16話 夜に抜け出して
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それぞれの部屋に戻り、夜が更けたころに僕は宿を出る。
どうしても確認しなければならないことがあった。それはリーネと一緒に居ては確認が出来なかったことだ。僕は先ほどまで狩りを行っていた場所まで戻ると、小さなバックから布切れを取り出す。
僕はその白い布切れを器用に拳に包帯のように巻き付け端の方を切り取る、頭の中には遺物の情報が想起させられるが、既に知っている内容なので気に留めなかった。僕が世界の外側からここに至る前に、ヤツ爺から選別として渡された遺物の中の一つで、その存在自体この世界で唯一無二の超貴重な一品らしく、人のいるところで使用するのは極力控えることを口酸っぱく言われていた。“破衣”と呼ばれていたこの遺物はヤツ爺の話では体のどこかに触れた状態で生地の一部を破ると地を割るほどの怪力とそれに準じた身体能力やあらゆる能力が向上されるという、しかし元は衣として存在していたらしいこの遺物も既に布切れほどの面積しか残っていない。実際に使うのはこれが初めてだ、本当は消耗品という面を考えればいくら小さく切り裂いているといっても確実に残りの使用できる回数は減っていく為、こんな場面で使うことは言語同断なのだけど、結局好奇心には勝てない。僕は初めて人目のない場所を得ることが出来た。夜が更け寝静まるころ、この時間は誰も森には入らない。深域の冒険者の中には帰らずに冒険を続ける人も中に入るけれど、浅域は絶対に居ないと断言できる。
目の前から巨大な木人が現れた、剣は持ってきていない、きっと強化された力に耐える事できないからだ。木人がゆっくり取れこむような動作から急に音速の鞭撃を繰り出してくる。僕は避けてから気が付いたけれど、全ての動作がゆっくりに見えた前に戦った時には見えなかったその攻撃も今は良く見える。僕は見えた瞬間身体が勝手に反応していた、横を通り過ぎえる枝を掴み取り、強く引っ張った。木人の巨体を引き寄せ、握りこんだ拳で会心の一撃を与えた。一撃、たった一撃で巨大な木人が粉々にはじけ飛んだ。
「ふう・・・」
僕は大きく息を吐きだした。すこし危ないところだった、初めて出力した莫大な力に体と心がささくれ立ち、暴れそうな破壊衝動を感じていたからだ。僕は直ぐに“破衣”を外した。遺物はいくつかあるけれど、大抵は使い勝手が悪く、得られる効果に対して必ず同程度以上のデメリットがある、もちろんそれは汎用化されていない、本物の遺物の話だけれど、この破衣にもデメリットがあり、使用後、使用時間と同じだけの破壊衝動が生まれるらしい、今回は極めて短時間の使用だったから、この程度で済んでいるけれど、もしも長期使用なんかしたら、それは大変な事だろう。暗い森の中、夜と暗闇には慣れていて、夜目は効いているため良く見えているけれど、この森には生命の息づく気配がない。用は済んだところで、僕は少し怖くなってきたから、すぐに宿に戻ることにした。
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寝付いた人々に気を配りながら、出来るだけ足音を立てないようにして、静かに宿に戻り、部屋で眠りについた。
少し短めですが、基本的に区切りを意識して投稿しているため、ご容赦ください。




