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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#7 香る金木犀と、集う三つ巴!
29/84

~ファイル29 警察も、追っているのだ~ 

「それじゃ、小紅。すまんが、三日ほど帰らんから、頼むぞぃ? 日曜の夜に戻っかんな」

「はいはい。気をつけて行ってきなよー? 向こうで、酒飲みすぎないでよね?」

「それは、だいじじゃ。・・・・・・じゃ、道場も、指導たのむぞー。ケガだけ気をつけてな?」

「はいよ。まぁ、気楽に、ほどほどでやるから。いってらっしゃい!」


 源五郎は、今日からの金土日は不在。

 二泊三日で、東京都内で開催される全国指導者講習会と、審判講習会に参加する。そのため、こういう時の道場稽古は、小紅が師範代となる。

 ぴしっとした黒いブレザーの胸にはエンブレムを着け、そしてグレーのスラックスに革靴といった、いつもとは違う源五郎の姿。

 漆黒のバッグを持ち、北柏沼駅まで源五郎は歩いていった。


「澪と水穂も、帰ってくるの日曜で、いないしなぁー。あたしだけで稽古を見るようかー」


 二年生は一昨日から、広島、大阪、京都へ修学旅行に行っている。このコースは今年までのようで、再来年からは沖縄になるそうだ。


「まっ、何とかなるか。ひとりでも。・・・・・・さて、あたしももう出なきゃ」


 革靴を履き、バッグを肩にかけ、小紅も家を出て学校へ向かった。

 小紅が歩いてゆくと、この季節特有の甘く芳しい香りが、四方八方から漂ってきた。



     * * * * *



   ~~~♪ ~~~♪♪ ~~~♪♪♪ ~~~♪

 

 校舎内には、今日もチャイムの音が鳴り響く。

 大きなキンモクセイとギンモクセイの植木が、学校の周辺を甘い香りで包んでゆく。


「あーぁ、疲れた。・・・・・・今日は寄り道せず、帰らなきゃなー。早めに道場開けるかー」


 昇降口を出て、正門へ向かう小紅。

 他の三年生も、次々と帰ってゆく姿が見える。

 正門を出た小紅がふと前を見ると、黒いスーツとワインレッドのネクタイをした男性が二名。


「あっ! 二斗刑事! お久しぶりですーっ。・・・・・・何か、事件ですか?」

「おぉ、早乙女さん。・・・・・・今日は、ちょっとした案件の捜査中でね。いま帰りかな?」

「はい。もー、今日からじーちゃんが不在で。あたし一人なんで、疲れちゃいますよー」


 二斗刑事は、もう一人の刑事と目をちらっと見合わせた。


「早乙女さん、ちょっと・・・・・・いいかな? こちらへ・・・・・・」

「はい? なんですかー?」


 二斗刑事は、路地の陰に小紅を連れて行き、周囲を警戒しながら、小声で話す。


「あれから、デスアダー絡みの件は、大丈夫かね?」

「まぁ、特に今のところはー。・・・・・・なんですか? かなり真剣な顔ですけど?」

「いや・・・・・・。何もないならいいんだが。・・・・・・あの組織をいま、県警本部も追ってはいるんだがね、末端の小者を捕まえても、なかなか毒島には辿り着けないんだ・・・・・・」

「そうなんですか。・・・・・・あの気持ち悪い男や、暴走族の頭は? 何も言わないんですか?」


 小紅は紅色の髪留めの片方を手で直しながら、二斗刑事に問う。


「柿田信好や岩村丸助は、未だに口を割らない。・・・・・・特に柿田は、何か、相当デスアダーについて怯えているようだが・・・・・・。岩村は義理堅いのか、毒島に触れることは、黙秘でね」


 二斗刑事は困り果てたような顔で、小紅の前で溜め息をついた。


「ふぅん・・・・・・。ねぇ、二斗刑事? 毒島仁英、でしたっけ? そいつはいったい、どんな奴なんですか! 教えてください! あたし、デスアダーは絶対に許せないから、そいつを必ずこの手で倒したいの!!」


 小紅は、細い眉をきりっと吊り上げ、二斗刑事に問いかけた。


「いや・・・・・・。これはまだ、捜査中もあって、言えんのだ。すまないね・・・・・・」

「何でよ! ・・・・・・まぁ、あたしがろくでなしを取り押さえてれば、いつか、わかるかもしれないんでしょうけど。・・・・・・あたし、デスアダーは絶対に許さないので!」


 二斗刑事は、小紅の顔を見て少し困惑した表情を見せつつ、口を開く。


「早乙女さん。・・・・・・いや、これだけは言っておこう。毒島の組織には、危険な配下がいる。きみの実力は我々も認めているが、これ以上はあの組織を相手してはいかん! 危険だ! 毒島は、きみの存在に気づき、危険な者を使って、きみを狙ってくるかもしれない!」

「それは何となくわかっています。オオイヌ通りでも以前、怪しい集団を束ねていた男がいましたし。しかも、あたしを試すようなことをしてきたし。・・・・・・あたしが標的って、もうわかってます。何をしなくてももう、向こうから来るんだもん」

「な、何と! そ、そんなことがあったとは・・・・・・。とにかく、何かあればすぐに警察を呼んでくれ? 危険な相手だ。我々も、全力で毒島を逮捕できるよう捜査を続けるから」

「わかりましたー。・・・・・・じゃ、二斗刑事、お仕事頑張って下さい。ココア、飲みに行けなくてすみませんねー」


 小紅は、にこっと笑って、二斗刑事ともう一人の刑事にぺこりと頭を下げ、帰路についた。


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