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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#11 残念だったね! 人違いだよ!
52/84

~ファイル52 残念だったね、人違いだよぅ~ 

   ブロオォォォー・・・・・・  ブロロロロロ・・・・・・


「柏沼高校の制服に、特徴的な髪型・・・・・・。おい、写真、もう一回見せろ?」

「おう、これだぜ? こんな髪型、まず、間違わねーよ!」

「よ、よし。・・・・・・ナンバープレートは?」

「見えにくくしたぜ! 取り締まりギリギリのとこだから、言い逃れはできんぜ!」

「白昼に拉致んだからな。ぬかりなくやろうぜ。・・・・・・。おい、変装は?」

「バッチリだぜ。ひゃはは! どう見ても、サラリーマンだろ?」

「ちげぇねぇ! いけるぜ! これなら怪しまれずに、拉致れんぜ!」


 黒塗りのワゴン車内で、男たちが三人、怪しい会話をしている。

 作業服のようなものを着た、ハンドルを握る男。

 サングラスをかけた、スキンヘッドの男。

 そして、サラリーマン風の変装をした、シルバーピアスの男だ。

 

   ブロオォォォー・・・・・・  ブロロロロロ・・・・・・

   ヴォヴォヴォォーッ  ヴォヴォン ブロロロロロ・・・・・・


 エンジンを唸らせ、車は、美容室と花屋の前を走り抜けていった。


「あんなに吹っ飛ばして、やかましい車だなぁ! 売り物がダメになっちゃうじゃん!」


 小紅は、車が通った後の排気ガスを手で煽ぎ、眉間に皺を寄せ、その車を睨みつけていた。


   ブロロロロロ・・・・・・  ヴォヴォン・・・・・・


「お、おい! いたぜ! あいつだ。あいつだろ?」


 運転手の男が叫んだ。他の男たちも、モノクロ写真を何度も見ながら、「そうだ」と叫ぶ。


   ・・・・・・キキイッ  ガーッ!


 ワゴン車は、道路の左端に寄り、停車。

 ドアが開き、スーツを着たサラリーマン風の男が、制服姿の水穂の後ろから迫る。


「すぅいませぇーん。ちょーっと、アンケートよろしいですかー?」


 男が、澪の前に回り、手に持った紙を説明するような素振りを見せた。


「え? いや、あのー。わたしたち、急いでますので・・・・・・」


 澪が、怪訝な顔をして断ると、その横にいた水穂も、じっと男を見つめ、怪しむ。

 男は、視線を上げて、澪の後方へ合図を送った。


「・・・・・・きゃあっ!」

「オラァ! やったぜ! ブスジマさんに刃向かった罰だ! ひゃはは!」


 水穂は後方から、別な男に頭からずっぽりと大きな麻袋を被せられ、そのまま抱えられていった。澪は驚いて、水穂を追いかけようと走り出す。


   ・・・・・・ガッ  ドシャッ


「うあっ! い、いったぁ・・・・・・」


 サラリーマン風の男が、駆け出そうとした澪の足を引っ掛け、転ばせた。その隙に、男たちはワゴン車に乗り込み、水穂を乗せて、一気に走り去ってしまった。


   ヴォヴォン・・・・・・  ヴォヴォオオオオオォーッ!


「み、水穂ぉーっ! こ、これは大変だ!」


 澪は眼鏡を拾い、ポケットから携帯電話を取り出して、警察に通報した。


「あ! す、すみません! 友達が目の前で、怪しい男たちにさらわれてしまいました!」

「〔場所を詳しく教えて下さい。あなたから見て、目印になるものはありますか?〕」

「え? 場所? えぇと・・・・・・柏沼市寺町の『ゆみちゃんラーメン』の目の前です!」

「〔わかりました。すぐに向かわせます。そのまま、その場にお願いします〕」


   ・・・・・・ピッ  プー  プー  プー


「(水穂! 無事でいて! 必ず無事で・・・・・・。仏様、どうか、水穂を助けて下さい!)」


 澪は、水穂の持っていたバッグを拾い、後ろに建っているお寺に手を合わせて、祈った。



     * * * * *



   ごそごそごそ  もこもこ  もこもこもこ  がさごそ


「んーっ! んーっ!」


   じたばた  じたばた  じたばた


 黄土色の麻袋から、黒いストッキングと栗色の革靴を履いた足が、じたばた動いている。


「ひゃはは! やったなぁ、おい! うまくいったぜ!」

「ジョーさんにも、ブスジマさんにも、いい報告ができそうだな! ヒャッホイ!」

「こんな簡単に拉致れるなんてよ、やっぱ、ただの女だってこった! ひゃははは!」


 男たちは車内で、宴会のような盛り上がり方で喜んでいた。

 袋を被せられた水穂は、足先しか動かせない。


「(な、なんなのー? ・・・・・・この人たち、なに! どーなっちゃうのぉー、私?)」

「空手だか何だか知んねーけど、ジョーさんも、こんな女にビビりすぎだぜ!」

「(さっきから、ジョーだのブスジマだのって。なんなのよー!? ・・・・・・ん!)」


 水穂は、袋の中で、男たちの会話を聞きながら、あることを思い出した。


 ~~―――。


「二斗刑事。あの男、あたしたちを襲っている最中に、『デスアダー』『ぶすじま』って呟いていましたが、何か、わかりますか?」

「それが本当なら、裏にいる組織は、三年前から県内で暗躍している、半グレと言われる犯罪組織だ! その頭が、毒島仁英なのだが。」

「・・・・・・やっぱり、そうか。・・・・・・デスアダーめ。あたしの、家族の仇だ!」

 

