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B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第1章 Colorful×Vampire

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Bird×Cage×Vampire01

 恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい。アタシは恥ずかしさで死にそうになっていた。


「どうしてこんなものを着なきゃいけないの……!」


 アタシは身体を丸めて床に額をつけている。腕を身体の脇にぴったりくっつけ、極力身体をさらさないようにしている。甲羅に入ったカメのようだと自分で思った。


 こんな姿、誰にも見せたくないし見せられない。あんまりだ。そもそもこういうものはアタシのような女子が着るものではないのではないか。もっと似合う人がいたはずだろうに、服側も可哀想だ。なんたってこんな服を着なきゃいけなかったんだ。この服に着替えようと決心した自分を殴ってやりたい。なんで着ようと思ってしまったんだろうか。あのときのアタシは確実に正気ではなかった。思い返せばなんだか頭がぼーっとしていたような気がする。何も考えられなくて、ただ着替えるように言われて着替えた。そして入るように言われたところに入り、うずくまっている。


 あぁもうホントにどうしよう。恥ずかしすぎる!


「そんなに小さくなってどうしたの?」


 頭の上からブランが不思議そうな声をかけてくる。


「お気遣いなく! 放っておいてください!」


 アタシは床に額をつけたまま答えた。必死だった。ホントにホントに姿を見られたくなくて必死だった。


「可愛いお尻が見えているよ」


「ぎゃぁ見ないで!!」


 素早く身体を起こし、お尻に手を当てた。


 ブランが目の前にいた。


「ふふふ、可愛いよホノカ。とても似合っているよ」


 カッと顔に血が上ってきた。


「やめて!! 許して!!」


 両手で顔を覆った。恥ずかしくて死にそう。こんなもの似合うものか!!


 アタシが身に着けているのはネグリジェというものである。そう、あの、可愛い女の子にしか許されていないような作りの、生地のうっすいやつである。ホントにめちゃくちゃ生地が薄い。白のシースルーという際どいやつだ。胸の辺りと裾にはバラのレースがあしらってあり、細い紐で肩から吊ってある。パンツも白レースのフリフリ。胸はかろうじてレースで隠れているが、下には何もつけていない。もう一度繰り返す。下には何もつけていない! レースがなんとかアタシの胸を隠しているのである!


 死ぬ。死にそう。もういっそ殺してほしい。拷問だ。


「面白いな。ホノカみたいな子は初めてだ」


 そうでしょうよ! ネグリジェの似合わない一般庶民なんて会ったことないんだろう!! 王様だもんね! このお屋敷にいた女子はみんな可愛いか美人だったもの!!


「もっとホノカと近くなりたいよ。手を下げてこっちを見て。目を見て話してほしい」


 アタシは指の間からちらとブランを見た。ブランは銀の格子の向こうからアタシをじっと見つめていた。瞳が楽しそうに笑っている。唇の端が満足そうに上がっている。


 アタシを捕まえることに成功して満足しているんだ。


 アタシは籠の中にいる。人一人が寝転がってもまだ少し余るくらいの大きさの、大きな大きな丸い鳥籠の中だ。着替えた後、くりくりの金髪で赤い目の可愛い女吸血鬼メイドさんに入るように言われて自分から入りはしたのだが、入りたくはなかった。しかし、逆らえなかったのだ。メイドさんの純粋な殺意のこもった赤い目で睨まれていたら誰だって従うだろう。むしろあれだけの殺意をビシバシと浴びせられたにも関わらずこうして生きていられることが奇跡と言っても良いだろう。


 そういうわけでアタシは閉じ込められている。鳥籠の置いてある部屋には窓はなく、通気口だけがあって壁も床も白い。視界の中で銀の鳥籠と、ブランの黒いズボンと黒髪と赤い目だけが色を持っている。


 なんとかしてこの場所から逃げ出さなくてはならない。すごく恥ずかしくて死にそうだけど、それでずっと悩んでいられない。アタシは彼らの手を借りずに自力で彼らに合流しなければならないのだから。フェリックスさんとレオ、それからサンダーさんがどうなっているのかも気になる。無事でいてくれることを願うばかりだが……。


