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B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第2章 B×B×Vampire

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Look×For×Vampire04

 アタシはどうやら普通とは違うみたいだ。レオたちに言われた時はよく分からなかったけど、ブランの反応を見てからちょっと変なのかもと思い始めた。だから、もしかしたら普通の吸血鬼の感覚じゃないのかもしれない。


「なるよ」


 不安になっているアタシとは逆に、レオは自信たっぷりに断言した。


「眷族や雑種はご主人サマ抜きでは生きられないんだから分かる。眷族や雑種にとってのご主人サマは、いわば心臓なんだよ。自分の心臓がどこにあるかぐらい生き物なら分かるでしょ?」


「それはそうだけど……。だって心臓って内臓なんだから生きている限り自分の中にあるものだし……。でも、ご主人様は自分とは別の、別人でしょ?」


「吸血鬼にとっての主従関係は人間とは違うんだよ。吸血鬼にとってのご主人サマ……自分の種類ってものは、家族でもなければ先輩後輩というわけでもない。血を分けた分身なんだ。全員自分ってこと。サンダーやハイネが自分とは思いたくないけど、そう感じさせられることはあるよ。距離が近いと、相手の考えや気持ちが分かったりする時があるんだ。いつもじゃないけどね」


「えっそうなの? そんなのプライバシーなんてないみたいなもんじゃ……」


「まぁ、そーいうことになるね」


 レオは肩を落としてみせる。


 何ということだ。吸血鬼にはプライバシーがないのか。アタシが青の吸血鬼になったら、アタシの考えていることがアイゼンバーグには筒抜けになってしまうということか? 思ったことがそのまま伝わってしまうのか? 最悪だ。


「テレパシーみたいに正確に伝わるわけじゃないから大丈夫だよ。今こいつ怒ってんなーとかそういう程度だから。人間だった時も時々あったでしょ? それをちょっと強くした感じだよ」


 確かに。その程度ならある。口には出していないけど苛々しているみたいだな、とか、嬉しかったんだなとか。まぁその程度ならそんなに気にすることもないか。


「……ホノカは別の意味で筒抜けだけどね」


「えっ」


 それってどういうこと!?


「今、どういうことって思ったでしょ?」


 レオが目を細めた。


「うん、思った」


「ホノカは顔に出るからね。ホノカが思っているよりもずっと、ホノカは感情が表に出やすいよ。本当に分かりやすい。同じ吸血鬼じゃなくても読み放題だよ」


「そんなに?」


「そんなに。試しに何か考えてみなよ。オレが当ててあげる」


 にぃっと笑ったレオに乗せられて、「それじゃぁ……」と試してみることにした。とはいえ何か考えてみてと言われても何を考えれば良いのか分からない。うーん。何か思いつかないかな。


 ……全然ダメだ。


「何か思いつかないかなーって考えてみたけど、何も思いつきませんでしたって顔」


 ビシッと人差し指で指された。


「あ、当たってる!」


 ビックリした。レオってエスパー? いや、レオが言ったようにアタシが分かりやすいだけなのか? そんなに?


「ほーんと、ホノカって分かりやすいね。こんなに分かりやすかったら騙しやすそうだ」


 レオは金色の目を細めた。


「気をつけなよ。ただでさえサンダーの手玉に取られて追い出されちゃってるんだからさ。まだアイツは危害を加えないだけマシだけど、アイツみたいなことをしてホノカを良いように扱うヤツが出て来るだろうから。あのブランボリーっていう赤の王とかさ」


 ドクン、と心臓が揺れた。


 アタシはレオと一緒にブランの元から逃げて来た。あれから幾何も経たないうちに遠く離れてしまったからまだ見つかっていないだけで、ブランはアタシを捕まえるための計画を実行しているかもしれない。巧妙な罠を張って待ち伏せている可能性がある。アタシはきっとまんまと罠に引っ掛かってしまうのだろう。もしかしたらもう、ブランは何か行動に移しているのかもしれない。例えばフェリックスさんのお屋敷を襲うとか……。


「心配しなくても、昨日今日で赤の王がご主人サマを襲うとかはないと思うよ。オレたち相当暴れたからね。被害が大きいはずだから、立て直すのに何日かかかると思う」


 被害。


 頭の中に横たわる女の子たちの姿が浮かんで、すぐに無理矢理消した。レオの言う通り、あの状態を元通りにするには時間がかかりそうだ。ここ日本はブランの本拠地ではないので、相当苦労することだろう。でも。


「ブランが復讐に来ることはないの? ……その、女の子たちの……復讐に……」


「ないと思う」


 またきっぱりと断言されてしまった。どうしてそんなにはっきりないって言えるんだろう。だってよくあるじゃない。殺された大切な人や仲間のために復讐するっていう物語が。物語じゃなかったとしても、よくあることだと思う。それなのにどうしてないって言えるのだろう。