 ―――~~。


「(も、もしかして、小紅センパイが追っている組織に・・・・・・私、捕まったってやつー?)」

「ひゃはは! 早乙女小紅を拉致れたんじゃ、いくらもらえっかな?」

「百万以上くれんじゃね? やったぜ! きっと、ブスジマさん、大金くれんぞ!」

「バカな女だよな! デスアダー相手に、刃向かってんだとよ、こいつ!」

「(ひぃー。や、やっぱりそうだ! 私、人違いですーっ! ま、まずいね・・・・・・)」


 水穂は袋の中で、青ざめていた。

 さっきまで、じたばたと動いていたが、静かに聞き耳を立てている。


「ん? おい? この女よー、なんだか、急に静かになってねーか?」

「観念したんじゃねーの? ひゃはは! 意識失ってんなら、犯しちまうか?」

「(え! ひゃーっ! や、やめてぇ! 何とかして、身を守らなきゃ!)」

「やめろ。先に、余計なことすっと、ジョーさんやブスジマさんに、オレらがヤバい目に遭わされちまうぞ?」


 運転手の男が、水穂の横にいる男たちに、釘を刺した。


   ・・・・・・ブロロロロロ・・・・・・  ブロロロロロン・・・・・・


「ちっ! 女子高生を犯す映像、高く売れそうなのによ! おい、助かったなぁ?」

「(ほ、ほんとに助かったよぉ! こ、こいつら、マジでヤバいやつらじゃん!)」

「さぁ、着いたぜ。・・・・・・その女、そのまま運び込もうぜ!」


 男たちは、ワゴン車から水穂を袋のまま二人で担ぎ上げ、どこかの建物に入っていった。



     * * * * *



「では、黒いワゴン車は、稲葉水穂さんをさらっていったと? どちらに行きました?」

「はい・・・・・・。そうです。はい! この道を、北西の方向へ走っていきました!」


 澪は、現場に急行した二斗刑事たちに、状況を説明していた。


「ど、どうしたの、澪ちゃん!」


 そこに優太が、バッグと花束を持って、鉢合わせた。パトカー二台と、刑事や警察官に囲まれた澪を見て、びっくりしている。


「ゆ、優太サン! 水穂が、怪しい男たちに、連れ去られて・・・・・・」

「え、ええぇ! ど、どういうこと。大変だぁ!」

「いま、こちらの二斗刑事に説明したんですけど、あっちの方角に・・・・・・」


 澪は、北西の方向を指差し、表情を険しくした。


「おい! あっちの方角に、デスアダーが集うような情報がある場所は?」


 二斗刑事は、若手の刑事に情報を照会させた。


「・・・・・・一件、あるそうです。北交番の久保巡査の作成した地域の調査書が!」

「よし、君は、情報を集めろ。Nシステムも確認だ。場合によっては県警に応援要請だ!」

「はっ!」

「篠原さん、すまない! すぐに情報を集め、我々も稲葉さん救出に全力を尽くすから!」

「よろしくお願いします。・・・・・・わたしも、油断してしまって、面目ないです・・・・・・」

「いや、二人とも連れ去られていないからこそ、こうして迅速な対応ができているんだ。篠原さん。あなたがここにいることが、稲葉さんを助け出す最大のカギだよ!」

「あ、ありがとうございます、二斗刑事!」

「君にも危険が及ぶといけない。また、何か気づいたら、すぐに連絡してくれたまえ!」

「わかりました。水穂のこと、よろしくお願いします!」

「ぼくも、水穂ちゃんが、無事であってほしいです。よろしくお願いします!」


 澪と優太は、二斗刑事たちにぺこりと頭を下げた。


「二斗さん、情報が入りました! 板賀(いたが)地区(ちく)にある廃墟の方に、黒塗りのワゴンが入っていくのを見たという住民がいたそうです! ただ、どの廃墟かまでは・・・・・・」

「わかった! あの辺は、廃墟が多い地域がある。手分けして、探そう! いくぞ!」

「はっ!」


   ・・・・・・パァーオパァオパァオ! パウゥーウーッ!


 二斗刑事は、若い刑事たちとパトカーに乗り込み、赤色灯を回転させて、けたたましくサイレンを鳴らし、吹っ飛んでいった。


   ・・・・・・すた  すた  すた  ぴたり


「何やってんの、澪と優太で? どしたの、あれ? 何かあったの? 水穂は?」

「こ、小紅ちゃんーっ!」

「小紅サン! ・・・・・・た、大変です!」


 パトカーを見送る二人の後ろに、アルバイトを終えて帰宅するところの小紅が立っていた。

 その姿を見て、常に冷静さを忘れない澪の顔は、ふっと緊張が弛み、目に涙を溜めていた。


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