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人間になりたかった、猫

【とある猫の話】

  僕はもともと、人間に飼われていました。

 窓辺でそっと街の様子を見たり、御主人様に可愛がれたりと……、そんな毎日が幸せでした。

  ところがある日、御主人様がとある事情で、遠くへ引っ越す事になり、僕は泣く泣く、お別れとなったのです……。

  人間の都合で、『ペットは飼えない』だとか、『うるさいから、あっち行け』だとか、なんでここまで僕らを、蔑むんだろう……?

 いろいろ、街の中を彷徨い続けるも、疑問はつのるばかり……。

  『黒猫は不吉だ』とか言われたけど、僕は完全に真っ黒な猫じゃないのに……。

  左耳だけが白くて、黒ぶちがあるだけだし、そもそも、僕は自分のお母さんも知らないし……。

  あの時、かつての御主人様に助けられ、そこからずーっと暮らしてきた。


 ――でも、人間って、こんなにもあっさり裏切られるなんて……。


  それからなんだかんだ考えて、また街を彷徨い続けて……、そうやっていくうちに、ある答えが浮かんだのです……。


 ――僕も人間になって、人間の気持ちが分かれば、猫やみんなが仲良く暮らせるんじゃないか……?――

 って。


  そう思えたら、なんだか急に――――、

 荷が軽くなって、寒空の下、静かに眠りについたんだ。

  そう、この時僕はまだ、『死んでいる』ということがわからず、そのまま霊界へ行ってたんだ……。

 


 

  気がついたら、僕は人間になっていた。

 そして、目の前には、霊界の番人。

 いろいろと質問され、さらに僕の人生の映像(?)のようなものを見せられた。

「君はここにいるというとは、『死んだ』ということになる。

 これから、霊界で修行をし、生まれ変わる準備をするのだ」


  生まれ変わる……?

 そうだ、僕は人間になりたかったんだ!


「あの……」

「なんだ?」

「僕……、人間になりたいんです!」

「この霊界では、すでに人間に――」

「違うんです!

 僕がもともといた、世界で人間として、生きていきたいんです!」

「だから、霊界で――」

「お願いします!!」

  僕は番人の言葉を押し切り、頭を下げた。

  あの時は、()()()()()『人間の感情』が知りたくて、本当に必死だった。

 普通なら、番人の言葉通りに――、

 修行をして、生まれ変わるような状態に持っていけばいいのに、それを僕はとにかく、今すぐなりたくて、何にも考えてなかった。

  「そうか、そんなになりたいか……。

 だが、1度は()()()()()()、すぐに人間になるかわりに、それなりの代償を背負ってもらうぞ」

「はい、ありがとうございます!」


  あの時の僕は、なんてバカ正直だったんだろう……?

 その『代償』というものが、どんなに恐ろしいものか、その事を思い返せば、ひどく後悔した……。




  僕は何の修行もせず、人間として、生まれ変われた。

  その部分まではよかった……。


 だが、生後数日経っても、一向に光や景色が見えない……。

  右を見ようとも、左を見ようとも、はてまたは上や下を見ようとも、黒、黒、黒……。

  僕の母親になった人は、「ねぇ、この子……、私が手を振ったりしても、全然目の焦点が合ってないんだけど?」

 と言って、旦那さん(僕の父親になった人)に相談し始め、徐々に泣きわめきだした……。

  その翌日、医者が僕を診て、診断された結果……、『失明』だった。


  ――これがあの時言っていた、『代償』……?

 

 そう、だよね……。 僕が無理言って、生まれ変わったんだもの。

  こんなに、僕の両親になった人に対して、『ごめんなさい』って、何度も思えて、しかも両親の顔や暮らしも、何にも見えないなんて……、すごく(つら)かった。


  でも、それだけでは済まされなかった。

 目も見えないまま、それなりに成長した僕は、今度はベッド(だと思う)から、ほとんど離れる事ができないぐらいの重い病にかかってしまった……。

  目が見えない『代償』だけでなく、重い病という、とても苦しくて、さらなる『代償』までも背負ってしまい、おまけにこの街は、そうそう医療が発達していないせいで、まるで生き地獄を彷徨っているような、とても思い出したくない辛さを味わい……、あえなく、短い一生を閉じてしまった……。


