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B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第2章 B×B×Vampire

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Hello×Yellow×Vampire02


「協力って、サンダーさんに食べられろってことですか!?」


「少し血を舐めさせてもらうだけで事足りるだろう」


「それって吸血鬼的には食べるってことじゃないですか!」


 サンダーさんの言った通り味見じゃないか! 例えではない本物の味見! 嫌だ! アタシは食べ物じゃない! 吸血鬼もどきになっても吸血鬼に食べ物扱いされるなんて最悪だ!


「嫌です! 拒否します! 噛まれるのは嫌!!」


 吸血鬼の牙に皮膚を裂かれて血を吸われる感覚は今でも覚えている。最悪だった。怖かった。気持ちが悪かった。またあの感覚を味わわなきゃいけないなんて冗談じゃない! それにサンダーさんの目が本気で怖い! 逃げるな、言うことを聞け、と訴えてくるのだ。表情はいつもと同じでにこやかな分、本気の目が際立っている。


「……ねぇご主人サマ。なんでホノカの血を味見するの?」


 さりげなくレオがアタシの後ろに回り、サンダーさんの手を叩いた。するとサンダーさんは叩かれた方の手を下げてくれた。ありがとうレオ! もう片方の手は肩に置かれたままで、さっきより力が増した気がするけどよしとしよう!


「ホノカ君が何の吸血鬼かの仮説を確かなものにするためだ。そのために彼女の血を我々の舌で確かめてみなければならないと判断したのだよ」


 それは血で分かるものなの?


「ふぅん。それってサンダーじゃなくても良いんじゃない? オレでも良いよね? 味の感想言えば良いんでしょ? ホノカ、サンダーにビビってるからこのままだと無理矢理やらないと確かめられないんじゃない? ご主人サマ、無理矢理は嫌いでしょ?」


 ちらりとアタシを見るレオ。待てよ。ちょっとおかしなことになってきたぞ。


「レオの言う通りだ。私はどんなことであれ、同意の得られないことはしたくない」


 フェリックスさんは頷いた。


「ホノカ君がサンダージャックではなくレオになら許すと言うのなら、レオに役を代わってもらおう。しかし、これには多少のリスクが伴うことを先に断っておく。他の吸血鬼の血を取り込むと多かれ少なかれ身体に悪影響が出るのだ」


「OK。じゃ、あとはホノカの説得だね」


「えっ」


 全然OKじゃない。思わず声が漏れてしまった。だって、え? レオがアタシの血を吸うの? レオであったとしても嫌なものは嫌なんだけど。


 レオが金色の目をアタシに向けてきた。


「アタシ、レオでも嫌だからね!」


 片手で拳を作って素早く二度突き出してみた。いつでも殴ってやるという合図だ。アタシの姿が滑稽だったのかレオはふふ、と優しい笑みをこぼし、アタシの右手首を掴んでゆっくりと自分の方へ引き寄せた。


「そんなこと言わずに良いって言ってよ。オレにホノカの味見をさせて?」


 アタシの指を自分の唇に軽く押しつける。唇が薄く開いて指を唇に挟んだ。


 金色の瞳がはちみつみたいにとろけて見える。声も随分と甘くて、その色気にひぇ、と小さな悲鳴が口の中で弾けた。レオってこんな蠱惑的なことも出来るの? ただの可愛いお兄さんだと思っていたのに。これがギャップってやつか。


「や、やだ。怖いのも痛いのも嫌だ……」


 でもアタシは負けない。強い心を持って対抗してやる。アタシは絶対レオに陥落しないぞ! という気持ちで掴まれた手を引いた。


「ちょっとだけ。ね、いいでしょ?」


 そしたら蠱惑的だったレオの表情が一変して子犬みたいに可愛くなった。とろけるはちみつだった瞳はキラキラ輝くビー玉みたいになって、アタシの手首も可愛く両手で掴んでいる。


 うっ。かわいい。ずるい。そんな顔でお願いされたら断れないじゃないか。


「ホントにちょっと? ちょっとだけな」


「やった」


 食い気味!


 レオはにこっと可愛く笑ってアタシの手を優しく握った。そうして人差し指に唇を近づけ……


「ホノカ、ちょろ」


 にやっと口の端を上げた。


「なっ!?」


 騙された! と思った時にはもう、アタシの人差し指の先はレオの歯に挟まれていた。


「っつ!」


 牙が皮膚を貫き、針で刺したような鋭い痛みが走った。けど、その痛みはすぐに和らいでいった。代わりに首の後ろがぞわぞわし始めた。


 柔らかい舌が水音を立てながら傷を堪能している。じゅる、じゅる、と果汁でも啜るようにレオはアタシの指を舐め、軽く吸ってから解放した。


「へぇ……。ホノカの血ってこんなにも美味しいんだ」


 目を細め、口の端だけで笑って、どこか熱を帯びたようなうっとりとした表情でレオは言った。


 背中から頭の先まで電気が走ったような感覚がした。男の人のこんな顔、見たことない。胸がぐっと鷲掴みにされたような感じもする。ドキドキしてきた。


「血を美味しいなんて思ったの初めて。ホノカって旨味成分とかなの?」


「アタシは調味料でもなーい!!」


 ころっと表情を変えて悪戯っぽく笑ったレオから手を奪い返した。


 ひどい! 調味料扱いしないでほしい!


「レオがそこまで強く感じるとは……。やはり。やはり、ホノカは……」


 サンダーさんがフェリックスさんを見る。フェリックスさんはゆっくりと頷いた。二人のアイコンタクトの意味が分からず、レオに視線を投げるとレオも肩を上げてよく分からないといったような素振りを見せた。


「ホノカ君。場所を変えて話がしたい。良いかね?」


「はい。構いません」


「結構。では、こちらへ」


 フェリックスさんは踵を返してゆっくり歩き出した。どうやら屋敷の奥に向かっているようだ。


 レオにアタシの血を味見させた結果はどうだったのだろうか。場所を変えてから説明してくれるのだろうか。


 アタシはフェリックスさんの三歩後ろくらいについて歩いた。サンダーさんとレオはぴったりアタシの隣についている。いつもはフェリックスさんの隣かその一歩後ろくらいを歩いているサンダーさんがアタシの隣にいる。それもアタシの左腕をがっしり掴んだ状態で。


 なんだろう……。さっきからサンダーさんはアタシを逃げられないようにしている。どうしてそんなことをするんだろう。不安だ。庭でアタシが怪我をした時のサンダーさんもおかしかった。とてつもなく驚いて、すぐ逃げるように屋敷へ入っていってしまったから。


「ここは……」


 移動し始めて数分も経たないうちにフェリックスさんは見知った扉の前で歩みを止めた。


 ダークブラウンの両開きの扉。これはハイネグリフが眠っている部屋の扉だ。


 どくんと心臓が大きく跳ねた。


 この部屋で話をするのか? ハイネグリフはまだ目覚めていないはずなのに、一体全体どうして?

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