令嬢はお茶会へ向かいます~令息と共に~
更新遅くなりました(-人-;)
宜しくお願いします。
修正していますが、お話の筋に変更はありません(´・ω・`)
―ふぅ、緊張してきましたわ…
サロンに到着した途端、心臓がドキドキして、体が固まってきた。
「ふー、はー」
ここで緊張していては話にならない。出来る限りリラックスしないと…
「シア、いつも通りで大丈夫」
レオが肩をポンポンと叩き、力づける様な笑顔で覗き込んでくる。と、一気に肩の力が抜けた。
―やっぱり、レオが居てくれて良かったのかもしれませんわね…
この笑顔があるだけで、こんなにも心強いのだから。
「それでは…ご準備は宜しいでしょうか」
その声に、さぁいよいよだと気持ちが高まる。ドアの前に立つベアトリス様の顔は、緊張の為か少し強ばって見えた。
「ベアトリス様」
彼女の震える手をぎゅっと握り、出来るだけ力強く見える様にと祈りながら笑顔で頷く。
為すべき事を致しましょう―
「えぇ…それでは、参りましょう」
微かな微笑みを浮かべ、前を向いたベアトリス様の顔からは、決意の様な色が見えた。
「失礼致します。ベアトリスでございます。只今戻りました」
部屋の中から、戻りの遅かった彼女を心配する声が聞こえてくる。
それはそうだ、予定よりかなり遅くなっただろうから…少し申し訳ない気分になる。
「遅くなり申し訳ございません、アリステア様、皆様。実は…お会い頂きたい方がございまして…」
その声を合図に、私とレオは部屋へと入った。
中の視線が、一斉に私達に集まる。
アリステア様はもちろんとして、予想外のレオの姿に、アリステア様の取り巻きである令嬢達も驚きの表情を浮かべている。が、直ぐに立ち上がると揃ってカーテシーを見せた。
「皆さま、どうぞ顔をお上げ下さいませ。突然の訪問申し訳ございません、アリステア様」
「アリステア様、僕からも謝罪を。突然の訪問の非礼をお詫び致します」
「えぇ…驚きましたわ、ミーシア様。それに、ザッカリー様も…」
謝罪する私達に、アリステア様もカーテシーを返された。
そのまま席に着くよう促される。私達が座ると直ぐに、アリステア様の合図を受けた侍女からお茶を出された。次々にお菓子も運ばれてくる。
―まるで何事も無かったかの様だわ…
私達がそつの無いもてなしを受けている間も、アリステア様はたおやかに微笑んで、凛とした姿で座っていた。
―あのお茶会の時と変わってらっしゃらないわね…
その姿は懐かしくもあり…私の中に微妙な気持ちを呼び起こした。
―わたくし達は友人だったかもしれないのね…
ゲームの世界で友人だった私達は、どんな風に過ごしていたのだろう。楽しくおしゃべりでもしていたのだろうか…
微妙な気持ちは一旦心にしまう。為すべき事をしなければ。
ふと、ベアトリス様達が祈る様な表情でこちらを見つめているのに気づいた。
明言はしなかったが、元々出来ることをするつもりだったのだ。分かっていると、そう気持ちを込めて頷く。
「もしかして…今日の事を知らなかったのは、わたくしだけ…なのかしら?」
今のやり取りを見ていたのだろう、戸惑った表情を浮かべるアリステア様に、ベアトリス様がパッと立ち上がり頭を下げた。
「申し訳ありません、アリステア様!わたくし達で相談してミーシア様をお呼びしたのです。もうどうすれば良いのか分からなくて…」
今まで堪えてきた気持ちが溢れたかの様に、彼女達は思いの丈を話し始めた。
最初は他愛もない噂だった。その内消えるだろうと無視していた。だが、次第に噂の内容が質の悪い物に変わっていく。男爵令嬢を池に突き落とそうとした、歩いている彼女を突飛ばし、怪我をさせたなど…自分達がどれだけ否定しようとも取り巻きの言う事などと、誰も信じない。
それどころか、嫉妬の挙げ句苛めを続けるアリステア様の共犯ではないか、と責められた。
何より、肝心の王子殿下がアリステア様を蔑ろにされている様にしか見えず…
いくら王子とはいえ、マッケンジー男爵令嬢と一緒にいる姿は、婚約者がいる男性のものとは思えない。
アリステア様が静観している間にも、噂は収まる所か事実として学園中に広まっていく。その勢い、熱に最近では恐怖さえ覚えていた。
今動かねば、何が起きるか分からない、そう思い詰めた上での行動だった。
「わたくし、父に話をしてみましたの…最近のクリストファー殿下のご様子について…」
「えぇ、わたくしもですわ…ですが、学園内の事であれば、子どものした事と見なされると。わたくし達がとやかく口に出すべきではないと叱られましたわ…」
「わ、わたくし…実は…ア、アリステア様のお側に侍るのは、控えた方が良いのではと、お父様にそう言われてっ…」
この場にいた全員が、その言葉に目を見開く。
「くそっ」
苦虫を噛み潰した様な顔をして、レオが宙を睨み付けていた。
「皆さん、どうか無理はなさらないで。わたくし達は貴族ですもの、家の為に行動するのは当然ですわ。各家の意思に則った行動をなさってね」
アリステア様っ…そう言って彼女達はすがり付く様に泣き出した。
「わたくしは、クリストファー殿下の婚約者として、その役目を全うするつもりですわ。何より…今回の事は、わたくしの努力が足りなかったのです」
少し青ざめた顔色でありながらも、微笑みを崩さずアリステア様は答えた。
―もう少し時間があると思っていましたのに…
ぐっと唇を噛みしめ、自分の想定が甘かったのかと思いを巡らせる。
断罪が決定的になるのは、男爵令嬢に対して命の危機と思われる行為が行われた時。
これから私が行動を共に出来れば、そのイベント事態起きない可能性があるのではと思っていた。
だがこれまでの話から、やってもいない事まで事実としてまかり通っている様に思われる。
―どうすれば…わたくしに出来る事は…
レオと目が合う。
「シア、後で説明するから、今は僕に話を合わせて」
「え、えぇ…」
私にだけ聞こえる声でそう言うと、一つ頷き、皆に向かって話を始めた。
「アリステア様。これからお話する事ですが…
ミーシアと僕を信じて頂けますか」
「信じる…とは?」
何と答えていいのか分からない様子のアリステア様に、レオが話を続ける。
「詳しい事情は話せないのですが…3ヶ月後の卒業パーティーで、貴女や公爵家にとって…芳しく無い事が起きます。僕達はそれから貴女をお守りしたいと思っています。その為に、僕達の言う通りにして頂けないでしょうか」
「それは…婚約破棄…という事かしら…?」
「いえ、アリステア様。ハッキリ言います。貴女の命に関わる事です」
再び部屋が驚愕に包まれる。
―レオ…やはり貴方は…
いえ、貴方も…知っているのね。
夏休みが終わってしまいました…( ´△`)
明日より仕事が立て込むので、次の更新は8/22以降になるかと思います。
読んで下さる皆さま、ありがとうございます。
完結まで頑張りたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします(*-ω人)