 ――もっと……、ちゃんと、番人の言葉通りにすればよかった――


  これが、今までの自業自得であり、後悔でもあるんです……。





  霊界の番人に会ったら、番人に謝ろう。

そう思いながら涙を流し、霊界の中を彷徨っていた……。

  すると、いつの間にか、いつもと違う場所にたどり着いていた。

霊界のようで――、だけど、どこか違う……。


 辺りを見渡すと、光の玉があちこちに漂い始め、最終的に僕の目の前に集まった。

  そこから現れたのは、霊界の番人ではなく、女の人……?

「あ、あなたは……?」

「私はリシャス。

 あなたが()()の言う事を聞かず、人間になった子ね?」

「ご、ごめんなさい!

  僕……、どうしても人間になりたくて……、それに――」

「もういい、みなまで言わなくても。

 全部番人から、聞いているわ。

 あの御方、私たち神々の中では、最高神なのよ。

  それなのに、言う事を聞かずに突っ走って、こんなに後悔しちゃって――、

 挙句(あげく)に反省しようにも、酷く傷つきすぎて、ここに来ちゃったものね……」


  なんだか……、若干自分のことを、もっと責めたくなってきた……。


「よーく、考えてみなさい?

 もともとは人だった魂、あらゆる罪によっては、人ではなくなるのも、事実」


  つ、罪……?

 ――そう言えば、番人も『()()()()()()()()()』とか言っていたような……。


「そう、『罪』。

 一言では簡単に言えるけど、とても奥深く、

 その重さでその人々をどんどん蝕んでいくの。

 でもそれは結局……、自分が()いた『種』でもあるの。

  人間界ではさぞかし、簡単な事で償えるかもしれないけど、霊界(ここ)じゃ、そうはいかない。

 ――だって、今まで蒔いた『種』を、今度は自分で刈り取る場所でもあるの。

 ま、それ以上はめんどくさい話になるから、ここまでにしといて――、

 本題はあなたの話」

「え……?」


  『本題』……って……、いったい……?


「あなたは、このまま霊界に行かせると、間違いなく地獄に堕ちる、理由はわかるでしょ?

 ――最高神の言う事を聞かなかったから。

 でも、あなたは最初に死んだ時、ある人にとても大切にされてきたという事、そこは覚えているかしら?」


  えっ? そういや、その時の事、あまり覚えてないし、自分の名前も……、なぜか思い出せない。


「そう思ってね、その記憶を少し、見せてあげる。

 私の眼をじーっと、見つめてみて」

  僕は言われた通りに、リシャスの眼を見つめると、そこからすーっと引き込まれるように、あの時の記憶が、映像のように蘇ってきた。




  寒い冬、ちょうど雪が降っていた夜。

 人通りが少ない裏路地に、身寄りのない野良猫(のらねこ)達が集まる。

  かつての御主人様と別れてから数ヶ月――、僕もここを拠点にして、生活をしていた。

  ――というか、ここにたどり着いた時にはもう、既に答えが見つかっていて、あれからずっと食べるものも何もなく、疲れ果てていた。


  ――人間になればきっと、それなりに気持ちがわかればいいな……。


 そう思って、眠りについた時にはもう、重荷が軽くなっていた…。

――そこまでは、なんとなく覚えている。


「アルト〜〜ッ!!」


  うん??

 誰かの声が駆け寄ってくる……、どこか懐かしい声……。


「アルト〜!

 アルト、アルト……、はぁっ、はぁっ、はぁ…………。

 ごめん、……っ、……っ、こんな形で再会するなんて、あのとき僕がちゃんと言わなかったばっかりに……!」


  えっ、ご、御主人様……!?


「ぅ、うぅ……っ、ごめん……、ごめんよ、全部……、全部、僕が……、僕が悪いんだ……!!

