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第48話 エピローグ みんながいるから


 翌日、僕たちは冒険者ギルドへやってきた。


 辺りを見るとヴァネッサやおっちゃんたちが近くのテーブルで、それぞれ食事をしている。


「ヴァネッサ、おっちゃんたちも。この前はありがとう」


「おう、いいってことよ」


「あれだ、俺たちゃ冒険者仲間だからな、いつでも味方するぞ、ガッハッハ」


 レヴァンたちにからまれたときのお礼を改めて言うと、おっちゃんたちは陽気に笑った。


「それで、今日は依頼でも受けにきたの?」


「そうじゃないんだけど、ちょっと困ったことになってて」


 ヴァネッサにたずねられ、僕はここへ来た事情を話す。


「ふーむ、これがアーティファクトか。初めて見るな」


 事情を聞いたおっちゃんたちは、僕の右腕の黒い腕輪を物珍しそうに眺めている。


 この腕輪を外す手掛かりが、冒険者ギルドで見つけられるといいんだけど。


「外れないって? ガッハッハ、よし、思いきり引っ張って外してやろう!」


「えっ!? そ、それはやめとこうかな、力尽くで外れるような物じゃないから」


「さっきの話だと、魔道具店でもダメだったのよね?」


「ええ。ここに来る前に寄ってみたのですけれど、アーティファクトは専門外で無理だと言われてしまいました」


 おっちゃんの提案を断る僕の横で、ヴァネッサが質問し、それに対してイーリスが困った様子で答えた。


 魔道具のお店にも行ってみたが、腕輪を外すことはできなかった。


 そのため他に何か方法はないか、一縷いちるの望みにかけてやってきたのだ。


 僕も含めてこの場にいる7人全員で、うーむと頭を抱えてしまう。


「あの、どうかしましたか?」


 ギルド職員のミリアムが、悩んでいる僕たちの様子に気づいて心配そうに声をかけてきた。


「じつはアーティファクトが外れなくて困ってるんだ」


 僕は右腕の腕輪を見せる。


「アーティファクトが外れないんですか!?」


 ミリアムの驚き声が響き渡り、周囲の人たちがなにごとかと振り返った。


「アーティファクトですか。あっ、そうだ、魔道具店でなら外してもらえるかもしれませんよ」


「さっき行って、ダメだった」


「そ、そうでしたか。じゃあ他の方法でしたら、うーん」


 ミリアムは名案とばかりに提案するがセレナに否定され、しゅんとなりながら頭を悩ませていると。


「それならフルドラガに行ってみたらどうだ」


「ギルマス!? お話聞いてたんですね」


「ミリアムの大声が聞こえてきたからな」


「え? 私そんなに大きな声出てましたか?」


 いつの間にか話に加わったギルマスのバルフェルから声が大きいことを指摘され、ミリアムは少し恥ずかしそうな様子を見せた。


 リフィから「元気があっていいと思う!」と言われ、「あ、ありがとう」と困ったように笑う彼女をしり目に、僕はバルフェルに質問する。


「あの、フルドラガってなんだろ?」


「フルドラガってのは街の名前だ。ここからずっと北へ行った山のふもとにあってな、魔導具作りが盛んで職人の街とも呼ばれている。アーティファクトに造詣ぞうけいの深い魔道具技師の噂も最近耳にするし、遠出にはなるが他に方法がないならと思ったんだ」


 へえ、そんな街があるんだ。


 フルドラガか、この腕輪を外すために行ってみるのもいいかもしれない。





 冒険者ギルドを出た僕たちは、話しながら帰路を歩いていた。


「アーティファクトを外せそうな情報がわかってよかったですね」


「職人の街かあ、どんなところなんだろう。楽しみ!」


「旅行、みたいだね」


 イーリスもリフィもセレナも、和やかに言葉が弾んでいる。


「旅行かあ、行った先でいろいろ見て回るのもいいかも。そのためにも準備しておきたいな……って」


 僕はそう言ったとき、前から歩いてくる人に見覚えがあることに気づいた。


 レヴァンの父親であるローウェンがそこにはいた。


「エミルか」


 向こうも気づき、おたがいに足を止める。


「ローウェン。ひさしぶりだね。えっと、なにか用があってこの街に?」


 子と親は別と分かってはいるつもりだけど、レヴァンとあんなことがあった後だから、少し緊張しちゃうな。


「ああ。個人的なことで来たんだが、まさかこっちと先に会うとはな」


 こっちというのは僕のことだよね。


 口振りからすると他にも会いたい人がいるのかな?


 そんなことを僕が考えていると。


「ウチのバカ息子がすまなかった」


「えっ、ああ、ローウェンが謝ることじゃないから……」


「親として私が至らなかったせいだ」


 頭を下げるローウェンを、僕はあわてながら制止する。


「それとこれは村の者たちと話し合ったことなのだが、燃えた家の代わりにエミルの新しい家を建てようと思っている。できるだけ希望に添うつもりだし、もちろん追放も撤回するから、村に戻ってきてはどうだろうか?」


 ローウェンは頭をあげると、真剣な表情をしたまま僕の目を見て話してきた。


 そばで見守るみんながそれを聞いて、息を飲んだのが僕にも分かった。


 レヴァンたちのしたことが村の人たちに知られたのかな。


 村に戻れると聞いて、少し嬉しく思う自分もいる。


 でも――


「気持ちは嬉しいけど、遠慮しとくよ」


 せっかくの申し出だけど、断ることにした。


 僕の返答を聞いて、ローウェンは眉をひそめる。


「いいのか?」


「うん。大切な場所を、見つけたんだ」


「そうか……わかった。戻りたくなったらそのときは、いつでも戻るといい」


 話が終わり、ローウェンは去っていった。


 後ろ姿を見送っていると、それまで黙っていてくれたみんなが口を開く。


「エミルくんがいなくなるのではと、不安を感じてしまいました」


 イーリスはそうならなかったことを安心するかのようにほほえむ。


「ね、残ってくれてホッとしたよ!」


 リフィも両手を挙げて喜んでいるみたい。


「さみしく、ない?」


 セレナからは少し心配そうな様子で、さみしくないの、村に戻らなくてよかったのと聞かれてるように思えた。


 僕は笑って答える。


「みんながいるから、さみしくないよ」


 みんなとなら、きっと大丈夫。


 風が寄り添うように流れ、陽の光が僕たちの進む道を照らしていた。







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