1.1 純白の滝壺へ 3
「なんだろう・・・今日はすごく頭が痛いな」
こんな日はさっさと寝るに限る?
とんでもない。
「まだ昼飯の時間にさえなってないもんな」
働かざるもの、喰うべからず → 解雇
・・・この流れがわかっているもんな。
神光合成研究員の槙橋オーコは、人間の支配による重労働で疲れきっていた。
「やばいな・・・眠い」
痛みはどんどん、脳内環境を抉り出すように強くなっていく。まるで重度の風邪。そりゃあ、眠くだってなるだろう。
「さあ、どうしようか・・・」
周りのデスクを見ると、既に人間達の姿はない。彼等は基本、獣間か植間の労働者がいれば、そいつらに仕事を任せ、遊びにでも行ってしまう。
その自由さは羨ましくもあるが、尊敬はしないな。
さて、この研究施設では植間は雇っていない。また、俺以外の獣間は皆、フィールドワーク中だ。よって俺は今ここの責任者として君臨している。
ラッキー。
「・・・よし、寝よ」
責任者の権限で、俺は少し休むことにした。
・・・
夢を見ること程、自由なものは無い。ときどきそう思う。
俺は、上も下も右も左も、全てが純白に包まれた空間に、独り、佇んでいた。
いや、独匹か。俺は人間なんかにはカウントされたくない。
「あれ・・・足が動かない」
縛り付けられたように動かない両足は、俺に、何かを訴えているのか?
まあ、人間達の束縛から解放されたい、ってことなのだろう。夢を見ると、今の自分の内面や訴えが良く分かる。
しかし、やけに鮮明な夢だ。いつもはもっと、烟や埃にまとわりつかれているような気がするのだが・・・
何故だろう?
「・・・面白いな」
やがて俺は、ここがただの純白ではないことに気がついた。
「微妙に明暗の差がある。その感じから行くとここは、何かの、底」
今、俺が浮遊や落下ではなく、この場に静止しているのも、何かの底なのだと考えれば納得がいく。
神光合成研究員は、少なくともこれぐらいは予想できなければならない。
「最低限、頭が悪くなければ、俺にも、生きる価値は、あるよな・・・獣間でも
ズキィッ
うっ!?」
・・・な、なんだ。一瞬、鮮やかな痛みの中に、なにか見えたような気がするぞ。
「何が・・・?
ズキイッ
う、うう、うあああああああああああああああああああああああ!?」
『うわああああああああああああああああああああああああああ!?』
え!?
ドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッッッ!!!
「うおおおおおおおおおっ!?」
『ううううううううにゃあ・・・・・・
・・・あれ、とまった?』
俺の隣に落ちてきた、赤い瞳の女の子。
しきりにサラサラの髪の毛をこするのは、毛づくろいか?
スカートからはおおきなしっぽ。頭には、夕焼け色の、三角の
『むにゃあ、しぬかとおもった・・・む?
ええ、これが、きょうのシンクロあいてぇぇぇ? なんかかっこわるいにゃぅぅぅぅぅぅ・・・
・・・ん?あ、おはよ☆』
物語をすすめる前に、俺のストレスの塊をひとつだけ吐かせて欲しい。
「オマエ誰だよっ!!!!」




