恋と涙と後悔と……。 ――砂漠の試練1――
【ミキト 芸術街の市場】
あの後、討伐屋で手続きを済ませた後、砂漠へ行くための、準備をしていた――――。
市場にて、砂漠へ行く手がかりは、あらかた掴めたが、なんせ道具があまりない……。
一応、手分けしてみたが、大方は食品だったり、芸をするための小道具など……、肝心のお目当ては――――、なかった……。
みんな揃って、ため息をつく……。
「てか、こんなにも、砂漠用品が無いなんて……」
ついにぼやく、イオ。
「まぁ、どっちかというと、わざわざ砂漠まで行く人なんて、あまりいなかったかもしれない……。
だいたい、観光といえば、芸術街だからね……」
ロミは、ある程度だが、この地域のことはわかっている――――、つもりだったみたい……。
だが、砂漠のことまでは、知らなかったようだ……。
ボクも、イメージ的に、『過酷』だっていうのはわかるが、あまりにも道具が揃わなさすぎて、
途方に暮れそうだ。
「――おや、お兄さんたち、砂漠に行くのかい?」
ひとりのおじさんが、ボクらに話しかけてくれたようだ……。
振り向くと、『こんなところに!?』と、思えるようなお店だった。
|(もちろん失礼だが、市場の中にあった。)
ボクいろんな心境が混ざりすぎて、慌てて返事する。
「あの――、
実は討伐依頼をさっき、引き受けて――、
アーシュファへ行くことになったのです……」
簡単にだが、砂漠行く経緯を、説明した。
すると、おじさんは笑顔で、首をうんうんと、うなずいてみせた。
「お~、そうかそうか。
この辺りはなぁ、砂漠の道具は、うちでしか扱ってないんだ」
「「「「「えっ!?」」」」」
若干、予感はしてはいたが――、イオは思わず『どうして!?』と訊いてしまった……!
「……実は調査隊しか、需要なくてね。
かろうじて、うちが調査隊と公式で取引しているもんだ」
イオの質問に対して、おじさんはため息をつきながら、そう答えた。
「でも――、そこだけでも取り扱ってくれているなんて、ボクからしたら――、
まさに『藁にもすがる』想いですよ……!」
ボクは、『まさしく、それを求めていた』というふうに、褒めるところは褒めた。
なぜなら――、ヘタしたらこのままだと、無駄足に終わりかねない事態だったし、
最悪の場合、せっかくロミのために受けた依頼も、キャンセルせざるを得ない状況になってしまうだろう……。
「そう言ってくれるだけでも、嬉しいよ」
おじさんは、素直に喜んでくれて、笑顔を見せた。
「さて、アーシュファに行くにはだが――」
おじさんはアーシュファへの行き方を、わかりやすく説明してくれた。
まず、アーシュファは砂漠地帯なので、とんでもない暑さと日差しとの戦いとなるため、ターバンや長めの服装が主となる。
さらに、そこから歩くとなると、熱射病などで倒れかねないので、必ず大量の水とキャメル|(ボクの前の世界の言葉でいう、『ラクダ』)を用意する。
――てか、いるんだ……、ラクダ……!? ――
しかも、討伐ということもあり、かつロミもいるということもあって、ラクダの|(『キャメル』と言うのも、めんどくさくなった)レンタル料は無料になった……!
「えっ、いいんですか!?」
ボクは、思わず驚いてしまったし、ドゥルゲやイオたちといった、ボクらの仲間までも、驚いてしまった……!
「いや~、ベルメルのアイドルである、ロミちゃんが目の前にいるからね……。
僕は、そのロミちゃんの、ファンなんだ……!」
――――ロミパワー、恐るべし……! ――――
ボクに限らず、ドゥルゲやイオ、アルトが揃って、同じ気持ちになってしまったのは、気のせいだろうか……?
なにはともあれ、ここではロミが有名なのは、周知の通りだし、そのおかげで、レンタル代や砂漠の必需品も安く済ませくれるとのことだし、『一石何鳥』やら……|(もはや、数えてはいない)。
「ありがとうございます!」
ボクがお礼を言うと、おじさんはボクらにしか、わからなようなひそひそ声で、こう言った……。
「……調査隊には、ナイショだよ?」
ボクらは、ただただ苦笑いするしかなかったけど、これで旅の準備はひとまず揃い、あとは水筒にありったけの水を汲むだけとなった。
だが、さっきの店までたどり着くのに、相当な時間を食ってしまったため、今日は一旦、宿で泊まることになった……。
【ミキト 宿屋内】
宿の手続きは、ドゥルゲが済ませてくれた。
でも本来なら、ベルメルの拠点に一度戻って、そこで泊まるのも、手だったかもしれないと、ふと思ってしまったが、ロミは首を横に振り、ちょっと申し訳なさそうな顔で、こう言った……。
「――――ううん、いいの。
もし、あたしがまた戻ってしまったら、『甘え』がどんどん膨らんでしまって……、
一度決断した『勇気』も、自分の中で……、薄れてしまうんじゃないかって、怖くなっちゃうんだ……。
たしかに、お金的には節約できるけど……、あたし的には、踏ん切りがつかなくなっちゃうから――、
宿屋に泊まることに、したの」
言われてみれば、そうかもしれない……。
だって、あんなに盛大なお別れをしたのだから……。
ならば、その勇気を、ボクは応援しなきゃ……!
「わかった、余計な心配させて、ごめんね」
ボクがそう言うと、ロミはまた首を横に振り、笑顔で返した。
「いいのよ、ありがとう。
さて、明日はキツーイ、砂漠の横断だから、うんと身体を休めなきゃ」
ロミは、両手で背伸びをし、腰掛けていたベッドから立ち上がった。
「じゃあ、ボクは部屋に戻るね、おやすみ」
ボクも立ち上がり、そう言ってロミの部屋のドアを開けた。
「うん、おやすみ。
がんばろうね……!」
ロミが手を振る様子を見送りながら、ボクはドアを締めた……。
明日は、灼熱の砂漠地帯を、歩いて遺跡まで行かなきゃいけない……。
そこにたどり着いた先の出来事が、まさかあんなふうになるなんて――、
このときは、まだ……、知る由もない……。
『キミも……、いつかわかるときが、来るよ』
また、ボクに似た声が、意味不明な事を、語りかけた――――。




