エピローグ
人はどうして何度も恋をするのだろう。どうして一回こっきりじゃないんだろう。たった一回なら間違わないのに。
一生で一人のことしか好きにならない人を尊敬する。アタシもそうだったら良かったのに。どうして何人も好きになってしまうのだろう。
初恋は幼稚園の時。カッコイイ男の先生だった。次は小学校高学年。よく一緒に遊ぶ、ちょっと意地悪な子だった。それから中学二年生。テニスが上手くてみんなに慕われていた部活の先輩が好きだった。そして高校二年生。道端で会った青い目の吸血鬼に恋をした。
何度も恋をしているけれど、どれも紛れもなく心が震えるのを感じたのだ。そして今回も心が震えた。いや、震えたどころではなかった。未だかつてないくらいの衝撃だった。
アイゼンバーグとローザンヌに再会した瞬間に、雷で打たれたような感覚がしたのだ。
運命の人は一生に一人のはずだ。それはアイゼンバーグのはずだった。ではローザンヌは何なのだ? アタシのご主人様だから、吸血鬼にとっての絶対的な存在だから、彼が海に沈んだ今でも彼のことを忘れられないのだろうか。吸血鬼の本能的な問題で彼のことが気になるのであって、アタシの心とは乖離しているのだろうか。
でも、アタシは吸血鬼だ。吸血鬼の感覚は、アタシの感覚だ。今更どうしようもない。
吸血鬼って難しい。恋って、人を愛するって難しい。
でもこの時のアタシは愛することの難しさをこれっぽっちも理解していなかった。人の心は単純だからこそ難しいことに気づいていなかったのだ。




