0-1 お母さんの、冒険。
誰だって、この世は理不尽だなぁ・・・って思ったこと、一度はあるよね。
私も今、ちょうどそう思ったところ。気が合うね。
中学生のとき、すごく怖い先生がいたんだ。辛口のインドカレーみたいな怖さだった。・・・わかりにくいかな、ごめん。文章は苦手で・・・。もっとわかりやすく言うと、
甘く味付けしたキミと、赤黒いトマトをミックスしたような。
・・・バレた?うん。ちょっと盛りすぎた。でもまあ、すごく怖かったことは伝わったかな。
先生は正義感あふれる35歳で、いつも部活道の紺色ジャージとキラキラ反射するサングラスがお似合いだった。みんな先生の事を慕っていたのは、優しかったからだったんだ。
みんなには、ね。
私と、二人の友達だけは、先生の怖さを知っていたから、先生には近づかないようにしていた。もしかしたら、先生も軽くそのことに気がついていたから、優しくしてくれなかったのかも。あ、意味深に捉えないでね。先生は変態とかじゃなかったから大丈夫。
そんな先生のある一面があらわになったのは、2年生の夏ごろだった。
『ヴぁおおおおヴおおうヴぁ』
・・・ごめん。話したいのはやまやまなんだけど、少しだけ待ってくれるかな。今、それどころじゃなくなっちゃった。
私がどこにいるか言ってなかったね。
コノハナの街の、あるアパートの一室の、
ドラム式洗濯機のなか。
しかも、私一人じゃないんだ。となりに一緒に押し込められているのは
『ヴぉうヴぉあうヴヴぁヴぉうああああうおうヴぁヴ』
ああ、
間に合わない。
ごめんね。もう少しだけ、話したいことがあった。けれどもう、間に合わない。
ああ、理不尽な、世界との、お別れが、近いや。
『っっヴヴぉヴぁあうヴおうああヴぁお!!』
回転が始まっているのがわかる。
私とお隣さんの耳を切り裂くような大きな音、ぐにゃりとまがりはじめるせかい、
くらむしかいにきみのひょうじょうがおどる、ひとりといっぴきはくらやみのなかを
ぜんそくりょくでかける、やがてわたしたちはよっつになり、ヤッツニナリ、ジュウロクニナリ、サラニフエ、トドマルコトヲシラズ、チキュウハマワリテ、マワリテ、
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛
やがて私とお隣さんは、
ひとつになった。
・・・コノハナの街に、光がやってくる