「復讐するつもりならオレとホノカを捕まえた後もご主人サマやサンダーを追うはずだよ。そうじゃなくて、オレとホノカを捕まえたら満足して追っ手を放って来なかったらしいから。人手が足りなかったわけでもないと思う。そもそも復讐しようなんて感情がないんじゃないかな」


「どうしてそう言えるの? 誰だって大切な人たちが殺されたら復讐しようって思うんじゃないの? そこまでいかないにしても、何かしらありそうなのに」


「さぁね。人間だったらそうかもしれないけど、吸血鬼はその辺り薄情なんだよ。特に王サマは。赤の王は死んじゃったものは仕方ないって割り切ってるんじゃないかな。吸血鬼ってさ、そういうところあるんだよね。執着しないっていうか」


「そんなことって……」


 そんなことってあるの? 吸血鬼ってどうしようもない怒りを抑えて割り切ることができるの? どんなに理不尽なことも、悲しいこともまるで無かったみたいに振る舞えるの?


「そこが吸血鬼と人間の大きな違いなのかもしれない。オレは元人間だけど、何となく、意識が人間の意識とは変わってる気がするんだ。感情の起伏が激しいんだよね。すぐカッとなって手も出ちゃうんだけど、冷めるのもすぐなんだよ。情っていうのもそんなにない気がする。ま、オレの場合は元々薄情なのかもしれなくて……そういう人間ばかりが血に適合して吸血鬼になってるのかもしれないけど」


 微笑んだレオの表情はどこか寂しそうに見えて、胸が痛くなった。


「レオは薄情なんかじゃないよ。だって、こうしてアタシを助けに来てくれたんだから。アタシ、嬉しかった。レオが来てくれて良かったって、心の底から思ったの。こういうことが出来るレオが、薄情なわけないよ」


 レオはくすりと笑った。


「ほーんと、ホノカはお人よしだね。こうやって恩売っといて、いつか大きなお返ししてもらおーとか思ってるオレなんかに騙されちゃってさ」


 口を手で隠し、にししと笑ってみせるレオ。


「そんなこと考えてるの!? アタシ何も返せないけど!?」


 焦って返すと、レオは目を細めた。


「冗談。安心して。ホノカは黙ってオレに助けられてなよ。これはお返しなんだから」


「お返し? 何の?」


 アタシには思い当たる節がない。アタシ、レオにお返ししてもらえるようなことをしただろうか? むしろお返ししなきゃいけない気がするのだけれど。


「何でもないよ。ホノカはさ、ずぅっと、そうやって単純バカでいるんだよ。……ちゃんとした吸血鬼になっても、そういうホノカでいてほしいな」


 またバカって言われた! そればっかりが頭にきて、アタシはむっとして言い返した。


「単純バカは余計でしょ!? 直さなきゃいけないとこだと思うんだけど!?」


「直せるものなら直してみなよ。しょーがないから、ホノカの単純バカが直るまで見届けてあげる」


「また言ったな!? 絶対見返してやる!!」


 アタシが宣戦布告すると、レオは期待してるよと言って手をひらひらさせた。アタシの頭が悪いところは一生直らないとでも思っているんだな。そんな態度をとられたら、こっちだって黙っちゃいられない。絶対見返してやる! 手始めにレオより先にアイゼンバーグを見つけてやるんだから!!


 と息巻いたのは良かったが、この日の収穫はなかった。


 暮れ始めからレオと二人で街を駆けずり回ったが、彼の姿はおろか、この辺りにいた形跡さえ見つけることが出来なかった。もちろん彼を追いかけているであろう吸血鬼たちの姿もだ。


 今はもう完全に夜が明けて太陽が姿を現している。吸血鬼の王様であるアイゼンバーグは陽に当たると灰になってしまうため、どこか安全な場所で寝ているはずだ。寝ている彼を探しても良いが、レオ曰く吸血鬼は眠っていると全く動かず気配もなくなるので見つけるのは動いている時の方が良いとのことだった。というわけで、アタシたちは一旦お屋敷に戻って作戦会議をすることにした。


「うーん。王の手前、アイツが嘘を吐いているとは思えないしなぁ。もしかしたら、見当違いのところを探している間にもっとずっと遠くへ行っちゃったのかも」


 レオは鉄格子の門を開けながら漏らした。


「そうかも。夜通し駆け回って街中を探したのにアイゼンバーグもその他の吸血鬼たちもいなかったから」


 吸血鬼の良いところは夜通し街中を駆け回っても疲れないことだ。それに眠くもならないし、お腹も空かない。初めて吸血鬼で良かったと思った。


「だったらオレたちも移動しないとねー。それには青の王たちがどっちに行ったかくらい把握しないといけないんだけど、手がかり一つ見つからなかったからなぁ」


 ううんと唸りながらレオとアタシは庭を横切り、お屋敷の扉の前まで来た。レオはいつも扉を開けてアタシを先に入れてくれる。今回も先にレオが扉を開けようと手を伸ばした瞬間、背中がピリリとして中から扉が押し開けられた。


「!」


 アタシとレオはビックリして後ずさった。レオはアタシを庇うように前に出て手を広げてくれる。

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