プロローグ
愛には種類がある。
家族に向ける愛と恋人に向ける愛は違うし、友人に向ける愛もペットに向ける愛も違う。かと言って感情が全く別なのかと言われるとそうではないというのが、アタシの考えだ。
区別があるとするならば、それは対象が何なのかということなんだろう。同じ感情でも、向ける相手が違えば別物になり、名前も変わるということだ。人は無意識に相手が誰かで愛の種類を判断している。これは大事なことだ。これが出来なければ倫理に反してしまう。愛にも理性が必要なのだ。
アタシがアイゼンバーグに向ける愛は恋人への愛だ。彼はアタシの恋人だから。でももし結婚なんかしたりして、家族になったらそれは家族の愛になるのだろうか。
分からない。
けれど、ずっとアタシはアイゼンバーグに恋人としての愛を向け続ける気がする。彼はずっとアタシの恋人。たった一人の愛しい人だ。
じゃぁ、もう一つのこの気持ちは何なのだろう。
海に沈んでいったこの気持ちは?
ふとした瞬間に思い出して胸が苦しくなるこの気持ちは?
アタシの半身への愛だろうか。つまり自己愛?
分からない。
でも、確かにアタシの中には彼への感情と同じなような気がするのに、彼以外に向ける感情がある。
こんなことがあっていいのだろうか。いや、いいわけがない。愛しい人はたった一人でなければならないのだから。この愛は複数あっちゃいけない愛だ。二つ以上あるなんて有り得ない。あっちゃいけないんだ。




