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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#8 顔の見えぬ者たち!
39/84

~ファイル39 ジッテvs苺&華蓮~ 

「あ、ミオーっ! そっちのクラスはお土産買ったー? いろいろ、いいものあったよ!」

「とりあえずね、家と、道場のみんなや早乙女師範、部の先輩たちへは、買ったよ?」

「私は、面白いものを小紅センパイに買ったよー。センパイ、今日は何してるかなー?」

「さぁ。休みの土曜日だから、きっと家で寝てるか、優太サンといるんじゃないか?」

「二人で千寿山公園とか、豪邸山公園にでも行ってたりして? そして、夜は、きゃー」

「ないない・・・・・・。もしかすると、優太サンだけで勉強してるかもね。小紅サン、進学しないみたいだから、勉強やらないって宣言してたし・・・・・・」

「まぁ、きっと、楽しく過ごしてるよね! 帰ったらさ、休日、何してたか聞いてみる?」

「そうねー。お土産も、どんなのがいいか、先に聞いてみればよかったね? そうそう、水穂ー。小紅サンへのお土産、まさかウケ狙いで、木刀や手裏剣とかじゃないよね?」

「んー・・・・・・。さ、さぁねぇ? いひひっ」

「え! まさか、ほんとに? ・・・・・・小紅サン、さすがにそれは可哀そうかと・・・・・・」

「あ、あはははっ! ウソに決まってんじゃん! 美味しいお土産にしたよー・・・・・・」


 水穂と澪たちは、修学旅行で楽しく西日本を満喫しているようだった。



     * * * * *



   シュカァァンッ!  キイイイィィィィーーンッ  ドガアッ!


「さぁ、観念しろなり! 日が暮れれば、そちらは益々不利になるなり!」


   ・・・・・・ギチンッ  ギイリリリィー  ギィィー・・・・・・

   シュカァァンッ!  キイイイィィィィーーンッ  ドガアッ!


 アシッドが、一本、また一本と、貫通力の高い強烈な矢を放ってくる。


「・・・・・・おい! 覆面野郎め! お前ら、いったい、なんなのよ! 毒島ってやつに、なぜそこまで従って、こんなことするのよ! マトモじゃないぞ、ろくでなしめ!」


 小紅は建物の陰から、ジッテとアシッドに向かって言い放つ。


「ふふん。・・・・・・我ら五行節は、言わば、雇われ特殊部隊であります。雑魚たちとは一線を画した戦闘技術で任務を遂行する、実働部隊であります。毒島様は、かなり高額の報酬をくれるからであります! 我らの腕前に、高い金を支払ってくれるのであります!」


 ジッテは、渋い声で小紅へ返す。


「ただ、まさか今回、五行節がこんな女子高生ごときに出動とは、いささか気が乗らない感じではあったなりが。こんな隠れてばかりのただの小娘らとは、がっかりなり。普段のアルバイトでは、生活が苦しいから引き受けている仕事ゆえ、仕方ないなりが。まぁこれも、副業のひとつなり!」


 アシッドも、ジッテに続いて小紅へ返す。

 小紅はそれを聞き、「ろくでなしだね!」とさらに返した。

 ジッテとアシッドは語り終えると再び、容赦ない攻撃を続けてくる。


「(ふざけた相手だ! 金のためか! 本当に、厄介だ。・・・・・・ん?)」

「どしたの、小紅?」


 小紅は、ギリギリのところまで顔を出した。弓を引き絞るアシッドの動きと、手裏剣を投げるジッテの動きを、両目をくりっと見開き、じっと見ている。


「そうか・・・・・・。あたしの勘が正しければ、一か八か、いけるかも!」

「「 え! 」」

「苺! そこのコンテナに捨ててある、錆びたフライパン取ってくれない?」

「こ、これ? ・・・・・・はい。どーすんの、これを?」

「華蓮! 苺! これは、一か八かなんだけどさ・・・・・・」


 小紅は、左手にフライパンを持ち、小声で二人の耳元で囁いた。


「そ、それは・・・・・・そうだけど! でも、日が暮れる前には、そうするしかないわね!」

「や、やるしかないかー。失敗は出来ない、特攻作戦だね! でも小紅、それ最高だよー」


 華蓮は、空いたビール瓶をコンテナから取り出し、手に持った。苺は、焦げた雪平鍋を持つ。

 そして、呼吸をゆっくりと整え、チャンスを待って、相手の出方を静かに見ていた。


   ・・・・・・ヒュウウウゥンッ  シュルルシュルルルルッ  


「危ない!」


   カカァァーンッ


 カーブして飛んできた手裏剣二枚を、小紅はフライパンでうまく叩き落とした。


   ・・・・・・シュカァァンッ!  キイイイィィィィーーンッ  ドガアッ!


