~ファイル57 ヨーヨー術の脅威!~
ワアアアアアアアアアアア ドタンバタン バシバシ ズシャアッ
「「「「「 ひゃははっはぁ! オラオラァ! 」」」」」
「うわあっ! ぐあっ!」
「「「「「 オラアァーッ! 」」」」」
「ぐわあっ!」
武装したデスアダーの集団は、警察一人に対して三人から四人ほどで一気に襲いかかっていた。
警官隊は四方から殴られ、どんどんと警察側の戦力が減ってゆく。
「てりゃっ! だあっ!」
久保巡査は、警棒を持って逮捕術と空手を駆使し、何とかその攻撃を凌いでいる。
「に、二斗刑事! 多勢に無勢です! こ、このままでは・・・・・・」
「「「「「 ひゃっははははぁ! 」」」」」
ガキインッ! ググググッ バアッ!
「くっ! てりゃっ!」
七人いた警察も、久保巡査と二斗刑事ほか、残り二名となってしまった。
他の警官や刑事は、模造刀で殴られ、刺され、鉄パイプでさらに殴られ、重傷を負った。
「ひゃはぁ! おい、オッサン刑事! てめーも、死ねっ!」
デスアダーの一人が、二斗刑事の襟を掴み、模造刀の切っ先を向けた。
「! ぬうっ! ・・・・・・させるかっ!」
二斗刑事は、切っ先が腹に刺さる前に、相手の胸ぐらと腕を掴んだ。
そして、柔道の背負い投げの姿勢に入り、一気に相手を担ぎ上げた。
「ぬんっ! ・・・・・・うるるぉぉあぁーーっしゃぁっ!」
・・・・・・ズシャアッ ズッダアァンッ!
「ぐげえぇっ・・・・・・」
重みのある声で、気合いを発した二斗刑事。
相手を地面に投げ飛ばして叩きつけ、他のデスアダーたちに警棒を向けて構え、戦い続けていた。
* * * * *
ギュビィイィーーーッ! ガチイィンッ! ジイィーーーッ・・・・・・
ヒュルウウンッ ギュビイィーーッ! バチュンッ! ギャリンッ!
ジイィーーーッ・・・・・・ ギュビイィーッ バカァァンッ!
「くっそぉ! 意外だった! あのヨーヨー、あんなに射程距離あんの? 近寄れないじゃん!」
「小紅サン! コンクリートの壁も砕いています。あのヨーヨー、鋼鉄製の武器用だと思います!」
「私も、あれ一発で、やられちゃったんだよーっ! すっごく痛かったの! うひぇー!!」
ヒュルウウンッ ギュビイィーーッ! バチュンッ! ギャリンッ!
ギュカアァッ! バカァンッ! ジイイィーーッ・・・・・・
建屋内では、小紅たち三人がジョーと交戦中。
ジョーが巧みに操る鋼鉄製のヨーヨーは、上下左右斜めから高速で動き、高速で振り回されている。その動きを見切れず、三人はまったく近寄ることができない。
「どうした・・・・・・? オレと遊んでくれるんじゃなかったのか? ・・・・・・ふん・・・・・・」
しなやかに手首と指を動かし、ヨーヨーを操るジョー。周囲の窓枠や崩れたコンクリート壁は、ジョーのヨーヨーでさらに壊れてゆく。
周囲の物を粉々にしながら飛び交うヨーヨーは、しばらくしてまた、ジョーの手に戻る。
「ん! ヨーヨーが、引き戻った! 今だぁっ!」
小紅は、一気に床を蹴り、ヨーヨーが戻るスピードに合わせて、飛び込んだ。
・・・・・・シュラアァンッ! ビュバババァァァッ!
