~ファイル37 五行節のジッテ、現る!~
陽は西に傾き始めていた。
小紅たちは、夕食の食材を買い出しに行くついでに、近くにある「千寿山公園」で散歩をしていた。
春はサクラ、初夏はツツジ、秋はカエデ、冬はナンテンが美しい公園で、小さな観覧車もある。
そしてここは、男女にとって、ちょっとしたデートスポットでもある。
「へー。柏沼市の市街地が一望できるんだ? いいところだね!」
「小紅の家、あそこかな? うーん。ウチ、この公園、気に入ったーっ!」
周囲には、人の姿は特になく、静かでゆったりとした時間が流れていた。
「居心地いいでしょ? あたしがね、気分転換によく来る場所なの。朝の走り込みも、ここまで来てから家に戻るまで、ちょうど往復二キロくらいなんだー」
「ふーん。いいじゃない。・・・・・・ねぇ、小紅チャン? こんないいところに、一人で?」
「え? なにが?」
「彼氏クンと、よく来てるんじゃないのーっ? ほら、県庁の時にいた、あの男の子!」
小紅の鼻先に人差し指を突きつけ、にんまりと笑って華蓮が詰め寄る。
その横で、苺も、くすくすと笑っている。
「華蓮まで、まぁた、優太をそう見てぇ! そんなんじゃないってばぁ!」
「照れないでー? わたくし、どう見ても、あれは恋人同士にしかー・・・・・・」
・・・・・・ヒュウゥンッ! ヒュヒュウゥンッ!
その時、突然、何かが空気を切り裂きながら高速で小紅たちに迫った。
「・・・・・・っ! あぶない! 二人とも、伏せてぇっ!」
小紅は、華蓮と苺の首元を両腕で抱え、なりふり構わず地面にさっと伏せた。
・・・・・・キキィィンッ! ドカアッ!
得体の知れない尖った金属が、ひとつは観覧車の土台に当たり、弾け飛んだ。もう一つは、サクラの木に深く突き刺さった。
「な・・・・・・なに、今のぉ!」
苺が、周囲をきょろきょろと見回す。華蓮は、苺と背中を合わせて、警戒しながら構える。
小紅は、弾け飛んだ金属の物を拾って、じっと見つめる。
「なにこれ・・・・・・。小刀みたいだし、ナイフみたいでもあるし、どういうこと?」
・・・・・・ヒュヒュウゥンッ! ヒュウゥンッ! ヒュルゥゥンッ!
「え! ま、また飛んできた! まずいっ! 華蓮! 苺! 二人とも、よけろーっ!」
再び、黒く尖ったナイフのような金属が三本、高速で飛んできた。
これには華蓮と苺も反応し、慌ててその場から跳び退く。小紅も、木の後ろにさっと身を隠す。
ドカカカカッ! ドカッ! ドカカッ!
その三本は、凄まじい威力で木に突き刺さった。
飛んできたのは、笹の葉のような細長い形の、手裏剣サイズの短剣だった。
「こ、小紅! だいじ!? ウチと華蓮は、無事だよぉーっ!?」
「だいじ! ・・・・・・なんなんだ! 忍者でもいるの? 明らかに、あたしらを狙ってる!」
すると、五十メートルほど先から、銀色の覆面をした者が逆光を背負い、静かに現れた。
「なかなかの反応でありますな・・・・・・。やるではありませんか、早乙女小紅・・・・・・」
「(な、なんだあのイカ覆面の不審者! 怪しすぎだろーっ! しかも、あたしの名を!)」
小紅は木の陰から、その者を見て汗をつつりと垂らす。
「デスアダー。五行節のジッテこと、この木暮権蔵の手裏剣術を躱すとは!」
「「「 デ、デスアダー? 五行節だって? 」」」
「さぁ、出てきて勝負であります! 毒島様の指令により、その命、頂きますぞ!」
ついに五行節の一人と激突した三人。このジッテという男は、一体、どれほどの実力なのだろうか。




