Look×For×Vampire05
何!? アタシとレオ以外に誰かいるの!? もしかしてブランの手先!? とアタシは身構えたが、レオは早々に警戒態勢を解いて大げさにため息を吐いた。
「来るなら来るって連絡してから来てよ。でも、オマエが来るなんて珍しいね」
キィィィ……
扉がゆっくりと開き、灯りの点いていない室内から人影が現れた。
白いシャツと紺色のロングカーディガンにジーンズ。緩い三つ編みにして右胸に垂らした金髪は陽の光を浴びてキラキラ光っていて、綺麗に整った顔に埋め込まれた金色の瞳も煌めいて見える。
「……小娘、まだ死んでなかったんですか」
煌びやかな姿とは裏腹に、声はとてつもなく不満げだ。
「……どうしていつもいつもハイネグリフはアタシの死を望んでいるの」
言い返すとハイネグリフは金色の目でぎろりとアタシを睨んできた。
どうしてそんな顔で睨まれなきゃいけないのか。そもそもどうしてアタシはハイネグリフにこうも死を望まれているような発言をされるのか。初対面の時は人間だったし、アイゼンバーグから吸血鬼を見た人間は始末するしかないというおかしなルールも聞いたので分からなくもない。けど、今のアタシは吸血鬼もどきだ。ハイネグリフはそれを分かっているはずなのに、どうして初対面の時と同じような態度を取るのか。
「別に死を望んでいるわけではありません」
「じゃぁ、どうしてそんなこと言うの?」
「そう思ったから言っただけです」
アタシは何でそう思ったのか聞いてるんだけど!?
そう言おうと口は準備していたけれど、レオが「はいはい。そこまで」と止めに入ったので声になって出て来ることはなかった。
良かった。このままだと喧嘩になりそうだった。レオが早めに止めてくれて良かった。
「ハイネは何しに来たの? 手伝う気ないんだったら、ご主人サマのところへ帰りなよ」
レオの声がいつもより低い。
「まだ帰りません。やることがあるので」
「やることって何? ここに来たってことはオレたちに関係すること?」
「貴方に関係することではありません」
しん、とコンマ何秒か静かになった。それと共に気温が一段階下がった気もする。何か、雲行きが怪しい気がするのはアタシだけだろうか。
「じゃホノカに関係すること?」
「それを聞いてどうするんですか」
「見て分かんないかなー。オレ、今ホノカのご主人サマ探しを手伝ってんの。サンダーみたいにオマエがオレの邪魔しないか確かめなきゃなんないから聞いてるに決まってんじゃん」
顎を引いたレオが下からハイネグリフをねめつける。反対にハイネグリフは顎を上げて上からレオを見下ろした。
「貴方が手伝わなくてもいいでしょう。貴方こそ早くマスターの元へ帰りなさい」
「やだ。何でオレが帰らなきゃいけないわけ? ご主人サマがそう言ったの?」
「言っていません」
「だったらオレはホノカが青の王と契約するまで帰らないよ」
「貴方がいて何になると言うのですか。貴方がいても何も変わりません。事態が好転するわけではないのですから、大人しくしていなさい」
「はぁ? オレじゃ力不足とでも言いたいの?」
レオが距離を詰めた。するとハイネグリフも同じように距離を詰めた。
二人は手が届く範囲まで近付き、互いに眼光を鋭くして睨み合った。吸血鬼がよくする、殺してやるっていう本気の殺意が籠った目だ。二人とも戦闘態勢に入っていることがビリビリ伝わってくる。
「レオ、貴方赤の王に足を折られ、逃げ帰って来たのでしょう」
「そーだけど?」
「そこの小娘に助けられたそうですね。助ける側であったのにも関わらず、助けられて帰って来る貴方に何が出来るんですか?」
「うっさいな。いざって時に昏睡状態で何も出来ずに寝てた誰かさんに言われたくないんだけど」
ピク、とハイネグリフの眉が動いた。無表情だった顔、眉間にしわが寄っていく。何か本格的にまずい気がする。
「全快だったのにも関わらず、醜態をさらした貴方に言う筋合いがあるんですか?」
「じゃ、オマエにはあるのかよ」
ついにレオがハイネグリフの胸ぐらを掴んだ。自分より背の高いハイネグリフを睨み上げ、反対の手の爪をハイネグリフの首に当てている。あれ、レオの爪ってあんなに鋭かったっけ!?
「少なくとも、何の情報も得られず手ぶらで帰って来ることはありませんよ。私なら」
ごりっ
レオのこめかみにハイネグリフが銀の銃口を突き付けた。引き金には人差し指がかかっている。
ハイネグリフの指先、レオの爪の先があと数センチ動くだけで、二人は確実に傷つく。
待て待て待て待て。何で? どうしてこうなった? どうして吸血鬼ってこんなにも喧嘩っ早いやつらばっかりなの? 吸血鬼は普通に会話出来ないの?
「ストップストップ! 二人とも落ち着いて!」
アタシは咄嗟に二人の間に手を入れて胸を押しながら身体をねじ込み、文字通り割って入って腕の長さ分だけ二人を離すことに成功した。
「二人ともここにいるのはアタシを手伝ってくれるためなんでしょ? だったら仲良くしてくれないと困る。ここはアタシの顔を立てて仲直りしてくれない?」
「別にホノカのためじゃないよ。オレはオレのためにやってんの。勘違いしないでくれる?」
「貴方には立てる顔なんてないでしょう。厚かましい」
こいつら!! 頭に来たので両者一発ずつ殴ってやった。どちらとも脇腹だ。
「ホノカさぁ。吸血鬼じゃなくてゴリラなんじゃないの? 今回は折れなかったけど、人間だったら複雑骨折してるからね?」
ハイネグリフの胸ぐらを掴んでいた手で口元を隠し、脇腹をさすりながらじとっとアタシを睨むレオ。
「近付かないでください。折られたくないので」
一歩下がり、眉間にしわを寄せてアタシから距離を取るハイネグリフ。こちらもアタシが殴ったばかりの脇腹を押さえている。
「自分のことは棚に上げて!」
腕を振り上げたら二人は右と左に散って逃げた。ちくしょう無駄に連携が取れているではないか。同じ方向に逃げてくれれば良いものを!
レオは足が速いからまずはハイネグリフを捕まえてやる! アタシは地面を蹴った。