「小紅センパイ、あぶないっ! ひゃーっ!」
「え! ・・・・・・うあぁっ!」
・・・・・・ごろんごろんごろん
飛び込んできた小紅に対し、ジョーが左手で薙ぎ払うように、刀を横一文字に振った。
石灰で服を白く汚しながら、小紅は床に伏せて転がり、また遠間に戻る。
「ふぅーっ・・・・・・。遠間ではヨーヨー、近間では刀か。・・・・・・何かを利用して防がないと」
「刀と言っても、模造刀だ。これだけは先に言っとくぜ。斬れはしねぇ・・・・・・」
「小紅センパイ、油断しないで! あれ、斬れはしないけど、先端は刺さるよ!」
「ヨーヨーと同じく、あの刀も鋼鉄製のようです! だいぶ古そうですが」
「・・・・・・ご名答だ、眼鏡女。・・・・・・これはな、九州で作られた、同田貫の模造刀だ・・・・・・。骨董品だが、鋼鉄である以上、木刀より破壊力は上。でけぇが、剣術家なら、片手で使うくらいどうってことはねぇ・・・・・・」
「剣術家? あんた、ヨーヨーは遊びで、本来の武器は、刀か! ヨーヨーで変則的な円の動きに目を慣れさせて、直線的な刀の技で仕留めるってわけね!」
「・・・・・・ほぅ、さすがだな、早乙女小紅。・・・・・・そのとおりだ。この同田貫と、カーボン繊維で操る鋼のヨーヨー。・・・・・・さぁ、どうする? おめぇに、地の利は活かさせねぇぜ」
小紅、澪、水穂の空手女子三人を相手にしながらも、余裕で笑って佇むジョー。
「(あのヨーヨーか刀の、どちらかだけでも封じることができれば・・・・・・。あたしたちは三人。あいつは一人、か・・・・・・。何か、攻撃する際に利用できるもの、ないかな?)」
「(小紅サン。散りましょう! あの男を中心に、わたしたちで三点囲いに!)」
「(小紅センパイ! 刀は速いし、ヨーヨーは後ろにも飛んでくるから、気をつけて!)」
中央の小紅と、小声で左右から作戦を練る水穂と澪。
「・・・・・・どうした? ・・・・・・作戦タイムは、終わったか?」
「・・・・・・まぁね。・・・・・・澪っ! 水穂っ! 動くよっ!」
「「 はい! 」」
・・・・・・しゅたたっ ばばばっ しゃしゃしゃっ
三人は、ジョーを中心とし、三点に位置取りをするようにして動いた。
中央のジョーから見て、正面には小紅、左には澪、右には水穂が、間合いを取って取り囲んでいる。
「・・・・・・ほぅ? ・・・・・・考えやがったな? はっはっは・・・・・・。いや、たいしたもんだ!」
・・・・・・ジイイィーーーーッ ギュルギュルゥーーーーッ ジジィィーーッ
三方向から拳を構える小紅たち。ジョーは、気にすることなく、ヨーヨーを再び高速で操る。
「・・・・・・おめぇら・・・・・・『剣道三倍段』って言葉は、知ってるかよ?」
何か皮肉を込めたような笑い方で、ジョーは、ぼそっと呟いた。
「剣道・・・・・・三倍段?」
澪が、構えたまま、緊張した表情で聞き返す。
「あぁ・・・・・・。おめぇらみたいな、素手の武道が剣を相手にする場合、剣の段位の三倍ほどの段位があって初めて同等だ、って格言だ・・・・・・」
「えぇ? 私が初段、ミオも初段、小紅センパイは二段だから、計、四段!」
「・・・・・・で? あんたは、剣術何段持ってんのよ?」
「オレは・・・・・・大したことはねぇ。・・・・・・陶元一刀流の五段、そして陶元流居合の四段だ」
「えええぇ! ばかじゃないの? 大したことあるじゃーんっ! 合計九段じゃん!」
「(剣術に、居合か・・・・・・。厄介ね。わたしと小紅サン、そして水穂で、どう攻めれば?)」
「ひぃー。九段の三倍って、二十七段だよ? そんな段位無いじゃーん! わーん!」
「水穂っ! あくまでも、剣道三倍段は、武器を持った相手を素手で制する際の難しさを、そういう表現にしたもの! 数字に惑わされるなっての! 気を引き締めなさいよ!」
小紅は、じたばたする水穂を一括し、再び集中させた。
「・・・・・・さて、と。・・・・・・おい。どうすんだ?」
「どうするも、こうするも、あたしはあんたを倒して、警察に突き出す!」
「・・・・・・できんのか?」
「やるしかないっての!」
「・・・・・・やれやれ・・・・・・。・・・・・・まぁ、勝手にしろ・・・・・・」
「勝手にするよ! さぁ、澪! 水穂! 集中っ!」
「「 はい! 」」
「おもしれぇ・・・・・・。さぁ、続きだぜ!」
ジョーの掌が開き、ヨーヨーが一気にその回転力を増して、空中に放たれた。
ギュギュゥァーーーーーッ! ギュンバシィッ ギュンバシィッ!
ビュビュビュビュルゥンッ! ギュバアンッ! バシャアァンッ!
「う、うわぁっ! 危ない! 危ないよーっ!」
ギュギュゥァーーーーーッ! ギュインッ ドガシャアァン!
ビュビュルゥーンッ! ギュバアッ! バカァァァンッ!
「くっ! 動きが変則的すぎて、避けるだけで精一杯だ!」
ギュイイイイィィーーーーッ! ギュバンッ! ズガガガガガッ!
ギイイィーーーッ ギュバンッ! ギュウンッ! ズガアァンッ!
「水穂! 小紅サン! せ、攻め込むタイミングが掴めませんっ!」
ギュギュゥァーーーーーッ! ギュンバシィッ ギュンバシィッ!
ビシュゥィーーーーッ! ギュバアンッ! ジイィーーーーーッ・・・・・・
まるで、ジョーの周囲に半球型の結界が貼られたかのように、超高速で三次元の動きを見せる鋼鉄のヨーヨー。
それは廃墟内にある古い樽やセメント袋、老朽化したプラスチックコンテナ、錆びたテーブルなどを次々と破壊。ジョーは歩きながらヨーヨーを振り回して小紅たちを弄ぶ。
「話にならねぇ・・・・・・。ジッテ、アシッド、ブライアンの三人を蹴散らしたと聞いたが、その快進撃も、オレで終いだ・・・・・・」
表情を一つも変えず、クールな顔で呟く、ジョー。
帽子の五芒星がぴかっと輝き、肩には同田貫を担ぎ、冷ややかに小紅たちを嘲笑っている。