 小さくて……、可哀想なアルトを、あの時拾って、結局――」

  御主人様が、僕の亡き骸を手に抱え、泣きながら懺悔を繰り返している。

  『ちゃんと、育てればよかった』とか、『見捨てたのは自分だ』とか、『こんなんじゃ、動物殺しだ』など、僕が聞けば聞くほど、どんどん涙が溢れてくる……。


  だって、僕も……、御主人様も……、お互い……、優しい者同士なんだから……。



  記憶の映像は、ここで終わってしまった。

「どう、あなたが()ってしまった後の、エピソードは?」

  聞かれた事に答えようするが、脚の力が抜けてて、嗚咽がどうしても止められない。

 それをリシャスはそっと頭をなでる……。

「『アルト』、いい名前を貰ったのね。

 母親も知らない、孤児(みなしご)のあなたは、とても優しい人に拾われた。

 でも、その人はやりたい事が見つかり、それを成し遂げようとして、引越しせざるを得なかった。


 その時はよかった……。


だけど昔の、2人の暮らしが楽しかった時の記憶は、やはり(よみがえ)り、ようやく気づいて連れ戻そうとしたが、『時はすでに遅し』……、だった――。

 そんなとこかな」


  リシャスが全部説明してくれたから、僕にも十分、納得はいった。

「この霊界の番人、私の立場だと、とてもお偉いさまだけど――、

 この御方はね、飼い主の懺悔を聴き()げ、あなたを私に預けてくれたの」


  ――え……っ?


「本当なら、あっさり地獄行きのところを、ちょっとだけ、猶予(ゆうよ)を与えてくれたのよ。」

「そ、それは……、ホントなのですか!?」

  僕は思わず、身を乗り出す。

「私が嘘言って、どうするの?

 ま、とりあえず、『私が作った世界で、その罪を償ってもらう』という、条件での猶予だけど、あなたがもし、ちゃんとやっていなくて、私を見かねさせたら――、

 また動物おろか、(みにく)()()へ真っ逆さまだからね……!」

「えっ……、そんな……。

 じゃあ、どうすれば……?」

「償える場所は、ちゃんと用意してるわ」

  そう言って、光がぽつぽつある世界に(あらわ)したのは、どこかの……、教会……?

「さて、この世界でも、『アルト』という名前は、そのまましておくわ。

 それでね、アルト。

  この教会は、回復術を学ぶ人達が集まるのと他に、身寄りのない子やとても罪が重くて、そのまま転生していった子に、修行の場としても、設けているの。

 そこで、いっぱい修行をし、ヒーラーとして活躍すれば、ちゃんとした人間になれるわよ。

  でも今は盲目のままだから、我慢してね」

「え、でも……」


  ――それじゃぁ、生活するのが、不便なんじゃあ……?


「大丈夫、私がそんなことならないように、肉体ではない、『心眼』という、心の眼をつけてあげる」

  リシャスは、僕の心臓の辺りに手をかざして、自分の魔力を放つ。

「肉体での眼は、滅んでしまってるけど、この心眼なら、同じような役割を果たしてくれるわ。

  アルト、あなたはとても優しいから……、

 この世界でもきっと、やっていけるわ。

 その優しい心を……、忘れないでね」


 ――『アルト・リーヴェス』――


  僕の新しい名前|(?)を告げた瞬間、リシャスは瞬時に光で消えるのと同時に、僕が猫の時代の耳に似せたフードがつながった、アイボリー系のローブを僕の身に纏っていき、僕の黒髪に少し、シルバーのメッシュがかかった髪質になり、インペリアルトパーズの色をした眼に変わり、でも瞳はほとんど猫と同じような感覚だけど、心眼でなんとか見えてる。

 そして、木の棒を素材としたロッドをいつの間にか、右手に持っていた。


  真っ白な光が一瞬で抜けた瞬間、リシャスといた世界から、急に自然の山々に囲まれた、教会の前に来ていた。

  辺りを見回していると、1人のシスターがやってきた。

「あら?

