22 特別な贈り物
◇◇◇
「ピアラは上手くやってるようね」
「つまらないわ。からかってやろうと思っていたのに。あの無骨そうな国王が、ピアラなんかにああも夢中になるなんて」
二人の蜜月ぶりにすっかり毒気を抜かれた姉姫達は、つまらなそうに宴の準備を始めた。いくら美しい姉姫達でも、あれほど心を奪われた女がいる相手には、さすがに分が悪い。
下手にピアラを刺激して手ひどいしっぺ返しを食らうより、大人しく「愛する女の大切な姉君」としての歓待を受け入れるほうがマシだ。
けれど、セラフィラだけは、いつまでも悔しそうに爪を噛んでいた。
「セラフィラお姉さま。おやめなさいな。爪を噛んだら爪の形が悪くなるわよ?」
「うるさいわね!そんなこと分かっているわよ!」
苛立ちを隠そうともしないセラフィラを見て、肩をすくめる姉姫達。こうなると手に負えない。
仕方なく、セラフィラの機嫌を取るべく、数多持ってきた中でも、一際美しい刺繍を施されたドレスを差し出した。
「ほら、今日のために準備したとっておきのドレスにお着替えになったら?この真珠の素晴らしいこと!きっと会場中の殿方の視線を釘付けにするわ」
「そうよ。このドレスはセラフィラお姉さまにしか着こなせないわ」
「そんなものっ!……いえ、いいことを思いついたわ」
美しく整えられたドレスと宝飾品の入った箱をチラリと見たセラフィラは、思わずくすりと笑いを漏らした。
「ねぇ、そのドレス、ピアラにプレゼントしましょうよ。最高の贈り物でしょう?」
セラフィラの言葉に姉姫達は顔を見合わせる。
「でも、このデザインでは……」
言い淀む妹姫達の言葉を無視して、セラフィラはメイドを呼び付ける。
「このドレスは父王からピアラへと特別に贈られたもの。ぜひ今宵の宴で着るようにと伝えて頂戴」
「かしこまりました」
しずしずと箱を受け取るメイドを見て、意地悪く微笑むセラフィラ。
「……どうする?」
「受け取っても、あのドレスを着るとは限らないし……」
姉姫達は複雑な顔でその様子を見守っていた。
◇◇◇
「お父様から私にドレスが?」
恭しく差し出された箱を見て、ピアラは首を傾げる。
受け取った箱を開けて見ると、中には金糸で美しく刺繍が施された海のように深い青色のドレスと、見事な真珠の首飾りが入っていた。
「これは……見事だな」
「本当に。こんな立派な真珠は見たことがないわ。本当に、これを私に?」
「はい。ぜひ今宵の宴で身につけてほしいと仰ってました」
「そう……」
見事なドレスもさることながら、国宝と言ってもおかしくないほどの真珠。
ピアラは、父王の真意をつかめずにいた。
戸惑うピアラに、カイは優しく微笑みかける。
「もし気に入らないのなら、別のドレスを用意させるが?」
「──いえ、これを着るわ。せっかくの贈り物を無碍にしたと言われるのも鬱陶しいもの」
「そうか。きっと、似合う」
「うん。ありがとう」
蕩けるような顔で微笑むカイに、ピアラもまた笑顔で頷いた。