 アシッドの矢も、小紅が顔を出していたところの三センチ横に、突き刺さった。

 そして、再び、矢をつがえて弓を構えようとするアシッド。


「よし、今だ! やるよ、二人とも! さっきの作戦通りで! 自分の命を最優先でね!」

「わかった! やろうねーっ! チャンス到来だね! どきどき!」

「いきましょ! 小紅チャン! 苺チャンは、わたくしと横並びでいくよ!」

「「「 突撃ーっ! 」」」


   ・・・・・・ザザアッ!  ダダダダダダダァッ!


 建物の陰から、一気に三人は全力ダッシュで飛び出した。先頭に小紅、後ろに両翼陣形のような形で苺と華蓮。


「なに! 痺れを切らせて、出てきたでありますか! 索もなく特攻? むむむぅ?」

「三人まとめて、一気に仕留められるなり! ジッテ! そちらは、どうするなり?」

「アシッド! いいから、早く弓を引くであります! 真っ正面からなら、三人程度どうにでもできるであります!」


 初めはジッテに向かっていった三人だが、ここで先頭の小紅は、きゅっと足の向きを変え、アシッドに向かって猛ダッシュ。


「なにぃ! 早乙女小紅だけ、こ、こちらへ?」

「アシッド! 早く、矢を射るであります!」

「わかっているなり! しかし、射るにはまだ射法が・・・・・・」

「てえぇああぁーーーーーーっ! あたしの足と、お前の矢、どっちが速いか勝負だ!」


 フライパンを持ち、気合いを入れて小紅が走る。その距離は三十メートル、二十メートル、十五メートルと、あっという間に詰まっていった。


「イカの人、おまえの相手は、ウチらだよーっ!」

「ふはは! 面白いであります! てや!」


 ジッテは、突っ込んでくる苺と華蓮に、短剣を二本投げた。


   カイィン!  カキィン!


 苺は雪平鍋、華蓮はビール瓶で、バッティングセンターで球を打つかのように弾き返した。そしてそのまま、二人でジッテにまっすぐ突撃。


「ぬぬぬーっ! こ、こしゃくな! まずいであります!」

「ハアァイィーーッ!」


   サッ! ・・・・・・ギキイィンッ!


「え! ・・・・・・と、止められた!」


 華蓮のビール瓶は、ジッテが腰元から素速く抜いた鉤付きの武具で、受け止められた。


「危なかったであります! このジッテ。接近戦の本領は、この『十手(じって)』であります!」


 そしてジッテは、華蓮の手元を蹴り飛ばし、ビール瓶を吹き飛ばした。


「華蓮! 集中! ウチが今度はやるよ!」


 苺が、片手で雪平鍋を打ち付けた。それを流麗な動きで、冷静に防ぐジッテ。


「いい動きであります! しかし、早乙女小紅以外に、お前たちのような者がいるとは、聞いてなかったであります! 何者でありますか?」

「小紅を標的にしてるんでしょ? 残念だったね! この『きれいなまちづくり同好会』の朝霧苺もね、デスアダーを討つために精進してるの!」


 覆面越しに鋭い目を光らせるジッテと、力比べをするかのように睨み合う苺。

 するとジッテは、受け止めていた十手を振り上げ、雪平鍋を吹き飛ばした。

 それとほぼ同時に、華蓮が今度は仕掛ける。

 ジッテは覆面奥の目を光らせ、華蓮に視線を合わせた。


「お前もこのジッテに真っ向から仕掛けるとは、なかなかでありますな! 誰でありますか!?」

「わたくしは那須野の観光PR大使、三島華蓮ですよーっ! ハアァイィーーッ!」


   ・・・・・・シュバッ   バチイッ!


「甘いであります! ですが、いい突きであります! ・・・・・・朝霧苺に、三島華蓮か!」


 華蓮が横から、素速く掌で突きを打ち込む。しかしそれも、ジッテは素手で受け止めた。


「むんっ! ふおあっ!」

「「 ! 」」


   ・・・・・・ブワアッ!  ブウンッ!  ダダァンッ!


 ジッテは華蓮の手を掴んで引き込み、捻るように巻き上げ、苺に向かって投げ飛ばした。


「い、いったぁい! だ、だいじ? 華蓮!」

「なんとか、ね! しかし、このイカの男、手裏剣だけじゃない! 時代劇で見る十手も使うし、今のような体術もすごい・・・・・・」

「面白いであります! このジッテ、木暮流(こぐれりゅう)忍術(にんじゅつ)による(やわら)の技もあるのであります!」


 華蓮と苺の二人を相手するジッテ。二人がかりでも一筋縄ではいかないほどの体捌きだ。

 右手に十手を持ち、腰を落として左手を開いて突き出す、独特の構えを見せる。


「不思議な投げ技だった! 苺チャンの合気柔術に、どこか似た感じ!」

「柔の技、ときたかー。・・・・・・こんな状況なのに、ウチ、ワクワクしてきちゃった!」

「この五行節と、これほどいい勝負が出来る者が、こんなにいるとは。驚きであります!」


 ジッテに対して、苺と華蓮は同時に踏み込んで、果敢に立ち向かっていく。

 一対二だが、苺と華蓮はジッテに対して同時に「強い!」と心の中で呟いていた。


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