 あなたは、リシャス様に導かれたものですね。」

  いきなり訊かれて、何がなんだかわからずに、ぼーっとしていると――。

「リシャス様に与えられた、『あなたのお名前』は、何ですか?」

  そう言われたので、そのまま、

「はい、アルト・リーヴェスです!」

 と名乗った。

「はい、お待ちしてました。

 リシャス様から、聞いておりますよ。

  さぁ、こちらへ」

  シスターは笑顔で快く、僕を教会の中へ案内してくれた……。





【ミキト レイセル教会道前】

  定期船での渡航は、悪くない心地よさだった。

  ボクと、ドゥルゲ、イオ|(中にレダがいるけどね)の3人は、船の中で1晩過ごしてから、レイセルに着いた。

  ボクは背伸びしながら、ドゥルゲにつぶやいた。

「けっこう、長かったね」

「まぁ、自然の国・レイセルだから、集落ばっかりで、船が止められるところはここしかないのさ。

 それに『夜間はエリア外、出入り禁止』という、ルールがあるらしいから、余計だな」

「「……そうなんだ」」

  初めてのボクと、おそらく情報は掴んでいてもおかしくない、イオと共に、共感を得るとは……。

「とはいえ、俺も初めてだな。

 旅の人しか、()()()情報得られないし、しかもよっぽど用がなかったら、来ることは無いぐらい、辺境の国だし」

「え、じゃあ、ぜーんぶ――、

 旅人の情報!?」

「そうだよ。

 あと、商人とかね」

「「……。」」

  もはや、言葉が出ず、ア然としてしまった。

「そんなのどうだっていいだろ?

 ほら、行こうぜ」


  ――とはいえ、『ドゥルゲは何でも知っている人』と過信していた自分にも、悪い部分があったなと、ボクは反省する……。


  さっき言っていた、旅人や商人の情報によると、定期船の港から続いている教会道は、大きく2つに分かれてて、まっすぐ、そのまま行けば、ボクらの目的地である『レイセル大修道院』で、途中から左手の道に行けば、集落である『ルナバ』や『エイレ』と続いているらしい。

 集落の住人達は簡単に言えば、『教会のお世話役』であり、『のどかな農業生活をしたい』という人がいれば、『1度は教会を卒業したけど、この地が好きになり、そのまま永住した』……などなど、それぞれ思い思いの人がいるとか。

  そんな話を、ドゥルゲが歩きながら、教えてくれた。

「ちなみに、俺たちみたいな人が教会へ入るには、紹介状とか、リシャス様が『そこへ行け』と言われない限り、中には入れないらしい。

 ――ま、ヒーラー志願者は自分で志願書を書いて、持ってくるけど」

「へえー、そうなんだ……。

 よっぽど、厳しいのかな?」

ボクがイメージしながら訊くと、ドゥルゲが首を傾げながら、こう言った。

「――どうだか?」

  『いずれ、わかるんじゃねえの?』なんて、継ぎ足しの言葉を言われ、

さらに歩いていると、1人のシスターがこちらを見ている。

  ボクらがその人の前で立ち止まると、シスターは話しかけてきた。

「こんにちは。

 今日はどうなされたのですか?」

 いきなりシスターから、そんなふうに訊かれてしまうと、ボクもなんだか、ポカーンとしてしまいそう…。

  それを見て、ドゥルゲがすかさず、前に出た。

「いきなり、物騒な姿ですみません。

 我々はフィリダ国王から――、

『こちらに優秀なヒーラーを探してはどうだ』、とのお勧めを頂きまして、訪問しに来たのです」

そう言うと、さっきまで『ボクらを警戒していそうな顔』をしていたシスターが、急に笑顔で言った。

「そうだったのですね?

 ちょうど、国王さまの紹介状が届いていたところですよ。

 さあ、こちらへ」




【ミキト レイセル大修道院内 入口】

「うわぁー」

「すっげー!

 オレ、本しか読んだことないけど、けっこう広いんだな!

 〈こんなに広いと、いろんなヒーラーさんに会えるんだね!〉って、妹もはしゃいでるぜ!」

 名前が『大修道院』と付くだけあって、内装もかなり広々としていた。

「ここでは、ヒーラーさんを目指す方や身寄りのない子供達など、様々な方が暮らしておりますので」

「でも、そういや――、

 なんで、シスターが外で待ち構えているんですか?」

  ボクが、素朴な疑問を訊こうとすると、ドゥルゲが『おい、コラ』と注意されたが、本人は笑顔で答えくれた。

「ここは、エイヴリーテで唯一の神聖な国ですので、商人とは言えども、すべての方にここをお通ししてからじゃないと、()()()()を取らせ頂いてます」

「「こ、こわー」」

  またもや、ボクとイオが、驚きおののく。


 ――ていうか、『追放措置』って……!?