「アタシがブランの目を見て話したら、ここから出してくれますか?」


「そうだね。出してあげても良いよ」


 にっこり、余裕の笑みである。ホントに出してくれるとは思えないが、顔を隠して話していたらこちらが優位になることはない。まぁ鳥籠に入れられている時点でアタシが優位になることはないのだろうが、少しでも付け入る隙を見せてはいけない気がするのでここはなんとか踏ん張らねばならない。


「じゃ、ちゃんと目を見て話します」


 顔から手を離し、ついでに立ち上がってブランを見た。


 目線が同じだ。鳥籠は床よりも底を上げてあるので、実際はブランの方がアタシより頭一つ分くらい大きいのだろう。


「礼儀正しいね。本当のホノカは僕の目を見て話してくれる良い子のようだ。フェリックスが入れ知恵したんだろう。フェリックスは余計なことをしてくれたものだ」


 ふぅと小さく息を吐いてみせるブラン。すると甘い香りが漂ってきて、アタシは思わず顔をしかめた。良い匂い、なんて思ってしまった。


「まぁ良い。今は彼のことよりもホノカとの時間を優先させよう。ホノカ、僕はホノカに聞きたいことがたくさんあるんだ。ホノカの主人のこと、それからどんな血が好きなのかということ。もっともっとたくさんのことを。夜通し話しても足りないくらい、僕はホノカのことが聞きたい」


 すごく魅力的な声。綺麗な顔が綺麗に笑っている。吸い込まれてしまいそうなくらい綺麗な、宝石のような赤い瞳がアタシを映している。


 ドクンドクンと心臓がうるさくなってきた。頭の中がぼーっとしてくる。


「まず聞きたいのは、単純なことだよ」


 くすり、とブランが笑った音がした。


「ホノカは僕のことが好きかな? 僕はホノカのことが好きだよ」


 アタシは口を開いた。


「アタシは……好き……じゃないです」


 ブランは驚いたような顔をした。真っ赤な目を大きくしてアタシを見ている。


 好かれていると思っていたのか? アタシは首を傾げた。


 ブランは自分に自信があって当然アタシにも好かれていると思っていたんだろうけど、残念だったな。顔が綺麗だし声も良いし時々ぼーっとしてしまうくらい魅力的なのは認めるけど、だからといって好きというわけではない。ケーキでも何でも、見目が良ければ自分好みというわけではない。結局見た目はそこそこでも味が美味しいケーキを買ったりするのだから、結局は中身なのだ。ブランは決して中身が魅力的ではないと断言できないけど、むしろ魅力的な部類なんだろうけど、残念ながらアタシの好みではなかった。


 だってブランが喋ると全身が痒くなってくる気がするんだもの!


「好きじゃない? そうか……こんなこと、初めてだ」


 ブランは唇に手を当てて考え始めた。なんだか思ったよりダメージを与えることに成功したらしい。やった! なんとかなるかもしれない!


「僕は今まで女性に好きじゃないと言われたことがない。別種の吸血鬼にだって僕は好かれるんだ。女性は僕のことを拒絶出来ない。おかしいな。ホノカは女の子なのに。こんなこと、初めてだ」


 なんかちょっと暗にアタシは女じゃないと言われているようでムカッときた。


「みんながみんなブランのことを好きなわけじゃないんです。残念でしたね」


 ふんっと鼻を鳴らして言ってやった。ざまあみろ、そんな気持ちだった。しかしすぐにアタシは後悔させられることになった。


「え!?」


 ぼろぼろぼろっとブランの両の目から大粒の涙が零れたのだ。アタシはぎょっとした。


 な、泣いた!? アタシ泣かした!? そんなに強く言ってないのに!?


「な、泣かないでくださいよ! 何で泣くんですか!?」


「女の子にそんなことを言われたのは初めてで……」


 ぼろぼろ涙は零れ続ける。


 うそでしょ。そんな、だってホントに悪口らしい悪口でもないのに。今まで言われたことないの? これっぽっちも? この人どれだけ愛されて育ったの?

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