッ!  バアンッ!  ガアンッ!  ドゴアッ!

   シュバッ  シュカカカカッ!  シュカカカカァッ!


 パーコーは右手で流星錘を振り回し、左手で金票を投げてきた。

 小紅たちは、さらに自分たちの動きを早めてそれらの攻撃を躱していた。


   ・・・・・・ビュビュウンッ!  バカァァンッ!


「あ!」


 高速の流星錘が小紅を襲う。間一髪で受け止めたゴミ箱の蓋は、粉々に砕かれてしまった。

 咄嗟に、小紅は地面に刺さっていた金票を抜き、パーコーに投げつけた。


「このやろぉーっ!」


   ブンッ!  ・・・・・・ピタアッ


「・・・・・・物を投げるセンスも、なかなかアルね!」


 余裕の笑みを見せ、二本の指でそれを挟んで止めたパーコー。小紅は、歪んだ奥歯をぎりりと鳴らし、舌打ちをする。


「(・・・・・・小紅チャン・・・・・・)」

「(! 華蓮! ・・・・・・なに?)」


 そっと、小紅に寄り、小声で華蓮が囁く。


「(流星錘は、わたくしと苺チャンで止められる!)」

「(! ふ、ふたりで?)」

「(そう。・・・・・・あの武器は、先端しか破壊力は無い。操っている紐に殺傷力はないの)」

「(・・・・・・それはそうだけど、二人でどうやって?)」


 苺も、小紅のそばに寄る。


「(地面に当てるように誘って、華蓮が一気に突っ込むの。そこに打ち込まれた流星錘を、戻される前にウチが先端を踏みつける! すぐに華蓮は紐を引っ張って、あいつを引き寄せるってわけ!)」

「(流星錘も、ぶんどっちゃうってことか! ・・・・・・でも、食らったら一発でやられるよ。気をつけてよね? ・・・・・・で、封じたらすぐ、あたしが畳みかければいいんでしょ?)」

「「 ((そういうこと!)) 」」


 三人は笑って頷き、パーコーへ凜とした視線を投げつける。


「よし! まずわたくしが、いくね! 頼んだよ、小紅チャンと苺チャン!」

「「 よっしゃーっ! 」」


 竹棒を拾い、華蓮はパーコーの立つ杭に向かって猛ダッシュ。


「・・・・・・三島華蓮、その目は、何なのヨ? 何か、索を思いついたアルね?」


   ギュンッ  ビュンババババッ!  ドゴォォッ!


 華蓮を狙った流星錘で、砂場から凄まじい砂ぼこりが舞った。


「いまだ! はあぃやーっ!」


 苺がすぐ、砂場から引き戻される前に、流星錘の先端を踏みつけ、強く両手で押さえる。


「よし! ナイス、苺チャン! ハアァイーーーッ!」


   グイッ  グイイッ!


 砂場とパーコーの右手を繋ぐ紐を、華蓮が思い切り引っ張る。

 たまらず、パーコーは右手の紐を放して杭の上から後方宙返りをし、砂ぼこりで霞む中、ふわりと地面に降り立つ。

 風がぱあっと周囲の砂ぼこりを散らすと、パーコーの前には小紅が両拳を握って、腰を落として踏み込んでいた。


「なに! ・・・・・・流れるような連携ネ! ・・・・・・目の前に、既に、いるとはネ!」

「あたしたちの作戦勝ちだ、ろくでなしーっ! てえぇああぁーーーーーーっ!」


 小紅の気合い一閃。その後方から、苺と華蓮が目を輝かせて、「いけーっ」と叫んだ。


   ・・・・・・バシイッ!  バババババチイッ!  バチイイィィンッ!


「あ!」


   ・・・・・・ドガアッ   ・・・・・・どしゃっ


「う・・・・・・。うっ!」


 爆竹のような凄まじい打撃音が、公園内に響いた。

 歓喜の表情から一転。苺と華蓮の表情は、狐につままれたような顔に変わっていた。

 打撃音のあとに大きく吹っ飛ばされたのは、小紅だったのだ。

 パーコーは、右の拳を突き出して、平然と立っている。


「な、なんで! なぜ小紅チャンが! 突きを打ち込んだんじゃなかったの?」


 華蓮が慌てて、小紅を抱き起こした。


「・・・・・・けはっ! げほっ!」

「こ、小紅っ!」


 苺も小紅の背中をさする。源五郎も急いで駆け寄り、小紅の腕を引き、頭をさする。


「・・・・・・あ、あたしは、左右の突きを、打とうとしたけど。けほっ・・・・・・」


 胸と腹を押さえる小紅。まぶたをふるふると震わせ、霞んだ目で、ゆっくり立ち上がる。


「なかなか考えたアルね? でも、早乙女小紅、速さガ、足りないヨ?」

「・・・・・・かはっ! ・・・・・・けほけほ・・・・・・。ごめん。あたしより遙かに、あいつ、速い!」


 小紅は、左の胸と脇腹をさすりながら、ぐっと左の拳を握って、構える。


「アナタたちのスピードも、なかなかネ? だが、ワタシの翻子(ほんし)(けん)の前には、それも鈍くてよろしくないアルよ?」

「ほ、翻子拳じゃと!」


 源五郎の目がかっと開き、ぬぬうと唸った。


「ワタシ、中国にいた時は、擂台賽(ラィタィサイ)と呼ばれる武術大会、総なめにしたネ! ワタシはネ、北斗七星の如く、七つの武術、身に付けてるネ。そのうちの一つヨ、翻子拳は?」


 パーコーは、人差し指をメトロノームのように動かし、甲高い声で笑っている。


「翻子拳は、双拳の蜜なること雨の如し、脆快なること爆竹の如し、と謳われる拳法アル! 他に、少林拳、八極拳、()(けん)(けい)()(けん)蟷螂拳(とうろうけん)、白鶴拳の六つ。ワタシに、隙はナイ!」


 華蓮は驚いた。自分の知らない武術が、さらに四つ。それの全貌はまだ見えていない。

 パーコーの持つ技量の前に、四人はただ苦戦を強いられるばかり。

 東京の空には、パーコーの不敵な笑い声が広く響いていたのだった。

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