第47話 ひとり、想い終わらず(シャムニー視点
◆シャムニーside
私は隠れ家の一室でイスに座り、書物を読んでいた。
「ここは……?」
「レヴァン! 気が付いたかよ!」
「あれから丸一日、目を覚まさないから心配したんだからね」
「グラッグ、ジュリア。いったいなんだっていうんだ?」
ベッドに寝かされていた彼が、ようやく目を覚ましたか。
寝ている間ずっとそばにいたお仲間の彼らは、どうやら目覚めを喜んでいるようだ。
「回復したがまだ無理はしない方がいい。ここは私の家さ。小さくてボロいけど雨風くらいはしのげるだろう」
読んでいた本を机に置いて、彼らを遠巻きに見ながら私はそう言った。
「ああそうか。俺はアイツに……負けたんだったな」
彼はベッドから出るもふらついて歩くのもおぼつかない様子だ。
傷は治ったとはいえあの戦いのあとだ、肉体的にも精神的にもいつもの調子ではないんだろうねえ。
ふらつく彼は近くのイスに腰を掛けると、そのままうつむいてしまった。
よほど悔しいのか、握りしめた拳が震えている。
「あんな落ちこぼれに……! クソッ……クソッ……!」
「……なあレヴァン。アイツに手を出すの、やめといた方がよくないか?」
「そうそう。つぎは容赦しないって雰囲気だったし、エミルなんてもうほっとこうよ」
「あっ!? くっ……今は1人にしてくれないか?」
「で、でもよお」
「……頼む」
お仲間同士のお話が終わったようだ。
女の方が「行きましょ」と言い、うつむく彼を気にして振り返りつつも2人は部屋を出ていった。
「あんたも出ていってくれ……放っておいてほしい」
どうやら私も邪魔者なようだ。
とはいえ私の行動は、他の誰でもない私が決めさせてもらうけれどもね。
「風喰いの指輪に魔力霧散の腕輪。キミには希少な2つのアーティファクトを使わせてあげたというのに、この結果とはねえ」
「そうだよ、俺はアイツに勝てなかった! それが結果だ、悪いかよ……」
おっと、私としてはあの少年の強さを再確認しただけのつもりだったんだが。
責めたつもりはないとはいえ、言い方がよくなかったのかな。
「いやいや、相手が悪かっただけの話さ、なんたってあの少年が相手だからね。むしろキミにしてはよくやってくれたよ」
「……チッ」
おや、本心からフォローしたのに、なぜだか余計に機嫌を損ねてしまったみたいだ。
まったく、人の心というのは難しいものだねえ。
「俺が負けただと……落ちこぼれのアイツより弱いというのか……クソッ」
彼は下を向いたまま、うわ言のようにしきりにつぶやいている。
「ふふふ、あの少年より強くなりたいかい?」
私は立ちあがり、そんな彼にゆっくり近づく。
「……なにかあるとでも言うのかよ?」
うつむいたままそう言う彼の後ろに回ると、私は前に屈んだ。
「ああ。あるとも。真っ当な手段ではないけれどもね。結果どうなるかはわからなくとも、それでもするかい?」
下を向く彼の耳元で、そう囁く。
「それであいつに勝てるのか?」
「キミ次第さ」
「……俺にはもうなにも残ってない。強さだけなんだ、俺は強くなければいけないんだ。そのためなら、なんだってやってやる……!」
ずっと下を向いていた彼が、ようやく顔を上げた。
そんな彼の背後から両手を回し、その両頬を包むように優しく触れる。
「いい答えだねえ。私に任せなさい、もっともっと、強くなろうじゃないか。ふふふふふ」
まあ、あの少年より強くなれるとは思わないし、命の保証もしてあげられないけれどね。
最後に私ひとりが笑っていればいい。
キミが家を燃やした真相を伝えて、その悪評を広め。
せっかくいろいろと動いたんだ。
もっとキミには役立ってもらうよ。
私の悲願のために。