「つまりだ、ここで物騒なことを起こして欲しくないから、夜はいかなる場合でも、出入り禁止だし――、

 『変な輩は()()()()で、お断り!』 っていうわけさ」

「はい、そのとおりです。

 ルールに従って頂かないと、集落の屈強な方がお仕置きしちゃいますからね?」

  ドゥルゲが解説してくれたのはいいけど、シスターさんから笑顔で出てくる言葉が、ものすごく怖い…。

  でも、疑問はわかった。


 ここの国は、大修道院が自治館のような役割を果たし、どんな人でも、シスターさんに必ず顔を出さなければいけない。

 もし、(よこしま)な人や事実を見かけたら、シスターさんの首から下げている笛で、集落の人達に知らせ、撃退してもらう。


 ――という、システムのようだ。

「ここは、目指す方と保護する方を優先に入れているが故、大概はか弱い者達ばかりです。

  だからこそ集落でも、自警団員を随時募集してますし、この世界中の商人には必ず、こちらのルールを伝えるよう、重々申しております。

 だからといって、()()()()()()も許しませんよ?

 ここの集落の方は、ちゃんと目利きができる、元商人も暮らしておりますので」


  自警団って……、そういやフィリダのお店でも、そんな募集チラシが貼ってあったな。

  ものすごく、審査が厳しいっていう、印象が強かったような……。


「まぁ、ここで立ち話も疲れるでしょうし……、食堂へご案内致します」




【ミキト レイセル大修道院内 食堂】

  食堂の中も、大人数でできるように、長い机やそれに合わせた椅子がズラリと並んでいた!

  シスターさんに案内されて、座ったボクらは、いよいよ本題に入る。

「さてと、私共の所へ来られた目的は、ヒーラーさんをお探しでしたね?」

  シスターさんから、話を切り出す。

「はい、ボクもヒーラーを探すのは初めてで、よくわからなくて、アレなんですけど……」

  シスターさんとしゃべる時、どうしても敬語になっちゃう……。

「ヒーラーさんは、すべてここから派遣させて頂いております。

 その術を学ぶ場所も、所属先の管理もここでしかありませんから。」

「――もし、何か問題があって、別れることになったら……?」

「御家族がいる場合は、そこに帰るか――、

 身寄りのない方は、ここで暮らしてもかまいませんし、集落への移住も許可しております。

  ただし、神聖な術をあまり悪用してほしくないので、こちらの許可なく、他へ所属を変えることは固く禁じております」

  「うう……、ヒーラーなるにも、けっこう厳しいんですね……。」

ボクは思わず、タジタジになる……。

「ヒーラーは、僧侶や司祭と同じ扱いですから」


  ――それでもなりたい人は、本当にすごいなぁ……。


「さて、話が逸れましたね。

 ミキトさんたちに、ご紹介できるヒーラーさんは、もう既にご用意しております。

 アルトさん、『アルト・リーヴェス』さん……!」

「――はーい!」

  向かい側の入口から、まるで完璧に合わせたかのように、シスターとその……、アルト、だっけ?

 その人たちが現れた……。


  猫耳のフードがものすごくインパクト強くて、それに眼がなんだか、そんなに焦点があってないような……、瞳がものすごく小さい……。

 だけど、普通に(まばた)きはするし……、若干杖|(か、ロッド?)をついても、ちゃんと堂々と歩いているし……。


「アルトさん、新しいメンバーの皆さんに、自己紹介をしてください」

メガネのシスターさんに促され、彼は自己紹介をし始める。

「はい、初めまして。

 僕は『アルト・リーヴェス』と申します。

  皆さんのお力になれるよう、がんばります!」


  ボクらを呆気にとられるような、インパクトが大っきい彼は――、

 (のち)に、新しいパーティメンバーの一員となるのであった……。



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